如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

巷に溢れる温泉ガイドとは趣向の違う医師の書いた「温泉学」

 

秘湯マニアの温泉療法専門医が教える-心と体に効く温泉

2018年9月9日

 まず本書は、消化器外科医が書いた温泉に関する内容であり、巷に広く出回っているいわゆる「温泉ガイド」
という側面よりは、各地の温泉の効能や、温泉と歴史や文学との関わりなど関連情報が本文の約半分を占める
という、どちらかと言えば「温泉学」と言った方がよいかもしれない。

 第一章では、著者の選ぶ温泉ベスト5とお気に入り別ベスト22が掲載されている。紹介内容については、
「医師」という職業柄からか、やや「硬め」の文体で、温泉に浸かった際の感覚をストレートに表現するとい
うよりは、温泉地の背景や立地など事実関係に重きを置いた客観的な文章だと感じた。

 各温泉紹介の最後に、必ず「泉質」「PH」「温度」「効能」などが記載されているのはそのいい例だろう。

 後半の第三章以降は、「歴史」「文学」「武将」のほか温泉のルーツなどの話となる。面白さという点では、
P189から始まる鳥獣による温泉発見の伝説が参考になった。鶴や鹿、猿のほか犬や猫が発見したと伝わる温泉
の数々が記載されており、著者の言うように「真偽のほどは定かではない」が、興味深い内容だった。

 巻末に著者が行った温泉のリスト217カ所が掲載されている。さすが「温泉療法専門医」の肩書も持つ専門
家だとは思ったが、専門が「外科」という多忙で知られる医師としては、よく全国これだけの温泉を巡れたも
のだと別の意味でも感心した。