如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

何を伝えたいのかよく分からない、人生とはそういうものなのか?

 

人生の値打ち

2018年7月11日

 有名な作家なので一度著作を読んでみたいと思っていたところに新刊が出たのでさっそく購入してみたが、
なんとも言い様のない消化不良というのが正直な感想だった。

 男女間に「区別」はあっても「差別」はない、この世になくていいものは一つもない、など様々な主張は理
解できるのだが、全4章21話を通じて読んでみてタイトルの「人生の値打ち」に直接関係するような内容が見
当たらなかった。

 アフリカやアラブの発展途上国での体験などは、テーマとしては面白いのだが中身が表層的で奥行きに欠け
る内容だし、「女性が好む噂話は90%以上の確率で間違いとして伝わる」というのはごく当たり前の話であり、
「相手をその属性で判断すると本質はつかめない」のも至極当然である。これらに目新しい発見はない。

 1931年生まれで同世代の女性(男性も含めるべきか)に比べて人生経験豊富な先人からの教えとしては、
やや「粗削り」というか「思うがままに書き連ねた感」が強い内容だと感じた。

 ただこれはあくまで本書しか読んだことのない個人としての見解であり、過去の著作を読んだ人ならば、
著者の意図を汲み取って十分に面白い本なのかもしれない。いやおそらくそうなのだろう。

【追記】
 本書で「さすが曽野先生」と唸らせるシーンがある。南米ボリビアの空港で曽野先生をずっと待っていたカ
トリックのシスターから「自分が働いている公立の小学校で教員の給与が半年も未払いになっている。日本か
ら援助してほしい」との要請を受けるのだが、曽野先生は彼女に「給料の肩代わりはできない。そんなことを
すれば政府はますます外国の援助組織にオンブすればいいと思うからだ」とその場で即断、拒否している。

 シスターの背後にいるであろう教師たちの苦しみを理解したうえで、冷静にかつ長期的に的確な判断すると
いうのは口で言うのは容易だが、現場に私が居合わせたとしたらおそらく情にも流されてしまい、同じ対応が
即座にできるとはとても言えない。

 海外の発展途上国の現状を認識しその将来を考え、このように肝の据わった対応ができるのは、やはり「ロ
ーマ法王から勲章を授与されるだけの人物なのだな」と改めて思った。