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内容は「別班の正体」ではなく「別班取材の実態」。自画自賛はいかがなものか

 

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体

2018年10月18日

 1994年から共同通信社の防衛省担当となった記者の書いた陸上自衛隊内の陸上幕僚監部「別班」に関する
本である。

 ただ本書のサブタイトルは「秘密情報部隊『別班』の正体」となっているが、その内容は簡単に言えば、
「『別班』についての取材記録」に過ぎない水準だと感じた。

 具体的に言えば、2013年11月28日付け朝刊向けに共同通信社が配信した記事(見出しは「陸自、独自で海
外情報活動」など)について、取材を開始したのが2008年だそうだから、5年以上この案件に関わっていたこ
とになる。自衛隊の文民統制や特定秘密保護法への懸念が直接の動機だそうだ。

 長い期間一つのテーマへの取材活動に励む集中力には敬意を表するが、本書のタイトルを見て読もうとする
読者が期待するのは、「得体の知れない『別班』の具体的な活動や、現役構成員の素顔や本音」ではないだろ
うか。その点から評価すれば、おおまかな活動内容は書かれているが、物足りなさが否めない。

 もちろん、本書にも元幹部らの「証言」は記載されているが、どれも事前に著者が聞きたい要点を相手にぶ
つけるものの、「生半可」な回答ではぐらかされるという記述が多い。取材が困難なテーマであることは理解
できるが、中途半端な取材経過をそのまま表現されても読者は、どう評価すればよいのか困るはずだ。

 別班が、陸軍中野学校を前身としていることや現在の組織に至るまでの経緯などの記述もあるが、総じて「
別班の正体」に迫ったとは言い難い。

 また何とも解せないのは、この記事を新聞社に配信後、各紙がどう紙面に載せたか(31紙が1面トップだっ
たそうだ)、佐藤優氏のコメント、国会での討論などを紹介して、「自分の記事がどれだけ評価されたか」を
アピールしている点だ(P158からP183まで全体の1割強を占める)。

 マスコミ記者が自分の書いた記事を他紙の引用などを使って自画自賛するというのは、いかがなものか。記
事に自信と価値があるなら、あえてそれを誇示しなくても、読者はごく普通に評価するものである。

 結論を言えば、本書で「別班」の正体を理解することは無理だろう。ただ、本書でも紹介されているが、松
本重夫が書いた「自衛隊『影の部隊』情報戦秘録」(2008年)を読んでみたいという動機づけになったことに
は感謝したい。