受験と進学の新常識 いま変わりつつある12の現実
2018年10月19日
教育ジャーナリストおおたとしまさ氏が、最新の受験動向についてその傾向をまとめた本である。
ただし、対象となるのは中学・高校・大学のいずれも公立私立を問わず、最高レベルのトップ校であって、
東大・京大・国公立医学部を目指す受験関係者のために書かれており、その意味ではトップ校以下を含む「受
験全体」の傾向には触れていないのが大きな特徴だ。
序章と最終章を含めて全14章から構成されるが、第1章から第3章までは大学受験のための高校、予備校の
序章と最終章を含めて全14章から構成されるが、第1章から第3章までは大学受験のための高校、予備校の
選び方、第5章から第7章までは中学受験について、第10章から第12章までは海外の大学やインターナショナ
ルスクールなど日本の受験界とは一線を画す学校の現状が解説されている。
受験生を身近に抱える親としては、本書に期待する面も大きかったのだが、一読した感想を言えば、「東大
受験生を身近に抱える親としては、本書に期待する面も大きかったのだが、一読した感想を言えば、「東大
や国公立医学部を目指すのでなければあまり意味はない」だった。
冒頭にも書いたが、本書のタイトル「受験と進学の新常識」とはいうものの、その対象がごく一部のハイレ
ベル校に集中しているのである。
大学受験に関しては、「東大に何人合格したか」をテーマに高校、予備校を分析しており、偏差値や合格者
大学受験に関しては、「東大に何人合格したか」をテーマに高校、予備校を分析しており、偏差値や合格者
数のカラクリは参考にはなったが、具体的な「良い」予備校選びのポイントについては触れていない。
超難関中学受験に強いSAPIX、東大を筆頭に国公立医学部に圧倒的な強みを持つ鉄緑会については、その指
超難関中学受験に強いSAPIX、東大を筆頭に国公立医学部に圧倒的な強みを持つ鉄緑会については、その指
導内容の説明があるが、そもそもこのレベルの予備校を考えている親であれば知らないはずはない内容だ。
一方で面白いと思ったのは、第10章内にある「ハンガリーで医学を学ぶ」。東大を筆頭に日本では国公立
一方で面白いと思ったのは、第10章内にある「ハンガリーで医学を学ぶ」。東大を筆頭に日本では国公立
大医学部の偏差値が異様に高く、やや低い私立は学費がべらぼーに高い。どちらも合格のハードルは相当高い
のが現実だ。
ハンガリーの国立大学医学部であれば、入学試験はあるが、筆記試験は英語と理科2科目の計3科目で、
ハンガリーの国立大学医学部であれば、入学試験はあるが、筆記試験は英語と理科2科目の計3科目で、
日本では必須の数学が含まれないのが特徴。講義はすべて英語だが、世界各国から200人近く集まるので英語
が母国語でない学生も多そうで、日本人が特別に不利という訳でもない。日本にも新宿にハンガリー医科大学
の事務局があるそうだ。
ちなみに日本の私大医学部の学費に比べて、ハンガリーでは生活費も含めて半分程度だそうだ。しかも6年
ちなみに日本の私大医学部の学費に比べて、ハンガリーでは生活費も含めて半分程度だそうだ。しかも6年
後に卒業すればEU各国で通用する医師免許が得られる。日本で仕事をするには別途医師免許が必要だが、
2016までに卒業・帰国した49人のうち41人が合格しているという。
この実績は国内の医学部に比べても遜色はないし、「英語は得意だが数学は苦手、だけど医者になりたい」
という高校生には、結構魅力的な選択肢ではないだろうか。EUで通用する医師免許というのは、グローバル
化が進むなかで「有望な資格」のひとつになるかもしれない。
最後に本書は、国内の受験事情関連という視点では、対象がごく限られたトップ校に限定されており、その
最後に本書は、国内の受験事情関連という視点では、対象がごく限られたトップ校に限定されており、その
他大多数の受験関係者に訴求するまでの内容には乏しいと言えるだろう。ただ、前述したハンガリーなど海外
の大学事情には興味深い内容も結構あった。
タイトルにある「新常識」は海外に関する内容に限れば、読む価値はあると思う。