如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「官製価格」は消費者にも企業にも不利益となる、楽天イーグルスを見習え!

 

「価格」を疑え - なぜビールは値上がり続けるのか

2018年5月12日

 酒類小売店を保護を目的としていたビール価格や、「ゼロ円端末」を規制する携帯電話会社への介入・規制
などの具体例を取り上げ、結果として、「価格の官製化」はモノを買う側の消費者にも、売る側の消費者にと
っても「マイナスの効果」しかないことを論じた内容である。

 筆者は、政府は「価格への直接関与」を行うのではなく、その2手、3手先を読んだ「ゲーム理論」を発
展・応用した「マーケットデザイン」を政策として実現すべきとしている。

 現実には「電波オークション」が米国で先駆けて実行され、談合などの弊害はあったものの、電波の利権を
国家から国民へ取り戻したという大きな効果をもたらし、OECD加盟国では唯一日本だけが実施していないと
いう状況になっている。

 もっとも電波オークションは確かに有効だろうが、実現には関係者の利害関係もあって紆余曲折が予想され
る。 

 これは私見だが、現在抽選方式となっている自動車のナンバープレートに自分の希望する番号を付けること
ができる「希望ナンバー制度」こそ、比較的容易にオークション化が実現できるのではないかと思っている。
車のナンバーはあくまで「嗜好品」であり、欲しいナンバーにいくらおカネをかけようが、その人の自由だか
らだ。増収分は事故防止などの安全対策に使えば、誰からも文句は出ないだろう。

 価格が官製化されることで硬直化するデメリットは、逆に本書の第8章で紹介される東北楽天イーグルスの
球団運営の成功例が分かりやすい。同球団は17年から本拠地での入場券の「変動価格制」を導入している。具
体的には販売開始後、売れ切りそうな席は値上げし、売れ残りそうな席は逆に値下げをするという手法だ。こ
の結果、来場者数は16年の162万人から17年には177万人に増加したそうだ。

 もともと本書に興味を持ったのは、「価格を疑え」というタイトルが、ビールなどが「業者間」の談合など
によって消費者が不利益を被っているのではないか、という視点だったが、実際には「官製化」という価格の
硬直化がテーマだった。

 本来予想していた内容とは異なっていたが、「国家、政府が民間市場の価格形成に直接口を出すとロクなこ
とがない」ということが具体例で分かったことは大きな収穫だった。