銀行員はどう生きるか
2018年4月19日
メガバンクを中心とする日本の銀行の現状と将来の見通し、解決すべき課題を取り上げた本である。タイト
ルは「銀行員はどう生きるか」だが、内容は「銀行業務がどう変わるか」と言っていいだろう。
銀行の将来について悲観的な論調はよく見かけるが、邦銀の遥かに先を走る米国の大手銀行、証券会社の
現状を引き合いに出して、具体的な課題を提起するという視点に立った内容は少ないと思う。
昨年末にかけてメガバンク3行が相次いで、業務量、人員の大幅な削減計画を打ち出した。ゼロ金利政策な
昨年末にかけてメガバンク3行が相次いで、業務量、人員の大幅な削減計画を打ち出した。ゼロ金利政策な
どの影響で本業の利益が大きく減少しているなか、コスト削減を目的としているのは明白だが、筆者は同時に
顧客の利便性や満足度の向上を目指さないと銀行の未来は開けない、としている。
一方、先行するバンカメなど米銀大手は、邦銀とは逆に数百店規模で店舗を増やす計画を実行中という。
ただし増やすのは1店舗当たりの人員が数名という小規模店舗だ。機能が高度化したATMとバックオフィス
業務のIT化が可能にしたとのこと。
これを極限まで進化させたのが本書で紹介される米エドワード・ジョーンズ証券だ。本書によると1万4259
店舗(同社のWebサイトでは12,700支店以上とある。ちなみに野村証券はWebサイトでは本店を除き155店舗)
を構えているが、基本は「1店舗1人」だという。しかも採用基準は「その地域で信頼されている人」だそうだ。
ちなみに米銀の経営者は、店舗を「支店(ブランチ)」と呼ばず「店(ストア)」と呼ぶことがあるらしい。顧
ちなみに米銀の経営者は、店舗を「支店(ブランチ)」と呼ばず「店(ストア)」と呼ぶことがあるらしい。顧
客本位の営業姿勢に立つとこういう言葉遣いになるのだろうが、私が個人的に利用しているメガバンクの「
支店」とその隣にあるコンビニの「店」を参考までに比較してみた。
営業時間
銀行:平日の9:00から15:00のみ
コンビニ:24時間365日
店舗フロア
銀行:広いうえに2階もあることが多い。従業員向けの業務スペースの比率が高い
コンビニ:限られたスペースを最大限に有効活用。バックオフィスは目立たない
人員の構成
銀行:客よりも従業員の方が多かったりする、非効率
コンビニ:基本的に客の方が多い、店員は数名で効率的
手続き
銀行:まず伝票に記入・捺印、順番札を取って待機、手続き後再度待たされる。投資信託の購入は別
窓口、融資は2階に回される
コンビニ:食品の購入、弁当の温め、宅配便の発送、各種支払いなどが一度に一か所で済む
コンビニ:食品の購入、弁当の温め、宅配便の発送、各種支払いなどが一度に一か所で済む
トイレ
銀行:あるのを見たことがない(米銀にはあるらしい)
コンビニ:原則自由に利用可能
思いつくままに書いてみたが、自分優先の銀行と顧客優先のコンビニでは、そもそも「考え方のモノサシ」
が違うので、比較の対象にすらならない。こうした思考回路に染まり切った銀行の体質はそう簡単には変わら
ないだろう。
ただ、変化の兆しも見られる。そのいい例が本書の冒頭で紹介される「三井住友銀行の中野坂上支店」だ。
ただ、変化の兆しも見られる。そのいい例が本書の冒頭で紹介される「三井住友銀行の中野坂上支店」だ。
ここは個人向け店舗にも関わらずビルの11階にあり、フロアで支店長が出迎えるという。ペーパーレスが徹底
しているので、決められた伝票への記入も捺印の必要もない。ちなみに支店長室もないそうだ。
まだ実験店舗の段階のようだが、軌道に乗り始めれば「豪腕の住友」だけに一気に全国の支店のあり方が変貌
する可能性はある。「右へ倣え」の気質が強い銀行業界だけに他のメガバンクなどが追随することも十分に考
えられる。
いずれにせよ、フィンテックなどIT技術の急速な進展により「銀行」も「銀行員」も向こう数年で考えられ
いずれにせよ、フィンテックなどIT技術の急速な進展により「銀行」も「銀行員」も向こう数年で考えられ
ないような「変革」を迫られる可能性が大きい。対応できない場合は「消滅」も杞憂ではないはずだ。