如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

地方活性化事業が失敗するのは「予算獲得の目的化」と「営業不足」

地方活性化の新規事業が大失敗する3つの要因(東洋経済オンライン)

木下 斉 : まちビジネス事業家

 

 地方の時代が叫ばれて数十年、これまでに地方を管轄する自治省は総務省に統合され、地方創生担当大臣が創設、就任した。

 かのように地方を盛り上げようとする動きは続いているのだが、成功し、しかも現在も継続中と言う案件はほとんど聞かない。

 こうしたなか11月18日付けの東洋経済オンラインに「地方活性化の新規事業が大失敗する3つの要因」が掲載された。

 

 記事では、山梨県南アルプス市が始めた「完熟農園」事業が開始から1年で破綻したこと、栃木県塩谷町の豆乳ヨーグルト事業が3年間で3900万円をとうじたものの売り上げは7万3800に留まったことを失敗例として紹介している。

 

 また、「一見美しく、実は予算獲得をするためだけに終わりやすい無茶な計画」となる以下の3要素を紹介している。

  1. 「地域の独自性と理解可能な範囲の新規性」
  2. 「一発逆転のキッカケ、起爆剤の役割」
  3. 「地域に関わる行政、さまざまな地元団体などが一丸となるという合意形成

 

 いずれも詳細は記事を読んで頂くとして、この3つの要素に共通しているのは、地方活性化を名目に「事業の実現」よりも、の名のもとに国からの「予算獲得」が目的化していることだ。

  簡単に言えば、予算を引っ張ってこれるようなアイディアが優先され、「おカネがあれば何とかなる」という考えが根底にあるのだろう。

  昭和の時代の高度成長期でもないのに、おカネをつぎ込めば事情は成功するという考え方は、もはや完全な時代遅れで「田舎のビジネス事情に疎い年寄り」にしか通用しない手法である。

 

 また、これはあくまで私見だが、地方再生を自任するコンサルタントやそれをサポートする広告代理店の存在も大きいはずだ。

  彼らは、最新のビジネス実情に疎いが、地元に影響力のある地方関係者(役人、商工会、議員)などにうまく取り入って、さも効果がありそうに見える地方活性化策を提案、政策実現に向けて関係する有力者の説得から始める。しかしながら、その提示する活性化案は過去に他の自治体の活性策で使った資料を、多少手直しした程度の内容に過ぎない。

  彼らは、人当たりもよく、話術も得意、また予算獲得までは精力的に働くので、地方の関係者はすぐに信用してしまう傾向にある。そのベースにある活性化案が他の自治体の失敗例であるにも関わらずだ。

 

 先の3つの要素を考えてみても記事では、

 1の「地域の独自性と理解可能な範囲の新規性」については、「自分たちの計画が実現可能であるかどうか」を無視して、筋書きを書いてしまったからこそ、採択後に苦しんでしまうと断言している。

 2の「一発逆転、地域活性化の起爆剤になる事業」については、そもそも「存在しない」とまで言い切っている。

 3の「地域が一丸となってまとまれば、まち全体が変わる」についてだが、これこそ「コンサルタントと広告代理店」の得意とする分野だろう。利害関係者を口八丁手八丁でうまく丸め込んで合意形成に至らせる手腕は見事と言うべきモノだ。

 

 かくして、「失敗が確実」な地方活性化事情がスタートする訳だが、当然ながらうまくいかない。記事に「何をやるのにも反対が出て、成功しても、失敗しても、100%もめます」とあるように、計画が実行に入る段階で、無理が露呈するのである。

 しかもこの時点ですでにコンサルタントと広告代理店は「報酬」を得ているので、事後のもめ事には関与しない。もはや彼らの関心は「次の獲物」である。

 

 結局あとに残るのは、有効な使い道のないままに獲得し、返還するにも抵抗がある国から得た予算ということになる。簡単に言えば「税金の無駄遣い」の典型例だ。

 

 記事では最後に、「まずは営業してから予算のことを考えること」を提案している。その理由として「そもそも売れるかどうかわからないような商品開発に、最初から国や地方自治体などから予算をもらうこと自体が、狂っている」と解説している。

 

 以前、一部の有名商社の幹部が「売ってから商品を仕入れろ」という方針を打ち出していた。一見非常識のような話だが、商売の基本を鋭く突いているとも言える。

 

 言い古された感もあるが、「事業を計画するのは誰でもできる、問題は商品が売れるかどうかだ」という言葉はまさに正鵠を得ている。

 「売れる」商品を開発することが最優先事項であり、地方が活性化するのはその「結果」に過ぎない。

 地方活性化の第一歩は、目的と手段を正しく認識することである

ネットフリックスの躍進は続くのか――コンテンツと価格がカギに

ネットフリックス、1年で「WOWOW超え」のなぜ(東洋経済オンライン)

井上 昌也 : 東洋経済 記者

 

 映画など動画配信の大手ネットフリックス(Netflix)が初めて日本での会員数を公開、300万人に達したことを9日6日の記者会見で明らかにしたそうだ。

 

 このネットフリックスの成功要因を解説する記事「ネットフリックス、1年で『WOWOW超え』のなぜ」が11月17日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 現在動画配信サービスで最大手はNTTdocomoが手掛けるdTV。会員数は2016年に500万人を突破したが、その後は伸び悩み2017年には469万人に減少したことを考量すると、2019年時点では400万人台前半程度と推定される。

 

 一方のネットフリックスだが、記事の数表によれば会員数の伸び率が77%と、Huluの11%、WOWOWのマイナス1%を大きく凌駕している。

 このままの勢いが続けば、最大手dTVに追いつく日もそう遠くはないだろう。

 

 記事で成功要因として挙げているのが「日本初のオリジナルコンテンツ」の充実。同社は9月からの1年間で16ものオリジナルコンテンツを配信、例としてアニメを挙げ、作品制作にあたって有力プロデューサーを採用したほか、これまで主流の制作委員会方式からネットフリックスが直接製作費を出すという。

 これは関係各社が資金を出し合って、売り上げを出資分に従って分け合うといういわば「寄り合い所帯」から、ネットフリックスが配信する作品を「直接関与」するスタイルになる。

 

 記事では、チーフプロデューサーの櫻井大樹氏の発言として「忖度をしなくていい。クリエーティブファーストで、(さまざまな表現に)踏み込むことができる」を紹介しているが、これによって政策委員会のように合議制で「ラノベが売れたから」というような理由で、無難な作品を選びがちな傾向は改善されるだろう。

 ただ、「忖度をしなくていい」というのは、あくまでネットフリックスが視聴されると認めた作品と言う条件付きではある。完全な意味での「金は出すが口は出さない」ということではないだろう。

 

 また、記事では「KDDIや家電メーカーなどとの提携も300万人突破に大きく貢献」と記載しているが、家電メーカーとの提携については具体的な言及がない。

 私見だが、ここで言う「家電メーカー」というのは、販売店への販促政策もあるだろうが、効果が大きかったのはテレビのリモコンへの「Netflix」ボタンの追加だろう。

 

 パナソニック東芝のリモコンには赤文字で「NETFLIX」のボタンが堂々と配置されている。その他の動画配信の専用チャンネルは見当たらない(ソニーはhulu、U-NETなどにも専用ボタンで対応している)。

 動画配信を見る側にすれば、ボタン一つでチャンネルを選べる「専用ボタン」(しかも赤で目立つ)の存在は大きいはずだ。ちなみにAmazonプライムビデオは「大人の事情」から専用ボタンはどのメーカーにもない。別のアプリボタンに設定することはできるが。

 

 ちなみに正確な会員数を明らかにしていないAmazonプライムだが、会員になると動画の配信に加え、配送料無料サービス、200万曲の音楽の聴き放題などと複合的なサービスを実現、料金は今年値上げして年額4900円(税込)となったが、月に換算すれば408円(同)だ。最低料金が800円(税別)からのネットフリックスよりも競争力があるのは確かだろう。

 

 ただし、今後もAmazonの優位性が続くとは限らないと思っている。

 その根拠のひとつが、会費の値上げ懸念。現在は今年値上げして年額4900円だが、これは本国アメリカの119ドル(約13000円)、英国(同14000円)よりも圧倒的に安い(参照サイト)。

 

 これはAmazonが日本での有料会員の確保を最優先に考え、ある意味「採算度外視」で会員を確保するという戦略を取ってきたからだろう。

 今年1000円の値上げをしたが、欧米主要国とはまだ数倍の格差がある。これが向こう数年で1万円以上に引き上げられる可能性は決して低くないだろう。

 Amazonで買い物を頻繁にする層や、Primeビデオ、Primeミュージックが生活の中に組み込まれてしまえば、その利便性に慣れた会員がそう簡単に解約するとは考えにくいが、新規加入を考えた人が入会を躊躇する要因にはなるかもしれない。

 また、現在は無料の配送サービスも購買額などの利用条件が引き上げられる可能性も否定できない。

 

 もうひとつの懸念材料は、Primeビデオの有料チャンネル化。私の場合はアニメを視聴することが多いのだが、Amazonでは「dアニメストア」として有料チャンネルのサービスを開始、一部の人気のあるアニメや、これまで追加料金を支払わずに見れた作品の最新話については、この「dアニメストア」を契約しないと観れなくなった。

 ちなみにこの「dアニメストア」の会費は月額440円。一見安いようにも見えるが、prime会員の会費が月額換算で408円であることを考えると決して安くはない。

 

 この課金方式はAmazonミュージックではかなり前から行われている。6500万曲が聞き放題となるが、こちらの月額料金は780円とprime会員会費の倍近い。もっともスマートスピーカーEcho向けには別途安いプランもあるが。

 

 以上から、現在の状況を整理すると、最大手のNTT系のdTVは今後独自コンテンツの不足から伸び悩む傾向が続く公算が大きく、首位陥落は時間の問題。2番手に付けるAmazonは複合的なサービスで会員を確保しているが、値上げ次第で会員数の伸びは抑えられる可能性がある。急伸しているネットフリックスは、日本向けの動画配信サービスに今後さらに経営資源をつぎ込むので成長は続きそう、という見通しになる。

 

 あと言えるのは、既存のテレビ、特に地上波はコンテンツの劣化が止まらない以上衰退は必至、これらに不満を持つ層がネット配信に流れる可能性があることも、魅力あるコンテンツを提供できる動画配信サービス業者には追い風になるはずだ。

 いずれにせよ、配信企業にとっては魅力あるオリジナルコンテンツを提供できるかが最大のカギ、次いで支払う月額料金次第ということになりそうだ。

 

覚せい剤依存症への社会的対応、「刑罰」より「治療」が有効か

田代まさし氏覚せい剤で4度目の逮捕、依存性と常習性の恐ろしさ(ダイヤモンドオンライン)

戸田一法:事件ジャーナリスト

 

 「ああ、またか」と思った人も多いのはないか。

 タレントの田代まさし疑者が、覚せい剤取締法違反の容疑で逮捕された。今回で4度目である。

 

 この逮捕劇の顛末と田代容疑者の過去の経緯などを解説する記事「田代まさし氏覚せい剤で4度目の逮捕、依存性と常習性の恐ろしさ」が11月16日付けのダイヤモンドオンラインに掲載された。

 

 このニュースを聞いて私が個人的に感じたのは、依存症もアルコール、ギャンブルなど様々だが、覚せい剤からの依存が他に比べて「かなり」困難だということだ。

 

 アルコールとギャンブル(一部を除く)は成人であれば合法で税収も見込めるので、社会的にある程度までは嗜好の一部として容認されている訳だが、人間を破壊する「覚せい剤」の使用・販売には当然ながら厳罰があってしかるべきだとは思う。

 

 問題は記事後半にも書かれているが、取材した警部の話として「(覚せい剤の利用者には)ほぼ被害者という容疑者もいた。懲役はあまり意味がない」という発言を紹介、また元組長は「目を付けた女性に『栄養剤』などと言って使わせる。一度使うと抜けられない。常連の『お客さん』は女性が多かった」と覚せい剤利用の実情を解説している。

 

 あらゆる依存症からの脱出には、本人の「やめたい」という意志が最低条件として必要なのだが、自分から望んで覚せい剤の世界に踏み込んだのではなく、騙されて常習者となった人たちには「自分は被害者」という思い込みもあるだろう。個人的には、それでも騙される側の責任は大きいとは思うが。

 

 記事では、覚せい剤は、度やったら、骨の髄までしゃぶられる」ということで「シャブ」と呼ばれる、という話や、先の組長が「好奇心とか、試しにとかで、絶対にやるな。あれは麻薬じゃない。『魔薬』だ」という発言を紹介している。

 脳を刺激してドーパミンを出させ興奮状態になるという点では、どの依存症も同じなのだろうが、その刺激性と依存度の高さから、厳しい「取り締まり」の対象になっているのだろう。

 

 問題は、アルコール依存症については、アルコホーリクス・アノニマス(AA)という世界的規模で活動する団体があり、日本でも600以上のグループがあり5700人以上がメンバーになっているほか、日本独自の組織として「全日本断酒連盟」があり、こちらは約1万人の会員がいる(WEbサイト「断酒のすすめ」より)。日本で初めて「アルコール専門外来」を設置した久里浜医療センターも有名だ。

 またギャンブルについては、GA日本インフォメーションセンターが窓口となって、全国193のグループが活動している。

 

 これに対して覚せい剤を含む薬物依存症対策の団体は日本ダルクが有名だが、59団体(95施設)しかない。

 これは、合法的な嗜好や趣味から依存症に至った人々を「患者」としてケアされるのに対して、薬物の依存症者に対しては「犯罪者」として扱うためだと思われる。

 つまり同じ依存症でも、「治療」で対応するか「刑罰」という社会的制裁を与えるかという大きな違いがあるのだ。

 

 もうひとつ気になる「薬物依存症」に関する最近の報道について。

 それは欧州、北米を中心に大麻(マリファナ)の民間人の利用を解禁する国・地域の増加だ。

 特にオランダでは街のコーピーショップで早々とマリファナを吸引する光景が日常らしい。北米ではカナダが合法に、アメリカでも州よって合法とされている。

 

 この背景には、マリファナは「アルコールほど精神依存が強くない」といった論調が世界各国で高まっているほか、合法化することで「非合法組織の活動資金源を断つ」という目的も大きいと思われる。

 

 ただ、個人的には、大麻の合法化にはまだ慎重な議論が必要だと思っている。

 というのも、アルコールも最初は「とりあえずのビール一杯」、ギャンブルも「たまたま入ったパチンコで大当たり」といった、ちょっとした「きっかけ」が入り口となって、どんどん深みにはまっていくのが常だからだ。

 

 これは薬物にも当てはまるはずで、最初の大麻が、エスカレートして覚せい剤に行き付く可能性は決して小さくないだろう。

 

 覚せい剤の依存症者を、「刑罰」だけで解決できるのか、犯罪者の「自己責任」で放置してよいのか。

 また世界的な傾向だからと言って、軽々しく「大麻」を合法化してよいのか。

 

 社会的な合意のためには、まだまだ議論の余地は大きいと思う。

「定活」で生きがいを探すための無理は無駄では?

適齢期は50代前半 定年後の準備、早めがいい理由(NIKKEI STYLE 定年楽園への扉)

経済コラムニスト 大江英樹

 

 定年後の生き方を指南するいわゆる「定年本」がここ数年大量に出版されている。多くは、仕事一筋で趣味らしい趣味もなく、家庭でもあまり居場所や存在感のない「お父さん」を対象にしたものだ。

 

 日本経済新聞の電子版の「NIKKEI STYLE」のコンテンツのひとつ「定年楽園への扉」に11月14日付けで定年前の準備活動いわゆる「定活」について、「適齢期は50代前半 定年後の準備、早めがいい理由」というタイトルの記事が掲載された。

 

 著者は野村証券で個人向けの投資相談などを長年手掛けてきた大江英樹氏。この人は最近でこそ定年本を量産し、各種セミナーや講演などでも引っ張りだこだが、60歳の定年直前まで定年後の何の準備もせずに起業・独立したという経歴を持つ。

 

 デビュー当初からコラムや著作を読んでいるが、大江氏については、自身の経験をもとに定年後の生き方に関するコラムなどをメディアで書き始めたら、「定年後」と言う現代の注目テーマの波にうまく乗って、ビジネスを展開・成功したという「運」にも恵まれた人だと個人的には思っている。

 

 直接お会いしたことはないが、別名ノルマ証券とも呼ばれる天下の野村證券で、個人向けの投資相談業務を長年手掛けて定年まで勤め上げたという人は相当少ないと思う。年齢からみても平成のバブルとその崩壊を目の当たりにしている訳で、個人的には、「定年後の生き方」よりも「天国と地獄のなかをどうやって生き残ったのか」に関心がある。

 

 話は逸れたが、本題は「定活」である。

 記事を要約すると、「定活」は仕事で脂が乗った40代では早すぎて、出世競争に決着がついた50代前半が望ましい。ただ、50代後半でも十分間に合う、という点がまずひとつ。

 そして、次に「定活」の具体的なポイントとして

  1. 自分がやりたいことを明確にする
  2. 友人の幅を広げておく
  3. 健康を維持する

 の3点を挙げている。

 

 これに対する現在50代後半の私の対応は、1については「試行錯誤中」、2は「いまさら広げるのはストレスになり無理」、3に関しては「自宅でサイクルマシンを1日30分漕ぐ」、という状況だ。

 つまり1が最大の問題なのだが、これは多くの同世代のサラリーマンに当てはまると思う。問題は「何がやりたいことなのかをどうやって見つければいいかが分からない」ことではないだろうか。2と3は個人差が大きいだろう。

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 私の場合は、「熱しやすく冷めやすい」という性格も影響しているのだが、長年続いている趣味がほとんどない。酒は飲まないし、ゴルフもしない。ゲーム機やカメラ、DVDの収集、鉄道模型などに凝った時期もあったが、せいぜい続いて数年だった。

 あえて挙げれば、年に1、2度行く程度の競輪ぐらいだ(一応30年ぐらいは続いている)。

 別に入社以来「仕事一筋」と言うほど仕事熱心な訳でもなく、55歳で役職定年を迎えて、あと数年で本当の定年を迎える。その後は「再雇用」ということになる予定だが、「これ」といった人に言えるような「生きがい」が今のところ見当たらないのである。

 

 それでは、今の「生きがい」がない状況に不安を抱えているかと言うとそうでもない。勢古浩爾氏の著作「定年バカ」(SB新書)の影響を受けた面もあるのだが、定年前と定年後で生活に「区切り」を付ける必要があるかどうかは、本人が決めればいいと考えている。

 

 つまり私の場合で言えば、定年に関係なく「やりたいこと」があればやればいいし、なければ「なにもしない」もありで、定年後の生活に特に支障はないと思うようになったのだ。

 

 大江氏の言う「やりたいこと」というのは「生きがい」とほぼ同義だと思うのだが、人生後半に入ってから苦労して生きがいを探して、おカネや時間を費やすのは「無駄な努力」に終わることも多いのではないかと思う。

 「陶芸」「絵画」「山登り」が3大老後の趣味という話を聞いたことがあるが、どれも60過ぎから人に評価されるレベルに達するには大変な労力がかかりそうだ。まあ、本人が好きで納得しているなら、他人がとやかく言う話ではないのだが・・・。

 

 では、私自身がどういう定年後のイメージを持っているかと言うと、情報収集のための高いアンテナを立てて、常に何か面白そうな「モノ」や、自分にもできそうな「コト」を探し続けるという生き方だ。

 

 アンテナが探知するのは、新聞、雑誌やテレビのメディアもあるが、毎月届けられる自治体の市報や、近場の公民館などからも様々なテーマの講座やセミナーなど活用できそうな情報は結構得られる。費用も格安だ。

 最近では、大学も社会人やシニア向けの公開講座を開催していて、これを聴講するのも面白いだろう。

 あた、健康に配慮して「ウォーキングや散歩」をする人が増えているのは良い傾向だが、今は電動アシスト付き自転車という便利なツールもある。これだと行動範囲は徒歩よりも飛躍的に広がるので、アンテナに引っ掛かる情報も格段に増える。

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 つまり、私が定年後の生活で興味を持っているのは、「生きがい」そのものではなく、生きがいを探す「アンテナの性能」なのだ。これはあくまで個人的な考えなのでご参考までにということで。

 

シニア層は「与党支持」、若年層は「N党」への共感も

自民党に次ぐ政党は立憲ではなくN国?!ネット調査で驚くべき結果に|選挙ドットコムリサーチ

 

 「選挙をオモシロク」を合言葉に、日本最大の選挙・政治情報サイトを運営する選挙ドットコムが11月13日、「自民党に次ぐ政党は立憲ではなくN国?!ネット調査で驚くべき結果に」というタイトルのアンケート調査の結果と検証記事をWebサイトに掲載した。

 

 投票率の低迷などから総じて国民の選挙への関心があまり高くないなかで、同サイトは「自由と責任」「政治的公平性」などを編集ポリシーとしており、全国各地の選挙関連の記事を積極的に配信している。

 

 今回のアンケート調査では、ハイブリッド調査(電話調査とインターネット調査を同じ設問で同時に行う方式)を初めて実施したのが大きな特徴。

 記事にも「大手報道各社では電話調査のみ行われており、比較的高い年代層の回答サンプルが多くなる傾向があります。しかし、選挙ドットコムが行うハイブリッド調査では、幅広い年代層から回答を獲得することができ」とあるように、若い年代層も調査対象に含まれることの意義が大きい。

 

 というのも、大手メディアの世論調査は日中つまり、一般的な会社員が働いている時間帯に行われる傾向が強く、当然ながら回答者は在宅している「高齢者」「専業主婦」といった層が中心となる。

 

 加えて言えば、これは経験した人も多いと思うのだが最近では「自動音声による機械的な電話アンケート」が増えている。

 受け止め方は人によって様々だろうが、個人的には「無機質かつ機械的な質問」に真面目に答えようという気は起きないし、実際に回答したことは一度もない。

 人手と経費の不足でアンケート調査の自動化が進んでいるのだろうが、大手メディアはその手法への反発が存在することも認識すべきだろう。

 

 今回の調査では、電話調査が1031件、インターネット調査が1000件とほぼ同数なので、比較するにはちょうどいいサンプル数となった。

 

 両調査で最も大きな違いが出たのは「回答者に占める年代別割合」。記事にあるように「ネット調査では、40代までの回答者で7割を超す結果」となった一方、「電話調査では50代以上の回答者で7割を超す結果となった」としており、真逆の傾向を示している。

 

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回答者に占める年代別割合

 

 もうひとつの注目点は、電話とネットの調査による「政党支持率」の差。既存政党が「維新の会」のほぼ同じ水準(電話3.2%⇒ネット3.0%)なのに対して、与党の自由民主党公明党はネット調査では電話のほぼ半分にまで支持率が低迷している。

 

 この傾向は野党ではさらに顕著だ。野党第一党の立憲民主党がネットが電話の4分の1(電話12.5%⇒ネット3.1%)にまで差が開いたほか、共産党国民民主党社会民主党も1/3から1/4程度の格差がある。

 

 一方、これとは逆にネットの方が支持率が高いのが「NHKから国民を守る党」と、「れいわ新選組」だ。それぞれ0.8%⇒3.2%、1.0%⇒1.8%とネットの方が支持率は高い。特にN国はネット支持率は電話の4倍となっている。この3.2%という支持率は野党第一党の立憲民主党(3.1%)よりも高い。

 

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電話とネット調査別の政党支持率

 

 この結果を個人的に分析してみると、電話調査の主たる対象と思われるシニア層は自民党への支持率が高く、主たる野党(協賛、社民、立憲、国民)を合わせてもその半分程度にしかならず、与党(公明、維新)と比較すると44%しか支持がない。

 

 これがネット調査になると、最も多いのは「支持政党なし」の65.1%で、電話調査の1.8倍にもなる。若い世代の投票率が低く、政治的関心が低いというのはこの調査結果でも裏付けられた形だ。

 

 ただ、支持政党という観点に絞れば、相対的に見て「野党よりは自民党の方がマシ」と判断しているのは間違いない。

 旧民主党が離合集散を繰り返し民進党を経て、現在の分裂状態に至るなど主義・主張に一貫性が見られないことへの不満があるほか、共産党、社民党にはその左派的なイデオロギーへの警戒感が根強いことや支持層が高齢化している影響もあるだろう。

 

 つまり、「責任ある政治を担えるような健全な野党が存在しないから、消極的選択で自民党が支持されている」というのが実態ではないだろうか。

 

 こうした政治的な不満を抱く若年層を中心とする有権者の一部が、良くも悪くも政治的な主義・主張が明確な「N国」「れいわ」への支持に向かったと考えるのが妥当だろう。

 

 今回から始まった「選挙ドットコム」の電話とネットによるハイブリッド調査については、「幅広い層」の世論を集計しているという点で評価できる。今後も調査結果には注目していきたい。

「顧客を優先」「常識を疑う」はすでに現場では常識なのだが・・・

会社に頼らず生きていける人に共通する3特徴(東洋経済オンライン)

唐土 新市郎 : 社長専門アドバイザー

 

終身雇用、年功序列の会社制度が崩壊しつつあるなか、会社に依存せずに働くための処方箋「会社に頼らず生きていける人に共通する3特徴」が11月13日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事を書いたのは、「社長専門アドバイザー」という見慣れぬ肩書を持つ作家・講演家で、「ひとりぼっち」という会社の社長でもある。出身はコンサルの船井総合研究所で最年少の執行役員だったようだ。現在50歳と思われる。余談だが、この船井総研は中堅家電メーカーの船井電機とは無関係。

 

 記事の趣旨はタイトルにあるように3つ。

  1. つねにお客さんを真ん中に置く
  2. 常識を疑う
  3. 最悪を想定している

 の3点だ。

 

 コンサルタントとして50歳というのは、脂が乗りきっている時期だと思うのだが、読後の感想を言わせてもらえれば「内容が今ひとつ薄い」。

 簡潔に言えば、「そんなことはすでに誰もが知っている」内容なのだ。

 コンサル会社なので、深く手の内を見せることはご法度なのはわかるが、タイトルから想像して読むと、期待を裏切られたような気になるかもしれない。

 

 1の「顧客優先主義」はもはや営業の現場では当たり前の概念だ。記事では「『新商品をいかに売るか』しか頭にない。そんな人が圧倒的に多いです」とあるが、こんな企業はもはやガチガチの中小オーナー企業か、ワンマン経営者がすべてを管掌する独善会社ぐらいしかないだろう。

 

 まともな会社なら、商品企画の段階から営業が関与するので、プロダクトアウトではなくマーケットインの商品を目指すのはごく自然な形だ。つまり「営業がいかに売るか」ではなく「顧客がどうしたら買いたくなるか」に主軸が置かれている。

 

 魅力のない商品を手掛けているのに、上司や自分への評価を気にするなどと言うのは、本末転倒もいいところだ。

 

 2の「常識を疑う」については、検討する余地のある会社は比較的多いだろう。

 記事では、本来の始業時刻より40分も早く出社して上司に挨拶する習慣や、14時から15時と決まっている会議の時間帯が上司の都合で延長になる例を挙げている。

 

 これはまさに「タコつぼ」企業にありがちな無意味な慣習で、誰かが打ち破らないと改善されない。しかもこういう企業に限って「前例主義」「上意下達」が徹底していて、若手の意見など見向きもされない傾向が強い。

 

 こういう企業風土の会社では、記事にあるように「部長の話が長引こうが、説教が始まろうが、15時になったらさっさと退出」というのは、理にかなった行動である。

 最初は勇気がいるが、何度か繰り返しているうちに「あいつはそういう奴だ」という認識が広まって、誰も何も言わなくなる。

 

 ちなみに記事にある会議の時間帯が14時から15時の一時間というのも現在のビジネス感覚では「長い」。知人の会社では「会議は役員会を除いて30分」と決まっている。予約制なので次の会議が埋まっているので、延長はできない。

 よく考えれば週次報告など定例会議は、テーマが決まっているので30分もあれば重運である。特別に検討が必要な案件であれば別に会議の場を設ければいいだけの話だ。

 

 3の「最悪を想定している」は、よほどの自信家でなければ頭のなかにあるはずだ。物事が想定通りいかないのは当たり前で、成長している分野のビジネスの世界では想定外の事態が起きない案件の方が珍しい。

 逆にいえば、普段から業務上で何の変化や突発事態が起きないような仕事しかない会社は、将来性が危ぶまれると見たほうがいいだろう。

 

 こういう会社では、自分の関わる仕事の「最悪の事態」よりも、会社の存続と言う「最悪の状況」を想定した方がよさそうだ。

 

 ということで、3つの視点については、どれも目新しさはなかったが、間違ったことを書いている訳ではない。

 20代の若手社員にとっては、参考になる記事だとは思う。逆に40代以降の中堅社員がこの記事を読んで目覚めたとしたら「相当重症」だろう。

女性が「住みたい」街は「住めたらいいな」では?

新築マンション情報誌SUUMO 2019.11.12号

 

 本日発行された駅ナカの無料住宅情報誌SUUMOの東京市部・神奈川北西版では「女性が住みたい街トップ100」が特集記事となった。

 

 ちなみに首都圏版の特集は「2020年人気が出る街ランキング」で、この2つの地域版で表紙の見出しが、ここまで大きく変わるのは過去に見たことがない。

 顧客の関心度に配慮した結果なのだろうが、首都圏版の方が掲載物件は多いこともあって、東京市部・神奈川北西版の「女性が住みたい街トップ100」の記事の一部も掲載されている。

 

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 今回は、SUUMOとしてはおそらく初めての企画と思われる「女性」に特化した東京市部版のランキング記事を取り上げたい。

 

 このランキングは、毎年SUUMOが調査している「住みたい街ランキング」から女性票だけを集計したもので、関東圏の2049歳の女性3402人が調査対象となったと記載がある。

 

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女性が住みたい街ランキング

 記事ではランキングの上位について、「上位の街は華やか。共通点は“グルメ&ショッピング環境が充実”し、“住宅街に近くおしゃれ」としたうえで、「女性は治安、教育、自然など、暮らしを”守る“街選びをするのに対して、男性は将来の資産価値など”攻め“の街選びをする傾向にある」と女性の住宅ライターが解説している。

 

 今回のランキングについて個人的な感想を言えば、「住みたい」という要望よりは「住めたらいいな」という願望に近いような印象を持った。

 

 例えば、上位3位は「横浜」「恵比寿」「吉祥寺」が占めているが、これらの街は「華やか、グルメ、ショッピング環境が充実」していることは確かだが、「住宅街に近い」というのはどうだろうか。

 この3駅の近くにファミリー向けのマンションが十分に供給されているとは思えない。単身者向けのワンルームはそれなりにあるかもしれないが。

 

 つまり「イメージ先行」で憧れの街に住めたらいいな、という感覚なのではないか。これは4位の目黒、8位の中目黒、10位の新宿にも当てはまる。

 

 5位の「鎌倉」は私自身も住んでみたい気持ちはあるが、巷の評価では観光客で溢れかえって住みにくいという意見も多いし、6位の「武蔵小杉」はタワマンの住宅開発が一気に進んだが、通勤時間帯の駅の混雑は広く知れ渡ることになった。どちらも住環境が良いとは言い切れないだろう。

 

 また、ベスト10を見て意外に感じたのは、東京都が5つにとどまり、神奈川県が3つ、埼玉県が2つと人気が分散したこと。

 特にランキングの上位に「大宮」(7位)、「浦和」(9位)が入ったのは意外だった。どちらも東京に近く、都市機能が充実していることが評価されているのだろう。

 これは偏見と言われても仕方がないのかもしれないが、私のイメージとしては「大宮」は競輪の東日本発祥の地だし、「浦和」にも競馬場がある。まあ最近の女性はギャンブル施設にあまり抵抗はないのかもしれないが。

 

 記事では住宅ライターが、「女性が暮らしやすい街の特徴」として、「多世代共存」と「生活効率がいい」ことを挙げている。

 

 詳細は記事を読んで頂くとして、ランキングの順位とは別に、女性ならではの視点から「街」を検証している点では興味深かった。

 

 SUUMOはその無料情報誌という性格上、不動産業者寄りの記事にならざるを得ない面があるのはしたかがないとは思うが、今回のように編集部の工夫次第で新たな切り口のランキングや記事を掲載したことは評価したい

老後にサラリーマンが会社を買うのは現実的なのか

脱サラ起業よりも「会社を買う」方がいい理由 (プレジデントオンライン)

田之上 信 ジャーナリスト

 

 老後の収入確保の手段として「会社を買う」という方法を解説する記事「脱サラ起業よりも『会社を買う』方がいい理由」が11月9日のプレジデントオンラインに掲載された。

 

 この記事はよく読むと、昨年4月に出版された「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」という本の続編となる「会計版」の紹介でもあるのだが、内容は記事」というよりも「インタビュー」に近い。

 

 要約すると、「日本には後継者を求めている中小企業が100万社あり、黒字の会社も多い。会社を買って役員報酬を得れば、老後の資金を確保できる。ただ会社を買うにはリスクがある。経営状態の入念な調査は必要だ」ということになる。

 

 前書について、私は発売とほぼ同時にAmazonで一番目となるレビュー「中小企業を買い取り経営するという生き方、人生後半の選択肢になりうるか」を書き、★4つの評価を付けた。他のレビューも総じて同書を前向きに評価するレビューが大半だったように思う。

 100件以上の「役に立った」投票を得たこともあって、発売から数カ月はトップレビューを維持していた。本記事を見て今回改めてレビューを見たのだが、驚いたことにトップレビュー8本のうち7本までが★2以下の評価なのである。

 

 レビューのタイトルは「スモールM&Aは売手市場、サラリーマンでは買えない」「サラリーマンの0.1%に入る人向けの本」「あまり現実性はない…」など惨憺たる評価なのだ。

 

 これはどういうことなのか自問自答してみたのだが、思うに前書で紹介した「会社を買って老後資金を確保する」というコンセプトが目新しかったので注目を集めて結構売れたが、M&A市場を知る人たちから「現実」をもっと認識するべきだというレビューを書いたことが影響したと思われる。

 

 ちなみに私のレビューは「中小企業を買い取り経営するという生き方、人生後半の選択肢になりうるか」と言うタイトルで、内容は「会社買収というのは想像していたよりもハードルは低いようだが、成功する可能性のハードルは高そう」という趣旨だった。

 

 具体的には、M&Aが成功すればいいが、自分の特性にあった会社が、手ごろな値段で、適当な時期に見つかるかは運任せの部分も大きいし、運悪く「実は手に負えない会社だった」というリスクも十分にある、とレビューでは書いた。

 

 今回出版された「会計版」では、リスクを回避するための「危ない会社の見抜き方」などを解説しているようだが、この本一冊読んだところで、効果は限定的だろう。自分に合った会社が見つかる可能性がそれほど高まるとは思えない。魑魅魍魎が跋扈する企業M&Aの世界はそれほど甘くないだろう。

 

 前作では「中小企業を買うことのメリット」を強調していたが、今回の新作を紹介する記事では、レビューでの批判を恐れてか「予防線」をいくつも張っている。

 

 具体的には、「私が提唱しているのは、生き方です。会社を買うというのは目的ではなく」とか、「年収が下がったとしても、ものすごく面白くてやりがいがあればそれは意味があります」のほか、「買った会社が倒産したとしても、株主が責任を負うのは会社を買った株式の金額だけ」といった失敗へした場合への「言い訳」が列記されているのだ。

 

 今回出版された「会計版」には、Amazonで現時点で50個のレビューが付いている。内訳は★5つが73%、★4つが22%で、この2つで95%を占めている。これは前作が発売された直後のレビューの傾向に近い。

 

 私自身はこの新作を読んでいないので、レビューは書いていないし、書く予定もない。

 その理由は、「会計版」というタイトルから内容がほぼ想像できるうえ、内容の方向性が前作を踏襲していて、目新しさが感じされないこと。

 加えて、本記事を読んで、著者がやや責任を回避する「逃げ腰」を姿勢を見せていることも気になる。

 

 結論として言いたいのは「経営の素人がおカネで買った中小企業を経営するのは想像以上にリスクと困難が付きまとうはず」ということだ。

他人より自分が「面白く」なければ人生はつまらない

SNSに疲れた現代人に贈る「面白さ」の本質論(東洋経済オンライン)

森 博嗣 : 小説家、工学博士

 

 生きることは「面白さ」の追及である、という趣旨の記事「SNSに疲れた現代人に贈る『面白さ』の本質論」が11月9日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 執筆したのは、元研究者で人気ミステリー作家の森博嗣氏。私はミステリーを読まないのだが、森氏を知っている。

 というのも共通の趣味と言うのはおこがましいが、大型の鉄道模型(軌道幅が45mmあるGゲージ)で、過去にネットオークションで私が出品した機関車を購入して頂いたことがあるからだ。そして、森氏は鉄道模型に関する書籍「庭煙鉄道趣味 庭蒸気が走る毎日」も書いている。

 

 ちょっと話がそれたが、このように経歴や趣味で多彩な面を持つ筆者が、人生の面白さについて語ったのが本記事だ。

 

 まず初めに、研究者時代の面白さは「知る」ことだったこと、現在の若者が面白いと感じるのは「大勢に受けるもの」で、これは面白さを感じるのが「本人」か「周囲の人」かという点で対極にある、としている。

 

 これが記事のタイトルにある「SNSに疲れた現代人に贈る」というキーワードに繋がっているのだ。

 

 つまり周囲に合わせて「楽しませよう」とするから、結果として実際には自分は「楽しめていない」ということになっているという趣旨だ。

 

 SNSは多くの他人とつながりを持てる点でメリットは大きいが、利用している本人が知らず知らずのうちに「他人のため」に自分の意見や時間を犠牲にしてしまい、他人との繋がりを楽しむのではなく、「いいね」の獲得が目的になっていることを森氏は警告している。

 

 私自身はフェイスブックもツイッターもアカウント自体は持っていて、まだ有効なはずだが(未確認)、現在の更新状況はゼロだ。LINEに至ってはアカウントすらない。日々更新しているのはこのブログだけだ。

 ブログを続けられるのも、他者とのやり取りが発生せず、自分の興味があることを自分の考え方で自由に書けることが大きな理由になっている。実際のところ「日記」に近いかもしれない。

 

 当初は私もフェイスブックをきっかけに学生時代の旧友と繋がって、何十年かぶりにコミュニケーションを取れたりしてそれなりに面白かったのだが、いつの間にか「知り合いの知り合い」が増え始めて、よく知らない人との繋がりを面倒だと感じるようになって止めてしまった。

 

 記事には「自分が成長し、あるいは元気になれる。そして、結果的に自己の満足を導く。そういうものを摂取することが『面白い』と感じるように、人間の脳はできている」とあるが、要するに「面白くない」ことを続けるのは疲れることであり、苦痛になるのだ。

 

 SNSで「いいね」を獲得することが本当に楽しいと感じているのであれば、それは個人の感性の問題だから他人がとやかく言う話ではない。

 ただ「SNS疲れ」という言葉が一般的になったことを考えると、面白いからとか楽しむためにやっていることが、実は「面白い」どころか「苦痛」になっている人は多いのだろう。

 

 記事では最後に「生きるとは、『面白さ』の追求でもある。『面白い』ことを見失ったら、生きていけないのではないか」とまとめている。

 

 ここで言う「面白さ」とは、「知的好奇心を満足させること」と定義してもいいだろう。これにはSNSで「いいね」を獲得することは含まれないはずだ。

 

 本当の面白さは「知る」「気づく」ことから始まる、という森氏の主張には賛同したい。

ネットニュースと新聞は役割分担すべき、目的の違いは明白

ネットがあれば新聞不要と思う人に欠けた視点(東洋経済オンライン)

池上 彰 : ジャーナリスト

  

 新聞の購読者数の減少と、それとは対照的にネット系のニュースの隆盛が著しい。

 こうしたなか、あえて新聞の存在意義を説く記事「ネットがあれば新聞不要と思う人に欠けた視点」が11月8日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 記事では新聞の存在意義のひとつに「取材」があると指摘。「新聞社の記者が取材した記事がなくなればネットに記事が転載されることはない」としている。

 

 また、新聞離れで先行しているアメリカでは、地方紙の廃刊によって地元の選挙を報道する手段がなくなり投票率が激減した、という事例を紹介して新聞メディアの減少による悪影響とその存在意義を解説している。

 

 下の表は新聞協会が発表しているデータだが、左端の発行部数合計は2000年の5370万部から2018年には3990万部と記事にあるように約26%減少、4000万部を割り込んでいる。

 この間、世帯数は4741万から5661万へと19%増加しているので、潜在的な需要増を取り込めていないことを考慮すると、新聞へのニーズは数値以上に激減していると見ていいだろう

 

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新聞協会経営業務部調べ (単位=部)

  記事では、上記2つの事情に加え、アメリカの「ウォーターゲート事件」や日本の「リクルート事件」を取り上げ、「新聞はつねに国家や権力者を監視し、世の中を動かしてきました」と新聞の存在意義を説いている。

 

 記事を読んだ感想を言えば、「間違ってはいないが、新聞の部数減少の主たる原因はネット社会の普及に対応した紙面構成を怠った新聞社側にある」と思っている。

 

 筆者の池上氏は「新聞社は多くの記者を抱え、直接情報源に取材して記事にします。この第一報がなければ、ネットに記事が転載されることもありません」としているが、この認識はやや時代遅れと言える。

 

 例を挙げれば、日本経済新聞はネットの電子版に速報記事を中心に新聞よりも優先的に配信、その他の記事も新聞より早く報じている。特に有料会員向けにはその傾向が顕著だ。

 

 そもそも、朝夕の二回しか読者に伝わらない新聞に対して、24時間ニュース配信が可能な電子メディアでは、速報性で勝負にならない。

 

 個人的な意見を述べれば、速報性のある記事や一般的なニュース、発表モノなどはネットで配信した方が価値は大きいし、読者のニーズにも合っている。

 

 新聞は、池上氏が言うように「大量の取材記者」を抱えているのだから、社会的な意味の大きいスクープ記事の発掘も重要ではあるが、ネットメディアで先行して配信した記事を、オリジナルな分析でその背景を解説したり、過去の経緯や今後の展開などを説明するといった、今まで以上に「読み甲斐のある記事」に方向転換すべきだと思う。

 

 調査報道では、週刊誌など雑誌の方が時間をかけて取材、調査できるという側面はあるが、週1回の雑誌と1日朝夕2回の新聞では、まだ新聞の方が優位性はある。

 

 実際に新聞社のサイトを見ると、今年に入ってから記事の大半が有料会員でないと読めない傾向が強まっているように感じる。

 当たり障りのない記事はタダで読めるが、「価値がある(と新聞社が判断した)記事は有料で」という編集もしくは営業サイドの方針は理解できないでもないが、私のような無料会員にとっては、決して安くはない月額料金を払って新聞をネットで見ようとは思わない(産経新聞は月額500円と安いが)。

 むしろ「金を払わない人はサイトを見るな」と宣言されているようで不快感すら覚える(特にM紙)。

 

 現実にネット読者向け新聞の有料版で成功しているのは、有料会員が60万人を超えている(2018年6月時点)日本経済新聞ぐらいだろう。

 日経は「会社情報」や「データバンク」など保有する経済や企業データの情報量が他社に比べて半端ではないため、ビジネスマンや企業向けを中心としたこれらのデータを生かしたメディア戦略が奏功したとも言える。

 

 その他の新聞社もこの辺りの事情は当然ながら把握しているだろうが、宅配制度を維持するための販売店対策など、解決すべき課題も多く、ネット新聞に移行するにはまだまだ時間はかかるだろう(この点でも他の新聞販売店の軒先を借りて宅配している日経は有利)。

 

 であれば、紙面を「読みたくなるような内容に変化させていく」しか解決策はないのではないか。

 ネットニュースのような速報性はないが、週刊誌よりは早く、しかも読む価値のある「解説記事」を中心に編集すれば、まだ紙の「新聞」が生き残る道はあると思う。