老後に破産しないお金の話
2018年7月17日
最初に言っておきたいのは、本書はタイトルにある「老後に破産しない」手法をズバリ提供するものではな
く、あくまで「破産したくない人に向けた参考情報」であるということ。
この手の本は数も多いので「目を引く」タイトルを付けないと手に取ってもらえないという現実もあるので、
著者を責めるわけではないが、読者は予め過度な期待はしないほうがいいだろう。
そのうえでまず参考になったのは、夫婦で老後死ぬまでに必要な最低限の資金は約2500万円と明示している
そのうえでまず参考になったのは、夫婦で老後死ぬまでに必要な最低限の資金は約2500万円と明示している
こと。平成28年の総務省の家計調査報告に基づき、世帯の月々の赤字額を5万5000円とし、65歳から90歳ま
での25年間の総額が約1650万円、これにもしものおカネ600万円等を加えて約2500万円としている。
問題は、これが必要最低限の金額であるという点と、今後の年金制度改革で年金額が減少することだ。
著者は、積極的な資産運用で年利3%を目指すとしているが、本書の中心読者層と思われる50代が、資産全
部をリスク商品に投資するのは非現実的であり、運用資産の半分は変動利付国債10年(利率0.05%)と国内外
の「株式」を中心に投資する投資信託に残り半分といったところが現実的ではないか。ちなみに今後世界的に
金利が上昇するのはほぼ確実なので上記以外の「債券」は投資対象にはなりにくい。
この資産配分でも年率3%を中期的に確保するには投資信託が同6%近い運用益を年平均で上げる必要があり、
運用に係る手数料が安いインデックスファンドでも厳しいと思われる。
となると本書にもあるように、60歳以上になっても働くというのが現実的だろう。65歳までは現在の勤め先
となると本書にもあるように、60歳以上になっても働くというのが現実的だろう。65歳までは現在の勤め先
の再雇用で何とかなるとして、問題はその後。将来の年金収入の減少を視野に入れれば70歳までは稼ぎを得た
い。
本書では人手不足を背景に介護関連の仕事を紹介しているが、これも60代後半ともなれば「介護される側」
になっていてもいい年齢で、肉体的にも精神的にも仕事とするのは厳しいと思う。
他者にないスキルや資格を持っていれば話は別だが、現実には本書にあるようにシルバー人材センターに登
録して月に8-10日程度働き、月額3-5万円を確保できれば御の字だろう。それでも年金以外無収入よりはまし
だ。社会的に孤立しないということも人によってはメリットかもしれない。
その他で他の老後対策本にはあまり見当たらず本書で参考になったのは、第7章のパートナーというテーマ。
その他で他の老後対策本にはあまり見当たらず本書で参考になったのは、第7章のパートナーというテーマ。
「死別・離婚・再婚、どれも先手必勝」という内容はページ数は少ないが参考にはなった。
総じて、取り立てて新たに大きな発見がある老後対策本ではないが、定年が目前に迫った世代にとっては現
総じて、取り立てて新たに大きな発見がある老後対策本ではないが、定年が目前に迫った世代にとっては現
状に迫った問題を再認識するためのいい「きっかけ」になる本ではある。何しろ最新(2018年)のデータに基
づく老後対策本が週刊誌並みの税別で530円というのは破格だ。目先の老後が気になる人は読んでみて損はない
だろう。