如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

何が「不都合」なのか意味不明。不安を煽ることが目的なのだろうか?

 

食にまつわる55の不都合な真実

2018年9月28日

 まず、タイトルが「食にまつわる不都合な真実」とあるが、読んだ感想を一言で言えば、「いろいろ不安を
煽っているが、結局何が言いたいの?」だった。

 第一章の「食と健康について」では、約3分の1が肥満や痩せすぎについての解説だ。過度の肥満が健康に
悪影響を与えることは否定しないが、最近は小太りの方が寿命が長いという研究もあり、肥満=やせるべき、
というのはやや短絡的。

 第二章の「食生活について」では、「コメは主食ではない」、「惣菜の利用が急増」などが指摘されている
が、国民の嗜好がコメからパンに移っているのに、米作農家が品種改良さえすれば売れるという「勘違い」に
気づいていないのが問題であり、他食品とのコラボを図るとか、輸出に活路を見出すとかの方が先決だろう。
そもそも需要がなくて、コメの消費が減ったことを食の大問題にする理由が理解できない。

 第三章の一部と、第四章のテーマは「自給率」。著者は大豆、野菜、小麦などの多くを輸入に頼っており、
海外の戦争などで輸入が途絶えたら食生活が激変すると警告している。

 まあ著者の言うように輸入食材の4分の1を米国に依存しているのはバランスが悪いが、であればアジア、
南米、欧州などからの輸入比率を引き上げてリスクを分散すればよい。そもそも全世界で同時に戦争が起きる
とは考えにくし、仮にそうなれば食糧危機に陥るのは日本だけではない。

 また著者は、東京都の食糧自給率は1%で危機的だとしているが、地価の高い都心でわざわざ農業を営む理
由があるのか。土地の有効利用を考えたら個人的には「山手線の内側や周辺部でダイコンだのキャベツだの作
るな」と言いたい。

 一方、第五章には参考になる内容があった。それは「新たに農業を始める人が1995年を境に増加傾向にあ
る」、「農家が直接農産物を販売する直売所の売り上げが1兆円に達した」ということ。

 メディアでは農場従事者(特に稲作)の高齢化と減少、農地の耕作放棄地が増加している、という報道しか
されていないので、これは意外だった。

 背景には、若者が自分で農作物を生産し、自由に販売できる仕組みが整ってきたことがあるだろう。衰退が
続いていた農業に一定の歯止めがかかるのかもしれない。言われてみれば、駅の周辺での「産地直送野菜」を
目玉に売る店や専門店は増えたし、客足もいいようだ。

 タイトルが気になって読んでみたものの、価格分の価値がある内容だとは思えなかった。「不都合な真実」
というのは、あくまで著者個人の考える「不都合」であって、個人的には本質的に「どこが不都合なのか」理
解に苦しむというのが実感だった。