定年後のお金 寿命までに資産切れにならない方法
2018年8月1日
主に定年を控えた50代に資産運用のアドバイスを指南する本である。
本書で伝えたいと思われる内容は、
「60歳から75歳までの15年間は資産を3%で運用し、4%を取り崩せば95歳まで資産が残る」
突き詰めればこれだけである。45分もあれば読めてしまう。
これ以外にも、「退職後に必要な資金」「退職後の生活費をいかに減らすか」などが書かれているが、他の老
本書で伝えたいと思われる内容は、
「60歳から75歳までの15年間は資産を3%で運用し、4%を取り崩せば95歳まで資産が残る」
突き詰めればこれだけである。45分もあれば読めてしまう。
これ以外にも、「退職後に必要な資金」「退職後の生活費をいかに減らすか」などが書かれているが、他の老
後資金対策本に比べて特に新たな発見はない。
第5章で、資産の「定率」引き出しの方が「定額」引き出しよりも資産の減少の進行が小さい、ことに言及
第5章で、資産の「定率」引き出しの方が「定額」引き出しよりも資産の減少の進行が小さい、ことに言及
する。これには特に異論はないし、巷に溢れる「老後の生活に必要な金額は月額いくら」という話よりも資産
管理という側面では説得力はある。
ここで著者は金融機関に「10~20年で年率3%ぐらいの期待収益率が見込める投資信託はないか?」と聞く
ことを推奨している。
本書にもあるが、これは金融機関の店頭で「何か儲かる金融商品はないか」と聞くよりは遥かにマシだが、
本書にもあるが、これは金融機関の店頭で「何か儲かる金融商品はないか」と聞くよりは遥かにマシだが、
これには問題点もあるだろう。まず、過去のパフォーマンスが将来の期待収益率を保障するものではないこと。
次に、この聞き方だと、販売手数料、信託報酬などのコストが高い投信を優先的に推奨される可能性だ。
第6章では、具体的な3%運用の話となる。結論から言えば「内外の株式、債券に分散投資をすれば年率3%
第6章では、具体的な3%運用の話となる。結論から言えば「内外の株式、債券に分散投資をすれば年率3%
運用は可能」とし、167ページに過去20年間の4資産の実績のグラフを掲載している。
確かにこのグラフでは4資産に分散投資すると20年間の運用益は年率4.1%となっている。ただし注目すべき
この年率はこれら4資産のうち日本国債を除く他の3資産が最近5年間で急上昇した影響を強く受けており、
その前の15年間は大したパフォーマンスになっていない。
世界的な傾向として、現在の株式相場にやや頭打ち感が強まっていることや、金利が中期的に上昇傾向にあ
世界的な傾向として、現在の株式相場にやや頭打ち感が強まっていることや、金利が中期的に上昇傾向にあ
ることを踏まえれば、株式も債券も短期的には下げる可能性が大きいだろう。
時間及び資産の分散による投資を否定する訳ではないが、投資を開始するタイミングは相場環境を慎重に検
討してからの方が良いと思う。
具体的には定年前後の人は運用資産を、とりあえず金利上昇に対応できる「変動利付国債10年」に退避して
具体的には定年前後の人は運用資産を、とりあえず金利上昇に対応できる「変動利付国債10年」に退避して
おき、タイミングを見て少しづつ他の資産に移していくのが無難だと思う。
個人的に有望な資産運用だと思っているのは「配当金」狙いの個別株式投資。投信に比べて運用手数料は不
個人的に有望な資産運用だと思っているのは「配当金」狙いの個別株式投資。投信に比べて運用手数料は不
要なうえ、配当利回りで3%を超える銘柄は結構ある。REIT(上場不動産投信)も同様である。NISA枠なら配当
金に税金もかからない。
【追記】「
【追記】「
フィディリティ退職者8000人アンケート」のデータが各所で引用されているが、この中で参考になったの
は、定年時に同じ会社に再雇用された人が65歳まで残っている比率は3分の1しかないということ。つまり
会社としては法律なのでとりあえず再雇用はするが毎年の更新で切り捨てられる人が相当数いるという事実。
再雇用されたからといって65歳までの収入が確保された訳ではないのだ。