如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「東大女子」の現実、学歴下との格差婚「専業主夫」は問題解消の決め手になるか

 

ルポ東大女子

2018年3月31日

 東京大学に在学及び卒業した女性たちの現実と、それに向き合う彼女たち考え方を取り上げた本である。

 東大に占める女性の比率は20%未満で他大学に比べて低いうえ、近年頭打ちの状況が続いている。大学側
も女性比率を上げるべく努力はしているが、大学の通達にも関わらず、東大女子の加入を禁じる多くのテニ
スサークルが存在し続けるなど男子学生による東大女子への偏見は根強いようだ(女子メンバーは一流もし
くはお嬢様女子大限定で確保するらしい)。

 一方で、東大女子の結婚相手の70%は東大卒とのこと。現実には学歴が「同等」の相手しか結婚対象にな
っていない。

 こうなると、東大卒同士が結婚すると、子供ができた場合、双方ともバリバリのキャリアなのでどちらか
が「引く」ことになるのだが、現実には他の大卒と同じく東大女子が家事・育児の多くを引き受けるという
のが多いようだ。

 実力、経歴ともに申し分ない女性が仕事から引き離されるというのは社会的にも損失が大きいと思うのだ
が、筆者はこの問題の解決策として、「専業主夫」「専業主婦」「お互いに譲歩」という3つの選択肢があ
るとしている。

 このなかでも筆者が大きな効果が期待できるとしているのが「専業主夫」だ。東大女子が高学歴を武器に
高収入を得て、そうではないが家庭的な男性との相補的な結婚をすれば、低迷する未婚率も上がるという。

 まあ現実には本書にあるように、男性の「妻よりも自分の自己実現や出世が優先」という意識の改革、女
性の「学歴が下の男性を見下さない」ことが条件にはなるのだが、このハードルはかなり高そうだ。

 ただ個人的には、学歴の最高峰に位置する東大女子の意識が変わり、結婚にあたって、見かけの「学歴」
よりも、現実の家事・育児に対する「夫婦のコンセンサス」を重視するようになれば、東大以下の学歴を持
つ女性の考え方も自然に変わっていくと思うし、そうなれば社会の結婚観も大きく変わるはずだ。東大女子
にはその実行力と影響力が十分にあるだろう。

 これまで東大女子はその学歴を「逆差別のために隠す」という人が少なくなかったようだが、これからは
「東大女子ですが何か?」という正々堂々とアピールするのが当たり前の時代になるかもしれない。

 東大に進学する女性が増えて、既存の常識や先入観に囚われない学生、卒業生が、多彩な人生を歩み、社
会を変えていくことに期待したい。