格差社会を生き抜く読書
佐藤 優, 池上 和子
2018年11月9日
作家の佐藤優氏と児童養護の専門家である池上和子氏という豪華な顔ぶれによる「格差社会」言い換えれ
ば「貧困」をテーマにした対談本である。
読む前はかなり期待していたのだが、実際に読んでみると、どうにも内容が分かりにくく、読み進むのに疲
読む前はかなり期待していたのだが、実際に読んでみると、どうにも内容が分かりにくく、読み進むのに疲
れるというのが実感だった。
そもそも格差社会に関する書籍30冊を紹介しながら、かつ2人の意見を織り込み、全200ページ弱にまとめる
そもそも格差社会に関する書籍30冊を紹介しながら、かつ2人の意見を織り込み、全200ページ弱にまとめる
という企画自体に無理があるのだと思う。
本文中に各書籍からの引用が入るうえ、佐藤氏の得意分野とはいえ海外の各方面の学者の学説が紹介され、
池上氏も同じように学説を引き合いに出す。これに現在の社会格差問題のデータが入り混じってくるため、頭
の整理が追い付かない。
こういった学説に馴染みのある人には、とても有意義な対談なのだろうが、個人的には内容が専門的過ぎ
こういった学説に馴染みのある人には、とても有意義な対談なのだろうが、個人的には内容が専門的過ぎ
て、格差問題の理解向上の手助けにはならなかった。まあ私の勉強不足が主因だとは思うが、格差問題の本
をあまり読んだことのない人には向いていないと思う。文体も総じて固く、どこか「上から目線」の印象が
否めない。
同じ格差や貧困を扱った対談本としては、10月に出版された「貧困を救えない国 日本 (PHP新書)」の方が、
同じ格差や貧困を扱った対談本としては、10月に出版された「貧困を救えない国 日本 (PHP新書)」の方が、
貧困の現場目線に立った身近な具体例が豊富でとっつきやすく文体も平易なので、私を含めた一般人にも理解
しやすいと思う。
せっかく教養と実績の高い2人が貴重な対談をしているのに、それを本として生かせていないのは本書の構
せっかく教養と実績の高い2人が貴重な対談をしているのに、それを本として生かせていないのは本書の構
成に携わった編集者の責任だろう。何とももったいない話である。