如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

トヨタのKINTO苦戦、個人リースとの差別化と魅力向上がカギ

トヨタの自動車サブスク「KINTO」大苦戦の真因(東洋経済オンライン)

木皮 透庸 : 東洋経済 記者

 

 トヨタ自動車が、今年導入した自動車の定額利用サービス、「KINTO」が苦戦を強いられているようだ――「トヨタの自動車サブスク『KINTO』大苦戦の真因」が12月26日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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KINTOのWebサイトの一部抜粋

 記事によれば、KINTOの契約件数はトライアル期間(3月~6月)に83件、その後の全国店以後も11月までの5カ月で868件に留まったそうだ。

 全国に4800店の販売網を持つトヨタとしては、月間の取り扱いが173台というのは「かなりマイナーな車」の水準である。ちなみに日本自動車販売協会連合会によれば「乗用車ブランド通称名別順位」によれば、11月の上位50車の最下位のハイエースワゴンでも731台売れているのだから、KINTOは予想をかなり下回っていると言っていいだろう。

 

 トヨタも、対象となる車種を追加したり、中古車や法人向けを手掛けるなど、手は打っているようだが、効果はまだ未知数だ。

 

 実は私自身、以前KINTOではないが、日産の個人向けリースでミニバンを購入したことがあるのだが、その決め手になったのは、

 ①当時は新規格キャンペーンとして金利優遇があったので、普通に分割払いで購入するのとあまり価格差がなかったことと、

 ②車がモデルチェンジではなく、完全な新モデルだったので、リコールや故障、修理、事故など何が起きても「販売店」に持ち込めばいいという安心感

 が決め手になった。

 

 任意保険も価格に含まれていたので、事故の際にも窓口を販売店の担当者がすべて対応してくれるというメリットは、実際に2回ほど自損事故を起こして実感した。保険会社との交渉が不要なうえ、代車の手配が迅速だったのもありがたかった。

 

 話は戻ってKINTOだが、トヨタが若者を中心とした「クルマ離れ」に一石を投じようとする試みは理解できる。最近のサブスクリプションブームに便乗するのも悪くはない。

 ただ、購入する側から見ると、個人リースや残価設定ローンとの違いが分からないというのが実情ではないだろうか。

 

 しかも記事では、販売会社の「残価設定型クレジットなどで売る方が、収益性が高く、今のところキントを顧客に積極的に勧める理由が見当たらない」というコメントを紹介しており、販売の現場にとっても「売る手法が増えたほどメリットはない」ようだ。

 つまり、買い手にも売り手にも「あえてKINTOを選ぶ理由」が見当たらないのだ。

 

 個人的にはサブスクリプションを訴求したいなら、記事にある福岡トヨタが展開する「KINTO ONE FT」ように、一年ごとに別の車種に乗り換え可能なスタイルにしてこそ、サブスクリプションのような魅力を感じるのではないだろうか。半年ごとに乗り換えられるレクサス版「キントセレクト」もあるにはあるが、月額19万8000円からというのは個人にはハードルが高すぎる。

 

 現時点ではコンパクトSUV「ライズ」で月額3万9820円(税込)が最も安い設定のようだが、これを3年縛りではなく半年か1年で乗り換え可能、しかも中古車も選択可能というような仕組みを変えれば、多少価格が高くなってもニーズは出てくると思う。

 

 現在、新車を実際に乗って確かめようとすると、売店で短時間の「試乗」をするか、新車のレンタカーを探すしか手段がない。試乗は無料だが、レンタカーは一日借りれば安くてもコンパクトカーでも諸経費込みで1万円近くなる。

 現在、日産ではリーフの「一泊二日試乗」を提供しているようだが、これは「電気自動車の知名度向上」を狙った一時的なキャンペーンに過ぎない。

 

 これが、定額の支払いで半年もしくは一年ごとにSUV、ミニバン、コンパクトと乗り換えができれば、その都度交渉、契約して、支払い額を決めるという手間も省けて、いわゆる「サブスクリプション」的な「乗り放題」のイメージに近くなる

 

 来年4月からは4系統に分かれて販売車種を棲み分けていた販売店が、全国で一斉にすべての車種を扱えるようになる。

 これはKINTOの普及には追い風要因になるはずだ。トヨタは買い手にはさらなる「幅広い車種選択」と「手ごろな価格」を、売り手にはより「KINTO販売のメリット」を提供して欲しい。

 

 個人の「モノ」への価値観が「所有」から「利用」へと変化しているだけに、KINTOはやり方次第で普及する可能性はあると思う。

 

来年のマンション価格、専門家の見方分かれる――都心以外は振るわず

SUUMO新築マンション2019.12.24号

 

 駅ナカで配布される新築マンションの無料情報誌「SUUMO」の年内最終号が12月24日に発行された。

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 今年春頃には掲載物件の減少によるページ数の減少で、週刊が隔週刊になり、東京市部・神奈川北西版はホチキス留めに変わるなど、逆風に見舞われた一年だったが、来年以降も発行は続きそうだ。

 

 今回の特集は2つあって、ひとつは表紙に大きく書かれた「年収と家、7719人調査」、もうひとつが「2020住まいの10大トレンド」だ。

 調査の方が表紙の文字は大きいのだがページ数は7で、特集記事としての掲載も2番目。記事としては、第2特集の「10大トレンド」の方が、内容も面白いし、ページも10ページと充実している。

 

 その「10大トレンド」だが、「新駅」や「テレワーク」など関心をそそる内容が多いのだが、個人的に最も参考になったのは、番外編の「2020年は『買い』なのか」だ。

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番外編の「マンション価格予想」

 見開き2ページを使って、価格動向、供給、金利・税制の面から解説している。

 

 元がフリーペーパーでデベロッパーからの広告収入で成り立っている雑誌に、多大な公平性、中立性を要求するのは無理であることは差し置いて、今回の記事で参考になったのは、番外編の「3人のプロに聞く!2020年以降のマンション価格予想」という記事。

 

 住宅評論家など3氏が首都圏を中心に、大阪府、愛知県を含む全国12か所の価格予想をして、表にまとめているのだが、この予想が大きく割れていて、面白いのだ。

 

 評価は、◎(上がりそう)、〇(現状維持)、△(下がる可能性も)の3段階なのだが、3人の評価にはすいぶん差がある。

 

 3人のなかで最も価格予想に強気なのが、ニッセイ基礎研究所の主任研究員である吉田氏で、△の地域はゼロ、東京の都心と城南の2か所は◎で、残りはすべて〇となっている。つまり2020年以降もマンション価格は全国的に下がらないと予想している訳だ。

 大手民間のシンクタンクの研究者が、ここまで強気の予想をする理由については書かれていないが、マンションの価格下落は中古では、すでに今年に入ってその傾向が見られることから考えても、都心とはいえ価格がこの先「上がる」というのはやや楽観的な予想に思える。

 

 一方、不動産業界向けの会員ポータルサイトを運営するマーキュリーの片平氏は、◎はゼロ、〇も4地点で、残りの8地点は△となっている。ニッセイ基礎研の吉田氏とは正反対の弱気の予想だ。

 その〇の地点も2か所は、吉田氏と同じ「都心」「城南」で同じ、残りの二か所は「城東」「大阪」となっている。

 神奈川、千葉、埼玉の東京隣接県はすべて△で、首都圏郊外にはかなり厳しい予想だ。

 

 この2人の中間的な評価をしているのが、住宅評論家の坂根氏。◎が5地点、〇が4地点、△が3地点とバランスを取っている。

 ◎は「都心」、「大阪」、「名古屋」など大都市圏に集中している一方で、「城南」の◎と「城西」の〇以外の「城北」などの東京3地点を△としており、東京以外の他のエリアよりも厳しい予想をしているのが目を引く。

 

 個人的な意見だが、3氏の価格予想については、「記号」だけでは物足りない気がする。読者としてはその「理由」も知りたいのではないだろうか。

 寸評として、編集部の簡潔なコメントが掲載されているが、見出しの「価格上昇するエリアも」というのはかなり苦しい。

 というのも予想の一覧表を見れば、全予想36のうち、◎(上がりそう)は7つ、一方、△(下がる可能性も)は11か所と下落予想の方が多いのである。

 まあ、雑誌の立場上、このような表現になるのは仕方がないのだろうが。

 

 興味を引いたのは、吉田氏を除く2名が共通して△を付けたのが全12か所中、東京の「城北」と「市部」の2か所だけだったという点。

 個人的には、このエリアでのマンション供給過多の影響だとは思うが、大阪(坂根氏は◎、片平氏は〇)よりも見通しが暗いのは気になった。

 

 タダで配布されている雑誌の編集内容にケチを付けるのは大人気ないのかもしれないが、その記事の内容も受け止め方次第でマンションの購入予定者に十分「役に立つ」と思う。

 SUUMO編集部には来年も、可能な限り購入者の目線に立った記事を掲載して欲しいものである。

純正リモコンからテレビにウイルスが感染するらしい――ヤマダ電機の店頭で

ヤマダ電機の店員の説明に驚愕

 

 このブログでも何度か書いているが、我が家では10年前に買ったパナソニックのプラズマテレビが壊れかけているので、近いうちに買い替えを検討している。

 

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 子供が小さかったためテレビのリモコンが行方不明になることが多かったので、別途純正リモコンを3台購入したこともあって、リモコンの流用も兼ねて後継機種もパナソニックの液晶49型「TH-49GX855」に決めており、現在価格の動向を見極めている最中だ。

 

 参考までにヨドバシカメラの価格は、発売当初175,780円だったが、11月6日に148,940まで下落し、その後持ち直し現在162,730円となっている。5%のキャッシュレス還元は今月末までなので買いたいのはやまやまなのだが、実際に価格が下がるのは年明けにありそうだ。

 

 という訳で、買う機種は決まっているのだが、他の量販店の価格動向も気になるので、先日近くにあるヤマダ電機に行ってみた。

 張り出してある価格は、想定通りと言うか希望価格よりだいぶ高いのだが、今後の価格や新製品の動向などを含めて店員さんと雑談めいた話をしていた。

 

 話題がリモコンの機能の話になったので、「実はウチにパナソニックの純正リモコンが3台もあるので、現行機種にも使えるか実際にリモコンを使って確認したいのだが」と振ってみたのだが、店員の回答は「それはできません」の一言。

 

 理由を聞いて驚いた。その理由とは「リモコンからテレビにウイルスが感染するので」。

 断っておくが、リモコンは10年前の機種とは言えパナソニックの純正である。それをパナソニックの現行機種のテレビに使うと「ウイルス」に感染するというのだ。

 

 最初は冗談で言っているのかと思ったが、本人の説明を聞いているうちに「どうせAV機器の仕組みに詳しく顧客だろうから、ウイルス感染とでも言っておけば諦めるだろう」という雰囲気がアリアリだった。

 

 常識で考えても、ボタンしかない純正リモコンにウイルスを組み込んで、それを同一メーカーのテレビに感染させるというのが「非常識」だとわかるはずなのだが、「面倒なことに関わりたくないという」店員の態度は、「今後何があってもヤマダ電機では買い物をしない」という決意を固めさせるには十分だった。

 

 大塚家具などを買収して、他業種に乗りだすのは構わないが、「本業」の家電売り場の店員の対応がこのような状況では、ヤマダ電機の先が思いやられる

 

【追記】

 その後、パナソニックのサポートセンターに電話して、リモコンの型番を伝えたら、「電源、音量、チャンネルなどの基本機能は問題なく使えます」との回答だった。

 とてもではないが「リモコンからウイルスが・・・」などと間抜けな質問ができるような雰囲気ではなかった。

 ヤマダ電機は、自社店舗の社員教育を一度見直した方がいい。もし店舗情報などが必要ということであれば、メールで連絡いただけばお知らせいたしますのでお気軽にどうぞ。

他人の目を気にせず、信念を確立することが「一流」の条件

「人から嫌われても」全く気にしない人の共通点(東洋経済オンライン)

高 利美 : 銀座ルナピエーナ オーナーママ

 

 サラリーマンを続けていると、上司や周囲の評価がどうにも気になり、好きになれない仕事にも本音を抑えて取り組む――こんなサラリーマンはまだ多数派を占めると個人的には思ているのだが、「一流」の人は全く逆の信念に基づいて行動をしていることを紹介する記事「『人から嫌われても』全く気にしない人の共通点」が12月21日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 著者は、銀座ルナピエーナのオーナーママである日高利美氏。「コミュニケーションのプロフェッショナル」として書籍や雑誌、TVなどのメディアでも活躍しているらしい。ちなみに現在新人スタッフも募集中のようだ。

 まあ26歳で銀座に店を構え、平成の経済低迷時代、競合の厳しい中で26年間商売を続けているのだから、実績は申し分ないはずで、発言にも説得力があるのは間違いない。

 

 本稿は、銀座のママとして今まで夜の銀座で出会い惚れ込んだ「男性」の共通点について3回の連載の第一弾となる。

 今回の記事のポイントは、一流の男性は

  1. 「人に好かれようとしない」
  2. 「好き嫌いで仕事している」
  3. 「時間の大切さを知っている」

 という特徴があるということ。

 

 各項目の事例や内容については記事を読んで頂くとして、個人的に感じたのは、これら3つに共通するのは「自分の評価を基準にしている」ということだ。

 

 こう言うと「俺は自分の行動基準は自分で決めている」と主張する人は多いはずだが、実際に自分の行動をよく思い返してほしい

 1の「言いたいことがあるけど場の空気を読んであえて発言しなかった」、2の「好きになれない案件だけど仕事だと思って割り切る」という経験とまったくしたことがないと断言できるビジネスマンは、私を含めてそう多くはいないはずだ。

 3の「時間の大切さ」はサラリーマンの基本であり、これを実行できない人は社会人としてすでに失格だと思うので、個人的には「一流」の条件以前の問題だろう。

 

 1の「人に好かれようとしない」は、所属するチームやプロジェクトのなかで「協調性」を優先した結果だが、仮にそこで発言し、「より優れた結果」に結び付く内容だとしたら、それは「機会損失」という意味で会社にとって逆効果のはずだ。

 確かに、議論の方向性が出てまとまりかけていた案件に、異論を差し挟むのは勇気がいるが、論理的で説得力があれば、常識のある人なら見直すことに反対はしないはずだ。場を取り仕切っている人には嫌がられるかもしれないが。

 また、個性的な持論を持ち出すことで、それが考慮されて実績が出れば、「仕事に一家言もっている」として周囲の評価も変わってくるはずだ。

 ただ注意したいのは、目的は「仕事の質の向上」であり、「自分が目立つこと」はないこと。いつでもどこでも自己主張すればいい訳ではない。場をわきまえない自己主張が許されるのは新人の数カ月ぐらいだ。

 

 2の「好き嫌いを基準に仕事をしている」というのは、記事を読まないと誤解を招くかもしれない。

 記事では「仕事の内容を個人の好き嫌いでより好みをしているとか、仕事関係の人を好き嫌いで判断して態度を人によって変える、という意味ではありません」と解説している。

 著者の本意は「信念が共感できない人とは一緒にいたくない」ということで、相手の信念に共感できる人を「好き」になり、一緒に仕事をしようと言う意味で選別しているということだ。

 

 とはいえ、会社全体から見れば「ルーチンが完全に機能していて改善の必要が見当たらない」仕事や、主力事業から外れて「残務処理」のような職場が存在するのも事実。

 こうしたケースでは「仕事」そのものを「好き」になるには現実問題として無理がある。であれば、その職場にいる信念を共感できそうな人と「交流」することを仕事にすればいい。

 

 会社の仕事として「結果」はでなくても、価値のある人脈を得られれば、それ自分にとっては十分な「成果」だ。

 

 サラリーマンにとって、与えられた仕事は「材料」に過ぎない。肝心なのはその材料を処理するための「ツール」やその「使い方」だという意識で仕事に取り組んだ方が、本人のスキルは向上すると思うし、将来役に立つのは間違いない。

 

先天的におカネの管理ができない人という存在――必要なのは「相談」より「治療」

FPは見た!「お金が全く管理できない人」の実態(東洋経済オンライン)

高橋 成壽 : ファイナンシャルプランナー

 

 世の中には、一般常識では考えられないようなレベルの「おカネ」の管理ができない人が一定数存在する――このような実例を紹介する記事「FPは見た!『お金が全く管理できない人』の実態」が12月19日の東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 執筆したのはファイナンシャルプランナーで「ライフプランの窓口」を企画運営する高橋成壽氏。「ライフプランの窓口」は、ライフイベントに合わせた「安心」と「生活設計」をお手伝いすることをアピールしており、全国のFPと契約している組織のようだ。

 

 今回の記事のテーマは、「おカネの管理ができない人」なのだが、紹介される実例は以下の3つ。

  • 自動車の趣味に入れ込んで家計に関心がない
  • 借金の返済のために投資に手を出す
  • ストレス解消のため買い物で返済不能なまでの借金を抱える

 の3つだ。

 

 私自身、AFP(失効中)、証券外務員、銀行業務定試験(証券)などの資格は保有しているので、身内や知人などから資産運用の相談を受けることもあるのだが、この事例のように本人の意識の問題から「どうにも手の施しようがない」人がいたこともあった。

 

 彼らに共通するのは「借金をすることにまったく抵抗がない」という点だ。

 普通の人は住宅ローンがいい例だが、まず借金をする段階で立ち止まって考えることが多いだろう。ただクレジットカードの普及によるボーナス一括払いやリボ払いなどの普及で、同じ借金でもカードだと抵抗が小さいという面はある。

 また安易にできる「キャッシング」も一因になっているだろう。

 

 ただ借金で家計が破綻に追い込まれるまでとなると、これは普通の人の常識を超えた行動だ。彼らの思考パターンは、とにかく目先にある趣味やストレスのために「おカネ」を使ってしまうのである。

 相談された本人と会ったこともあるが、やや疲労感は感じたが、誰もが一見して生活が破綻しているようには見えなかった。

 

 個人的には、後先を考えずに自分のやりたいことをやらずにはいられない性格で、そのためには借金がいくらになるかなどという現実に関心が及ばないという点で、「借金依存症」という一種の病気ではないかと思う

 

 つまり事例1、3のように借金を止める気がない、事例2のように止めたいができないの区分はあるものの、これは家族や友人、そしてFPが解決できるような「相談」レベルではなく、医療面での「治療」が必要だろう。

 具体的には精神科のカウンセリングの他、借金依存症の別名DA(デターズ・アノニマス)を対象にした自助グループ「DA Japan」などが対応策のひとつとして挙げられる。

 

 記事でも、「学校や職場での金銭教育以前に、お金の管理が致命的にできない人たちが、一定割合いるのだろう」としているが、続けて「今後脳科学による研究が進めば、なぜお金を管理することができないかも明らかになるかもしれない」とするにとどまており、具体的な解決策は提示していない。

 

 まあ、プロのFP集団の代表なので、医療機関や自助グループに行くことを勧めるのは、立場的に難しいのだろうが。

 

 とにかく、周囲に今回の事例のような人がいたら、関係者はFPではなく、まずは医療機関や自助グループに行くことを勧めるべきだろう。FPは資産管理や運用のアドバイスはできても、「借金依存症」という病気の治療はできないからだ。

 

 これから政府の推進するキャッシュレス社会が進行すると、買い物での支払いが便利になるため、無意識のうちに購入金額が膨らみ、クレジットカードの場合深く考えずにリボ払いを選択、気が付いたら払いきれない借金を抱えていた、という事態にならないことを願っている。

 

 こうしたなか最近、各種クレジットカード会社から執拗に「リボ払い」を勧誘するハガキやメールが届くのが、どうにも気になるのは私だけだろうか。

 

日米ともに奨学金の問題点は企業の「大卒信仰」だ

アメリカを静かに殺す「学生ローン」という爆弾(東洋経済オンライン)

アイネズ・モーバネ・ジョーンズ : ライター/編集者(在シアトル)

 

 アメリカの学生が抱える学生ローンの総額が初めて1兆ドル(約110兆円)を超えた。この金額はクレジットカードの合計債務額よりも多い――米国の大学生の多額の債務の現状と問題点を解説する記事「アメリカを静かに殺す『学生ローン』という爆弾」が1218日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 日本の公的な奨学金貸与機関である日本学生支援機構の平成28年度事業説明によれば、貸与金額の総額は1464億円だから単純比較では米国は日本の100、人口や進学率から見てアメリカの大学生は単純に日本の4倍程度の奨学金を借りている大学生がいるとしても、一人当たりの借入金額は日本の25倍程度になる。

 

 まず、なぜこのような高額の借り入れになるかと言えば、米国の私立大学の学費が高いから。記事によれば市大学生の年間費用は7万ドル(約760万円)だという。これには学生寮や食費、教科書代などが含まれているが、日本の私立大学の学費が、年間90万円(2018年、授業料)に比べれば格段に高い。

 

 ではなぜ、高い学費を支払ってまで大学に行くのかと言えば、この理由は日本・米国ともに共通で「給料の高い良い仕事」に就くため

 日本でも、大企業は「大卒」を採用条件にしている会社がほとんどだが、状況は米国でも同じようだ。

 

 ただ学生の抱える金額の絶対額の差は歴然としている。先に25倍と書いたが、日本でも学費以外の諸経費を考慮すればそこまで大きくないのかもしれない。

 また、一流私大を優秀な成績で卒業して、コンサルや投資銀行などに入れば初任給も日本とは数倍の格差があるはずで、彼らには返済は大きな負担にはならないだろう。

 

 私も私大出身だが、当時はまだ奨学金を借りる学生の比率は現在よりかなり低かったと思う。月数万円の借り入れだったが、借入時に面接があり、その後も毎年成績をもとにした面接があり、授業や試験に気が抜けなかったし、何よりも卒業後に100万円単位の借金を10年で返せるのかとても不安だった記憶がある。

 

 現在は、学生の半数が奨学金を借り入れているとも聞くし、時代が変わって借金への不安が薄らいでいるのかもしれないが、終身雇用制度が崩壊し、非正規雇用の比率が高まる中で、最大20年にも及ぶ返済が確実とは言い切れないのではないだろうか。

 

 記事では米国では、学費負担を担うべき親が10人のうち4人しか貯蓄をしていない、と親の学費のための貯蓄の低さを指摘しているが、これにはやや違和感を覚える

 初年度の入学金などを含む費用の支払いは高校生には無理だろうから親の肩代わりは理解できるが、その後の費用は自分で調達するのが当然ではないか。

 大学は義務教育ではないのだから、行く行かないを決めるのは本人である。しかも借入時に返済シミュレーションは明示されるはずなので、卒業後に「こんな多額の返済はできない」などと泣きつくのは、社会人としての自覚に欠けると言われても仕方がないだろう。

 

 もっとも、最大の問題は特に米国においては「学費」の高さだ。大学の運営費用や補助金の女性政策なども影響してるのだろうが、年間760万円は4年間で約3000万円ということだ。米国の郊外ならまともな戸建てが十分に買える金額だろう。

  さらに根が深いのが、大学にいかないと良い仕事に就けないという現実だ。進学したからといって良い仕事が保証される訳ではないのだが、行かなければその可能性すらゼロになる。

 医師や弁護士、会計士などある程度高給が見込める仕事に就くために専門学部に進学するならともかく、普通の人文科学、社会科学系の学部に進むのは費用に見合わない可能性が大きい。これは日本でも事情は似ているかもしれない。

 

 日本の場合、個人的に対策として考えているのは、会社側が「大卒」信仰を止めること、そして一定水準以下の大学の削減である。

 

 日本でも、2017年度に「実習や実験等を重視した即戦力となりうる人材の育成を目指す」専門職大学の制度が導入されたが、既存の高校や高専にも特殊分野に限れば優秀な技能を持つ生徒は少なくない。

 これは以前に新卒採用の関係者から聞いた話だが、就職希望者に一般常識のペーパーテストを実施したら、商業高校の生徒の方が、一部の大学生よりも点数が高いことは珍しくなかったそうだ。

  企業側も、就職希望者の「大卒」という肩書ではなく、「スキル」という資質を見極めて、人材を採用・育成するという方策を検討すべきではないだろうか。

 

 もうひとつの「大学の削減」だが、これはいわゆる偏差値の付けようのないFランクの大学を意図している。地方や郊外の小規模私大が多いが、事実上無試験で入学できるので、そもそも大学で勉強しようという意思のない学生が大半のはずだ。

 よって4年間の学生生活をアルバイトとサークル活動に終始し、卒業となる。こうして手に入れた卒業証書にどれほどの価値があるというのだろうか。それも多額の奨学金を借りてまで。

 

 米国の学生ローンほど日本の奨学金の事情は深刻ではないかもしれないが、根拠のない「大卒信仰」と、価値のない「大学淘汰」は、いずれ現実のものになると思っている。

 

五つ星ホテルは日本の観光業の仕組みを変える「きっかけ」になる

政府「高級ホテルを50カ所」に反対する人の盲点(東洋経済オンライン)

デービッド・アトキンソン : 小西美術工藝社社長

 

 東洋経済オンラインではおなじみの小西美術工藝社社長デービッド・アトキンソン 氏が、12月17日付で「政府「高級ホテルを50カ所」に反対する人の盲点」というタイトルの記事を投稿した。

 事の発端は、菅義偉官房長官が7日「各地に世界レベルのホテルを50カ所程度、新設することをめざす」と発言したこと。

 

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 記事によれば、問題視されているのは「財政投融資を活用し、日本政策投資銀行による資金援助などをするという点」のようだ。つまり税金を高級ホテル建設に使うべきかという指摘だ。

 対して、デービッド・アトキンソン 氏(以下著者)は、海外からの富裕層を招くことが日本の観光業の隆盛に繋がる理由を「合理的」に解説していて、今ひとつ論点がかみ合っていない面もある。

 

 前者が、税金の使い方という財政面から「方法論」を展開しているのに対して、著者は高級ホテルが日本の観光業の付加価値化を高め、生産性も向上するという「結果論」を重視しているからだ。

 

 個人的な感想を言えば、著者の意見に賛同したい

 日本に外国人向けの高級ホテルが足りないのは事実。記事によれば五つ星ホテルは日本には32軒しかないのに対して、アメリカには755軒、インドネシアにはバリ島だけで42軒もあるという。

 

 これは、これまでの日本の観光業が歴史的に「国内需要」しか相手にしてこなかったツケが、近年の訪日外国人の急増で表面化したといっていいだろう。

 

 日本にも有名温泉地に高級旅館と呼ばれる一泊2食で10万円クラスの宿泊施設はあるが、これも主たる顧客は国内の富裕層で、1泊もしくは2泊程度しか想定していない。提供される食事が多くの場合、朝夕共に2つのバラエティしかないことがその証拠だ。

 これでは外国人客が好むとされる「長期滞在型」の宿泊には対応できない。

 

 中国人観光客は、東洋経済オンラインの過去の記事「中国人が山ほど金使う「日本観光」の残念な実情」にもあったが、富裕層は「1週間程度の滞在で、1人当たりの消費支出は平均200万~300万円にも達する」そうだ。

 彼らの宿泊地の選択基準は「価格」ではなく「満足度」であり、納得できるのなら大金を出すことを惜しまない。

 

 日本政府観光局(JNTO)の訪日外国人の推移を見ると、韓国は7月以降激減しているが今年前半前までは中国と並んでトップ集団に入っていた。

 ただ、観光の場合「対馬への日帰り旅行」が多く、消費金額も少ないという側面があり、来日数の増加が観光収入の増加にあまり貢献していないという指摘も一部にある。

 

 現状だけ見れば、確かに九州など韓国人観光客を目当てに商売をしてきた関係者には厳しいだろうが、これは逆に「韓国」への依存度を低くするいいチャンスでもある。

 

 依存するのは「韓国」という特定の国からの観光客だけの問題ではない。特定の「観光地」に人気が集中している現状も解消させる必要はあるだろう。

 

 京都を筆頭に有名観光地は外国人で溢れ、「観光公害」のレベルまで達している。京都の祇園では「観光客のスマホにマナー順守に関する情報を自動配信する実証実験を始める」という事態にまで発展している。

 

 全国各地に五つ星ホテルを拡充することで、この外国人観光客の「量」と「質」の問題は大きく改善するはずだ。

 

 これまでの日本の観光政策は「とりあえず日本に来てください」という観光地として日本を知ってもらうことが優先され、数年前まではそれが通用したのは事実。

 これが「インバウンド効果」などで、中国からの買い物目当ての観光客が激増し、そのうちの一部がリピーターとして訪日している結果、現在の膨大な観光客が維持されている側面は大きい。もちろん、北米、欧州も順調に伸びてはいるが。

 

 これからは「宿泊でも飲食でもお金を使ってください」を意識したスタイルに変換していくべきなのだろう。

 言い方は悪いかもしれないが、観光客を迎える側(観光地のインフラ)で、来てほしい客を選別する時代に入ったのだと思う。

 

 日本の地方にはまだまだ埋もれた名所・旧跡が多いはず。それらを「短期格安ツアーの低消費観光客」に奪われる前に、五つ星のホテルなど整備して、「プライベートで長期滞在する上客」を囲い込むことが有効策ではないだろうか。

 

 

 

地方のマンションという業界内のスポット現象について一考

人口減の地方でも「マンション好調」のカラクリ(東洋経済オンライン)

一井 純 : 東洋経済 記者

 

 首都圏のマンション価格が高止まりし、販売が伸び悩む中、地方でマンションに動きが出ているらしい。

 12月16日付けの東洋経済オンラインに「人口減の地方でも『マンション好調』のカラクリ」というタイトルの記事が掲載された。

 

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 記事に出てくるのは、倉敷市の住居・商業複合施設、宮城県塩釜市と秋田県横手市の小型マンション、岡山駅に近いタワーマンションの4件だ。

 

 いずれも人口は、48万人、5.4万人、8.8万人、71万人となり、倉敷と岡山は50万人近い人口があるので、新幹線停車駅でもあり、それなりに需要はあるかもしれない。

 記事では、野村不動産が地方でのマンション開発を加速させていると伝えている。

 

 一方、他の宮城と秋田の2つのマンションはやや事情が異なる。どちらも人口は10万人以下で「戸建て」が主力の地域だ。

 それでもデベロッパーが手掛けたのには、地元でマンションへの需要が「溜まっている」という事情らしい。

 塩釜の場合は、市内の起伏が激しく、高台に建つ戸建てに住む高齢者などからより利便性を求める声が、横手市の場合、スキー場で有名は豪雪地帯ということもあり、雪かきが負担になる戸建て居住者のニーズが、それぞれあったようだ。

 

 ただ、この「地方でマンション建設」という動きが、今後急速に拡大する可能性は高くないと思う。

 野村不動産が地方でのマンション開発を進めるのは、首都圏のマンション価格が高騰し、普通のサラリーマンの手が届かない水準まで上がってしまった結果の影響が大きいだろう。

 しかも同社は他の財閥系に比べて住宅部門の比率が高く、首都圏のマンションの落ち込みを地方でカバーしたいという意図もあると想定される。

 

 もっとも記事にある2つのマンションの戸数は63戸と54戸と小規模。実際に開発したのは中堅デベロッパーだ。野村不動産が手掛けるには規模が小さすぎる。

 

 地元の「急こう配」や「豪雪」といった特殊事情によるシニア層の駅近マンションの購入には、一定のニーズがあるだろうが、記事にも「マンションは自営業者や公務員、士業など地方都市に住む高所得層からの引き合いが強い」とあるように、購入する層の厚みには欠けるという現実もある。

 

 実際に、マンションに住み替えようと戸建ての売却を考えても、現在の地方の土地価格の実勢を見る限り、新築マンションを買うための十分な資金とはならないケースも多いはずだ。

 一方で、マンション建築価格に占める比率では土地よりも建物の方が圧倒的に高いが、建築に伴う「建材」「人件費」の価格は、首都圏と大差がないので、結果として、マンション価格自体は首都圏の郊外物件とあまり違わないことになる。

 戸建ての実家を売ってマンションに移れる層は、想定以上に少ないのではないだろうか。

 

 一方の、倉敷の複合施設、岡山のタワマンは、人口も50万人規模以上そこそこあって、ニーズは期待できそうだが、記事ではこれにも「再開発」「補助金」という仕組みがあってこそだと解説している。

 

 駅前に古い民家や雑居ビルが乱立する地区では防災や交通面で再開発が必要なのは理解できるが、岡山のような補助金とタワマンを前提にした開発には、一時的な盛り上がりは見せても、数十年後の人口・世帯の減少を考えると、入居者の減ったタワマンが「寂れた都市の象徴」になっている可能性すらある。

 

 実際に「神戸市がブチ上げた『タワマン禁止令』の波紋」など、日本全体としてタワマンは回避される傾向にあるだけに(当ブログでも記事化)、この岡山の事例は、隣接する兵庫県の神戸市とは対照的な対応だと言えるだろう。

 

 個人的には、地方でもコンパクトシティ化を推進するための住民を市街中心部に集める「身丈に合ったマンション」の建設には賛成だし、補助金も使うべきだとは思う。人口が集中すればゴミ収集、水道供給などのコスト削減が可能になるからだ。

 地震などの自然災害発生時への対応も、迅速かつ効率的に行うことができるだろう。

 

 地方都市のタワーマンションが「一時の可憐な花」だとすれば、地元の事情に配慮した小規模マンションは「地味ながら根付いた草」といっては言い過ぎだろうか。

サラリーマンの不動産投資、いい加減現実に向き会うべき

またぞろ融資書類改ざん「投資用不動産」の受難(東洋経済オンライン)

一井 純 : 東洋経済 記者

 

 ワンルームマンションなど投資用の不動産をサラリーマンがローンで購入する人はいまだに多いようだ。将来の年金支給額などへの不安がその背景の一因なのだろうが。

 

          

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 こうしたなか、投資用不動産に関する融資書類の改ざんが再び露呈したことを伝える記事「またぞろ融資書類改ざん『投資用不動産』の受難」が12月13日付けの東洋経済オンラインに掲載掲載された。

 

 要約すると、東証1部上場のマンション開発業者「コーセーアールイー」の子会社が、顧客にマンションを販売する際、銀行へ提出する源泉徴収票等の収入を証明する書類や、中古物件の入居者から受領する賃料に関する書類を書き換えた疑いがある(同社発表の資料)。らしい。

 

 記事によれば、土地とセットのアパート融資は金融庁の監視が厳しくなったが、マンションの区分所有には監視の目が届かず、金融機関もアパートからマンションへと不動案収支の軸足を移していたらしい。

 

 融資に関係した金融機関は2行だが、どこかは不明。ただ不動産融資に関する書類改ざんでは、最近ではスルガ銀行西武信用金庫などが行政処分を受けており、この2行も書類改ざんにまったく無関係かどうかは不明だ。

 

 今回の記事や報道などを受けてまず思うのは、「どうして安易に不動産投資に大金をつぎ込むのか」という疑問だ。

 

 想像するに、先に述べたような老後の生活資金を補填などを想定している人のほか、純粋に賃貸料収入で副収入を得ようとする人も多いだろう。

 

 書店に行けば、「サラリーマンが大家さんになる」という趣旨の本も多く出版され、マンション投資の無料セミナーも頻繁に開催されている。富裕層ではない我が家にも投資勧誘の電話がかかってくるぐたいだから業界自体は活況なのかもしれない。

 ただ、不動産投資をすればバラ色の将来が待っているかのような期待を抱かせている感は否めない。

 

 問題の本質をずばり一言で言えば、「普通のサラリーマンがフルローンで新築ワンルームマンションを買って収益を上げ続けることは現状ではほぼ不可能」という現実に気付くべきだ、ということだ。

 

 別の言い方をすれば、マンション一室を投資向けに購入するというのは「時限爆弾を抱えるようなものだということ。

 具体的な危険要因を挙げれば、

1.新築時は入居者があっても築年数が経てば魅力は減るので空き家の可能性が高まる

2.空き家になると賃料を下げざるを得ないので収入は減る

3.賃料を下げると入居者の質が落ちるので賃料未収などトラブルの可能性が高まる

4.当然部屋の扱いも粗雑になるので設備などリフォームの費用がかさむ、

5.長期のローンを変動金利で組む場合、金利はさらに下がる可能性はほぼゼロだが上がる可能性は十分ある。しかも金利は投資用なので自宅居住用より高い

6.建築後30年近く経ったマンションにどれほどの資産価値があるのか不明

 

 などザッと考えただけでこれだけの不安要素がある。

 

 6.の資産価値については「都心3区などの優良物件を購入すれば問題ない」という意見もあるが、現在の不動産市況では普通のサラリーマンが買える価格水準ではないはずだ。

 ちなみに不動産経済研究所の10月度「首都圏マンション市場動向」によれば、東京都区部の平均分譲価格は7002万円。これには足立区や墨田区なども含まれるから、人気の都心3区の平均価格は8000万円以上だろう。

 

 誤解を招くようだと困るので確認しておくが、私は「不動産投資」を否定しているのではない。個別物件に多額の資金を集中する投資手法を問題視しているのだ。

 実際に、私は不動産投資信託(REIT)を通じて、間接的に不動産投資を数百万円規模で実践している。

 

 REITであれば、数万円から投資可能で、物件も自動的に分散投資となり、物件管理の手間もかからない。総じて流動性もあるので換金したいときにいつでも現金化できる。

 しかも実際に物件を選別・投資するのは一応不動産のプロなので、素人よりは物件を見る目はあるはずだ(と信じたい)。

 最も関心のある利回りも、3%以上の銘柄は多数ある。ただしREIT相場は今年に入って20%近く上昇しているので、ここからの新規投資には慎重というのが現在の私のスタンスだ。

 

 ということで、普通のサラリーマンが不動産投資をするなら、REITから始めることを勧める。

 東証は不動産証券化協会と組んで、毎年Jリートフェアを実施(今年は11月29,30の2日間だった)しているし、日本経済新聞は毎月Jリートセミナーを開催している。ちなみにどちらも参加費用はかからない。

  まずは、投資信託協会のWebサイトの「そもそもREITとは?」からはじめてはどうだろうか。

 

ネット通販、日本独自の商慣習を超えてD2Cは普及するか

日本の「ネット通販利用」がまだ遅れている理由(東洋経済オンライン)

劉 瀟瀟 : 三菱総合研究所研究員、カリフォルニア大学サンディエゴ校客員研究員

 

 近年すっかり一般的となったと個人的に感じていたネット通販だが、米国、中国に比べるとその利用度はまだまだ低いらしい――この実情を解説する記事「日本の『ネット通販利用』がまだ遅れている理由」が12月12日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

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 記事では、米国では人口の72%が、中国ではインターネット人口の73%がネット通販(EC)を利用している一方、日本のEC利用率は35.9%に留まっているとし、その理由として、

  1. 小売業が消費者のEC習慣を育成してきた
  2. 返品がしやすく、消費者のECストレスを軽減している

 の2点を挙げている。

 

 また、最近のトレンドとしてD2C(Direct to Consumer)つまり 自社運営ECサイトやSNSで直接消費者する販売手法が注目されていることも紹介している。

 

 1については、具体的に11月に米国では小売り業界で「ブラックフライデー」が、中国ではアリババが作り上げた11月11日「独身の日セール(W11)」の存在がネット通販への顧客の取り込みに成功したことを引き合いに出している。

 

 日本でも、お中元、お歳暮、クリスマスなど販売促進のセール期間は昔からあるが、あくまで実店舗での売り上げ増を狙ったものが主流(百貨店の催事場でのお歳暮対応など)で、ネットを意識した戦略はあまり聞いたことがない。

 

 近年はAmazonが日本でも「ブラックフライデー」を実施するなど、機運は出ているようだが、追随する動きは鈍いようだ。

 私自身、Amazonのヘビーユーザーなのだが、通常行われている「タイムセール」と比べて特に魅力的な商品や価格を「ブラックフライデー」で見かけることはなかった感がある。販促効果が大きかったようには思えない。

 

 以上を考えると、何らかの”個別”セールをきっかけに、日本でネット通販の急拡大に繋がる可能性は低いだろう。利便性向上という観点からじわじわと浸透していくと思う。

 

 また日本には、生協(COOP)という独自の組合組織があり、昔から宅配事情を行ってきたという事情も影響しているかもしれない。日本生活協同組合のWebサイトによれば、2018年度の小売シェアは2.69%とここ数年足踏み状態だが、組合員数は2924万人と着実に増えている。

 

 2については、日本の返品対応が特に遅れているとは思わない。またしてもAmazonを引き合いに出して恐縮だが、Amazon.co.jpが発送する商品を顧客側の都合で返品する場合は未使用・未開封の場合100%、開封炭の場合は50%が返金される(原則、返送料は顧客負担)、商品のトラブル・不具合の場合は、返送料も含めて100%返金される。

 

 私自身、何度か商品の不具合で返品したことがあるが、返品専用のページに必要事項を入力して、バーコードの表示されたページを印刷して、商品と一緒に梱包するだけなので、大した手間ではない。

 ということで、返品にかかるストレスがさらに一般的なサイトでも解消されていけば、ネット通販の拡大要因にはなるうるだろう。

 

 もうひとつの注目点である「自社運営ECサイト」だが、個人的にはもっとも充実しているのはヨドバシカメラだと思う。

 ちなみに、通販新聞社の2017年度「ネット販売白書」によれば、売上高のトップは断トツでAmazonだが、ヨドバシカメラも2位に付けている。

 家電量販店では最も古くから通販を手掛けてきたが、最近では飲食品、医薬品、電子書籍など幅広く手掛けている。しかも電子書籍に至っては20%のポイント還元と他社を大きく凌いでいる。

 また、他の自社運営サイトECと異なり、自社で配送業務まで手掛けているという「強み」もある。

 余談だが、ヨドバシカメラは資本金3000万円という「中小企業」という立場を生かして、通常のポイント制度に加えて、年末までキャッシュレス還元5%を実施して、競合他社との差別化も強化している。

 

 ヨドバシは品揃えも豊富なので、月に何度かは商品のトレンド確認のために店舗に行くのだが、サービス内容も充実している。

 店内で無料WiFiが使えて他店との価格比較が自分のスマホで自由にできるうえ、実際に商品を購入しようと店員に相談すると、その場で自社のネットや他店舗との価格を調べてくれて、最安値での購入を勧めてくれるなど、その顧客優先の対応は同業他社とは比較にならない

 

 記事で最後に、丸井のショールーミング戦略やアマゾンジャパンの置き配など、日本でも「進化」していることを紹介している。

 

 高齢や単身の世帯の増加で、ネット通販には「追い風」が吹いているのは確かだろう。ただ、他国の仕組みをそのまま日本に当てはめても成功するとは限らない。

 商品の特性を考慮し、顧客の利便性、返品や宅配への安心度を高めていけば、ネットで買うのが当たり前になる時代は意外にそう遠くないのかもしれない。