逃げる力
2018年3月18日
最近マスコミ等で名前を拝見することが多いので、どんなものかと著作を初めて手に取った。
テーマは「逃げることは立派な戦略、恥じることなく良い逃げ方をすべき」だろうか。
戦争や歴史などの局面で、偉人たちがいかにうまく逃げて成功したかを解説、中ほどから、会社、仕事、
人間関係などを例に挙げて、具体的な「逃げ方」を示している。
社員・アルバイトがブラック企業を辞められないことが社会問題化して久しいが、著者はこの原因を「長
社員・アルバイトがブラック企業を辞められないことが社会問題化して久しいが、著者はこの原因を「長
時間労働」「精神的な圧迫」により「心神の喪失状態」に陥り、「辞める(逃げる)」ことに思考が及ばない状
態になっている、として自らを守るために「逃げる力」の重要性を説いている。
それはその通りなのだが、問題はすでに疲弊しきって最小限の「逃げる力」を絞り出す気力・体力さえ残
っていない人々に、どうやって意識改革を勧め、現状打破への道筋を照らすかだろう。まともな会社に勤め
ている人や恵まれた生活を送っている人が、いくら呼びかけても本人に聞き入れる余裕はないと思えるし、
大変失礼な話だがこの本を読んで「そうか!逃げればいいんだ」となる人はそう多くはないはずだ(逃げら
れる人はすでに逃げているはず)。これはもう、同じような職場環境から抜け出した人たちの取り組みや体
験・経験を直接「目にする、耳にする」という方策しか現実的には思い付かない。
また、「責任感が強く、弱音や愚痴を吐かないことは危険だ」と指摘、「一見情けない人間に見えるが、実は
また、「責任感が強く、弱音や愚痴を吐かないことは危険だ」と指摘、「一見情けない人間に見えるが、実は
ストレスをうまく受け流していのだ」と解説している。面白いのはここで筆者は、「自己正当化ではないが、
(自分は)問題発言を繰り返すので図太い人間と見られているが、実はものすごく精神的に弱い人間」と本
心を明かしている。どこまで本気なのかは判りかねるが、本書全体の内容から判断してどうやら嘘ではなさ
そうだ。
あと共感したのは、逃げ方にも「良い逃げ方」と「悪い逃げ方」があるという指摘。悪い逃げ方の例とし
あと共感したのは、逃げ方にも「良い逃げ方」と「悪い逃げ方」があるという指摘。悪い逃げ方の例とし
て、「好きなことを仕事にしたい」「仕事で自己実現したい」などの理由で、これが叶わないとすぐに辞め
て(逃げて)しまうことを挙げている。これは指摘の通りで、年功序列が崩れ成果評価に制度が移行しつつ
あるとはいえ、まともな会社が新入社員に給料並みの成果を求めていないのは事実。明白なブラック企業で
ない限りは、新入りの一年目、後輩が入る二年目、新人を指導する三年目ぐらいまでは同じ会社にいないと、
仕事を進めるうえで必須とも言える「職場の内外及び上下左右との調整」などのスキルは身につかないと思
うし、このスキルなしにやりがいのある仕事など回ってくるはずはないからだ。
最後の章で著者は、「幸せの絶対基準」が確立していないと、他人との比較による「相対基準」が生き方
最後の章で著者は、「幸せの絶対基準」が確立していないと、他人との比較による「相対基準」が生き方
の判断材料になってしまうと結論づけている。著者の絶対基準は「自分自身の健康と家族」だそうだが、自
分にそう言い切れるものがあるかと自問すると、他にこれといったものをすぐには見つけられない自分がち
ょっと情けなかった。これは自分からの「逃げ」なのかもしれないが。