如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

元財務官僚、財務省をぶった切る。「国の借金1000兆円はウソ、財政再建はすでに達成されている」

 

これが日本経済の邪魔をする「七悪人」だ!

2018年3月7日

 過激なタイトルの付いた本ですが、内容も同様に相当過激。

 筆者は、安倍総理を支持(アベノミクスを及第点の70点と評価)しており、本書は反安倍総理の「マスコ
ミ」「護憲政党」などへの攻撃から始まりますが、本命は「財務省」である。

 「森友問題」での近畿財務局の失敗、「プライマリーバランス報道」での恣意的な関与、実質税金である
教育投資を「こども保険」という名称でかわす手法、など様々な「財務省」の暗躍が明らかになるが、筆者
が最も強調したいのは、財務省やその支持者が声高に主張する「国の借金1000兆円」は、実際には「政府資
産でチャラになっている」ということだろう。

 その趣旨は、政府と日銀は広い意味で「統合政府」として資産を統合して検証すべきであり、国の負債
1193兆円から資産672兆円を差し引いた純負債である「ネット国債」は521兆円。これに政府内の子会社の
分を加味するとネット国債は465兆円になる。一方、日銀の保有する国債は435兆円だから、差し引き借金
は30兆円に過ぎない、という計算だ。

 筆者はこれに対して、「政府資産は換金できない」「関連法人への出資金は売れない」などと反論がある
ことは重々承知していて、「公務員宿舎など売れるものもかなりある」、「関連法人への出資は官僚の天下
り先の確保が実態」と応じている。

 私は財政問題に詳しいわけでもないし、統合政府(日銀の負債は勘定に入れなくていいのか?)という概
念がいまひとつしっくりこない面はあるが、それでも旧大蔵省理財局で資金企画室長、内閣参事官という経
歴を持つ人が、思い付きのいい加減な主張をするとは思えない。また、政府の審議会が完全に形骸化してい
て、官僚の審議会委員への「振り付け」や議事進行を書いた「台本」が存在するという事実を突きつけられ
ると、財務省の官僚が、学者やマスコミを使って世論を誘導し、政策を自分たちの思うように動かしている
という側面は否定できないと感じた。

 ただ唯一残念に思ったのは、最後の第5章の日銀について。財務省を散々サンドバッグ状態にしておきな
がら、日銀への言及はわずか14ページしかない。一応、福井、白川の両総裁が俎上に載せられてはいるが、
どうにもこれまでの切れ味が感じられない。まあ財務省出身なので日銀の内部事情にはそれほど詳しくない
という事情や遠慮はあるのだろうが。

 あと、この本には「あとがき」「おわりに」のような文章がない。全体を総括するような「この七悪人を
退治するにはこれしかない!」といった筆者の得意の「ツッコミ力」で、最後は締めくくって欲しかった。