如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

競輪創成期の頃の話が興味深い。現在に至る競輪の歴史を知るにはベストの書

 

競輪文化

2018年7月30日

 競輪歴はすでに20年以上になりますが、戦後の創成期の頃の競輪の事情についてはほとんど知識がなかった
ため、大変面白く読ませてもらいました。

 参考までに内容を簡単に紹介すると、スター選手を含め選手への直接的なインタビューはなく、あくまで第
三者からみた「競輪の歴史」を社会的な側面(不正疑惑からの暴動の発生、競輪場の普及とは廃止など)から
時系列で記載したものです。

 なので、本書にある競輪が一般に普及した以降の内容はほぼ知っていたので、勉強になったのは、「創成期
の頃のアクシデント」や「海外の事例」でした。以下に参考になった事例を紹介します。

1.自転車競技法
  1946年に成立した競輪事業の根拠となる自転車競技法は、時の片山総理を首班とする社会党政権が賛成し
  たことで早期に可決・成立、同年11月には初の競輪が小倉で開催された。ご存知のようにその後社会党は
  ギャンブル反対に転じている。

2.オリンピック種目
  アテネで第一回の近代オリンピックが開催されたのは1896年。全部で9しかなかった競技種目のなかに自
  転車が含まれており、その後一度も外れたことがない。

3.選手の募集
  競輪が始まった当初は、選手をどうやって集めるかが大きな課題だった。そのため選手になるには、「履
  歴書」「居住証明書」「健康診断書」「写真」「登録料」を提出すれば誰でも合格となった。

4.競輪は当初「きょうりん」と呼ばれていた
  当時の競輪場では、ケース結果に不満を持った観客が暴れ出すことが続発したため、新聞見出しで「狂輪」
  と当て字されるようになったため、運営者がイメージ悪化を避けるため「けいりん」と読ませるように仕
  向けた。

5.鳴尾競輪の騒乱では警官の発砲で観客が死亡
  1950年9月、兵庫県の鳴尾競輪場のレースで本命選手が、車体故障で自転車から降りて修理し、その後再
  乗してゴールするという事態が発生。当たり車券が1万円超えとなり「八百長だ」とする観客が暴徒化、
  これを抑えようとした警備の警察官が威嚇発砲した弾が観客に当たり死亡するという事件が起きた。社会
  的に大問題となったことで競輪廃止の機運が高まり、時の首相・吉田茂は一時競輪廃止の意向を固めた。

6.競輪発祥の地はデンマーク?
  競輪は戦後の日本で生まれた自転車競技とよく言われるが、デンマークでは1888年に競輪場を創設、翌年
  には単勝、連勝式の車券を発売している。競技種目は様々だが、一周370メートルのバンクを4周回、先頭
  固定制度はないので、勝負は最終周回のダッシュ力で決まる、という日本の競輪とほぼ同じ形態の種目も
  あった。もっとも1970年代には競馬人気に押されて廃止されたとのこと。

 これら以外にも参考になる記述は多くあります。競輪をギャンブルとして楽しむだけでなく、現在の競技ス
タイルがどのような経緯で成立しているのかなど、「賭け」以外の要素に関心があれば読まれることをお勧め
します。

【追記】
 外国人選手のレース参加について。現在外国人選手は短期登録制度を使ってS2班選手として参加していま
 すが、レースを見る限り日本人選手との脚力の差が大きすぎて、ほぼぶっちぎりで一着となることが非常に
 多いです。マークする選手がいるにはいるのですが脚が足らず付いていけません。

 なのでレース的にも面白味がないうえ、車券から見ても「外国人一着からの流し」で決まってしまうので高
 配当が望みにくくなっています。競輪の国際化や日本人選手の実力向上という主催者の意図は理解できます
 が、何か別の方法を考えた方が良いと思っています。