如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

ひとり飯への見事なこだわり。朝日新書も味なことを

 

ひとりメシの極意

2018年10月15日

 週刊朝日で30年以上連載され続けているコラム「あれも食いたいこれも食いたい」から「ひとり」をテーマ
に48作品を収録した本である。

 紹介される料理やお酒は多岐に渡るが、共通しているのは著者の「思い入れ」が強いということ。

 例えば「カツカレー」。著者は「カツ」「ルー」「ライス」の配置を8種類提示し、このうちの一つが正解
だとしている。その根拠が「お客であるカツには(主人たる)カレーの皿への配慮が必要で、半分だけルーが
かかっている」というもの。

 この例に挙げたようなまさに個人的かつ主観的な意見が、基本的には淡々と、時には感情的になって進んで
いく。

 一読した感想だが、一人で料理やお酒を楽しむ際の店の選び方や心構え、作法などは、著者のオリジナルの
「こだわり」が感じられて面白かった。この通りに実践するかどうかはわからないが、やや敷居の高さを感じ
ていた「一人居酒屋」への挑戦のきっかけになりそうだ。 

 個々の料理などについては、いろいろ読者なりの意見もあるだろうが、著者は個人的な考え方を披露してい
るだけので、「それは違う」「ここはそうじゃない」などとケチを付ける野暮というものだろう。本書はメシ
のネタとして「生真面目」ではなく、「気楽」に読むべきものなのだ。

 ひとり飯について、こんな食べ方、注文の仕方もあったのかと参考になる記述も多く、「朝日新書も味なこ
とをする」ものだと、いろいろな意味で感心した。