如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

最後に残るのは人間性、危惧すべきは情報の独占

 

ある日突然AIがあなたの会社に

2018年4月25日

 日常生活や仕事におけるAIの現状と将来像を具体的な事例で解説する本である。
 
 まず筆者は、現在のAIを「検索エンジンのすごい奴」と定義、過小評価にも思えるが、現実には「過去の
知識やデータを分析して、回答を出すのが主な仕事」だそうだ。これで終わっては身も蓋もないので、その
後に「人間の頭脳に近づきあるのも事実」と解説している。

第1、2章では、AIによって進化するビジネス(顧客対応、営業支援など)を具体例として解説、最後の第6章
ではAI・ロボット・IoTのもたらす未来の姿を取り上げている。
 
 結論から言うと、AIに置き換わる仕事は多いが、人間らしさの必要な仕事は最後まで残るという、言い方は
悪いが「巷でよく聞く結論」ではあった。本書で、なるほどと共感したのは、AI化の進展で危惧すべきことは
「情報の独占」という主張だ。「時の政権が情報を隠蔽や改ざん(最近聞いたような話だが)可能となると、
AIは権力者を讃え、支持するような解しか出さないかもしれない」と警鐘を鳴らしている。

 AIの現在および将来の具体例は本書を読んでいただくとして、私が個人的に最近体験した「旧態依然とした
融資」と「AIを活用した融資」の例を紹介したい。

 旧態依然としているのは、とある銀行から借りたリフォームローンである。まず銀行に電話をして担当者に
要件を伝え、打ち合わせの日取りを決める。次に、リフォーム工事の見積もりに始まり、源泉徴収票、土地家
屋の権利書、登記簿、物件の販売時の広告、土地と建物の見取り図などを用意、当日は書類の確認などに約一
時間、融資可否の連絡はさらに一週間後で、ここまでで約一か月を要した。

 逆に、AIを活用した最新の融資が、みずほ銀行の手掛けるJ.Score(ジェイスコア)だ。仮審査の申し込み
段階だが、Webで聞かれるのはわずか16項目で所要時間は約3分、審査結果はその場で判明、ちなみに利用先
の制限のないフリーローンだが、先のリフォームローンより金利は低く、融資額も大きかった。

 現在は、上記新旧2つの融資方法が並存している状態だが、遠からぬ将来AI活用の融資が優勢になるのは間
違いなさそうだ。ただ旧態依然とした融資がそのまま残ることはないにしても、権利関係の複雑な担保や家族
構成、将来の取引関係の微妙な変化などを考慮した「銀行員の個人スキルがモノを言う対面融資」は残る可能
性がある。

 いずれにせよ、AIが対応しにくい個性や相性などに絡んだ属人的な仕事は、より細分化が進み、高度な対応
力が求められるはずだが、逆に言えば「それこそがAIに置き換わらない安定性の高い仕事」なのだろう。