如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「不作法」をするのは「頭が悪い」からだ

 

男の不作法

内館 牧子

2018年12月2日

 
 脚本家、作家で女性初の横綱審議委員会の委員でもあった内館牧子氏の最新作である。

 今回のテーマは男の「不作法」だ。引き合いに出された不作法の数は30に上る。当然ながら「マザコンを隠
さない」「下ネタを言う」など男性特有の不作法の例が多いが、「時間を守らない」「自慢話をする」など男
女共通とも言える内容も含まれる。

 本書で著者の言いたいことを代弁すると「不作法なことをするのは頭が悪いからだ」ということに集約され
るだろう。

 この不作法には、無知、無教養に起因するマナー違反、ルール無視に始まり、「場の空気を読めない」とい
う行為まで含まれる。ここで重要なのは高学歴や知識の豊富さが「教養があるとは言い切れない」(p63)と
いうことだ。
 
 具体例として「蘊蓄(うんちく)を傾ける」(p54)がある。自分が深い知識や素養を持っている分野につ
いて、自慢したり、知っていることを伝えたいという気持ちは理解できるが、得てして「楽しい場面」だった
り、「初対面の人」もやるから不作法になるのだと著者は説く。

 これは「教養」という言葉の持つ意味にも繋がる。持っている知識を無節操に自分のペースでひけらかすの
ではなく、知りたいと思っている人の水準に合わせた内容を、分かりやすく簡潔に話せるのが本当の意味での
「教養」なのだろう。
 
 とはいえ、著者も得意分野である相撲では、蘊蓄を傾けたくなることがあるようだが、質問されない限りは
言わないそうだ。理由は、この不作法に対して「普通は(他人が)注意できないこと」(p60)だから。話し
たい気持ちをグッと抑えるのは立派な「作法」だと思う。
  
 本書で紹介される不作法の事例の多くは、個人的には「非常識」とも言えるもので、ごく普通に行動してい
れば回避できるのではないかと思えるものも多かった。

 ただ、男性としてとても参考になったのは「妻や恋人以外の女性をほめる」の項。大半の女性はこの行為に
不快になるようなのだが、これは「焼きもち」ではなく、「自分にないものを指摘された気になる」という劣
等感からだという指摘は、男性には考えが及ばない盲点だと感じた。
 
 これは私個人の感覚なのかもしれないが、逆に大半の男性は妻や恋人がかっこいい男性をほめても大して気
にならないと思う。これは「人は人、自分は自分」だと思っているからなのだが、女性はどうしても他人と自
分を比較してしまうようなのだ。

 ちなみに他の女性を褒めたあとで「あ、お前も可愛いよ」などと付け加えるのは、逆効果でさらなる不快感
を煽るらしい。

 女性の視線からの男性の不作法というタイトルなので「ネチネチ」した内容かと想像していたが、著者の性
格も影響しているのか予想以上に「サバサバ」した読みやすい本だった。

 無意識にやってしまう不作法を気づかせてくれる点で、男性諸君には一読して欲しいと思うが、不作法を自
覚していない人ほど本書を「自分には関係ない」として読まないだろうと売上部数を心配してしまうのも、著
者への「不作法」に当たるのだろうか。