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マンションを買うには相当の覚悟が必要だ。8割以上が資産価値下落か廃墟に

100年マンション資産になる住まいの育てかた

2018年9月13日

 個人的に、良識のあるマンションの専門家として評価している長嶋氏の最新刊である。

 内容は、マンションの未来図、長寿命化の問題点、良好な管理組合の事例紹介、資産維持のための提言から
構成される。

 読んだ感想は、「マンションを買うには相当の覚悟が必要」であり、「積極的に管理組合に関与しないと廃
墟と化す可能性が高い」、故に「マンションに住みたいなら『購入』ではなく『賃貸』の方がベター」だった。

 まず第一章で、マンションの未来年表が示されるのだが、2019年「マンションの空き家が社会問題化」に始
まり、2025年「廃墟マンションが都市部に出現」、2030年「マンションが廃墟化加速で自治体が破綻」など不
安要素がこれでもかと続く。
 著者は、自治体の行政効率が維持でき、管理状態の良いマンションは高い資産性を維持する(10-15%)が、
残りの大多数は資産価値の下落(70%)か廃墟化(15-20%)が避けられない、としている。まさに「不動産
格差ここに極まれり」だ。

 続く第二章では、資産価値の下落や廃墟化を免れるにはマンションを長寿命化するしかないが、現状では修
繕積立金の不足が原因で修繕がままならず、問題が深刻化していると解説している。

 ではなぜ修繕積立金が足りなくなるかというと、新築販売時に物件購入に掛かる月額費用を抑えて販売した
いという不動産会社の意向が働いているためだ。この結果、修繕積立金は当初必要以上に低い金額の「段階増
額積立方式」か「一時金徴収方式」が採用され、住み始めて何年後に大きな負担が生じ、購入者は資金調達に
慌てることになる。

 この増加する請求額を払えない所有者が増えた結果が、修繕積立金の不足=必要な修繕が不可能、という訳
だ。

 第三章では、このような
状況下で、管理組合が有効に機能し、経費の削減等を実現した事例が5つ紹介され
ている。

 確かに事例にある管理組合は立派であり参考になるが、注意すべきなのは理事長など「特定の個人」がリー
ダーシップを発揮した結果、うまく機能しているという点だ。有能なリーダーに依存する極めて属人的な仕組
みなのである。

 これはマンションの居住者(特に新築)からすれば、優秀な人材がいて理事長として活躍してくれるかどう
かはまさに「運」に左右されることになり、終の棲家にするにはリスクが大きすぎる気がする(自分が管理組
合の先頭に立つ覚悟があれば別だが)。
 
 最後の第四章で、著者はマンションの資産価値維持のための16の提言を示している。どれも実現すれば効果
は大きいと思うが、13の住宅総量の管理、14の住宅の資産維持がもたらす経済波及効果を検証、の2つの政策
はできる限り早く対応した方が良いと思う。

 第一章の未来年表では、「住宅総量目安の策定」は2031年に予定されているが、今から13年後の対応で間に
合うとは到底思えないのだが。

 全体として、客観的なデータを元に、マンションの未来と問題点、解決案を理路整然と解説しているという
点で、新築や中古のマンション購入予定者には「現状と将来」を知るという意味で参考になることは間違いない
だろう。

 個人的には、80%以上のマンションが資産価値下落もしくは廃墟と化す可能性があるなかで、資産価値の維
持できるマンションを選ぶおカネも見識も管理組合を積極的に引っ張る覚悟も自信もないので、マンションに
住むのであれば「買う」のではなく「借りる」を選択すると思う。