明日の日本を予測する技術 「権力者の絶対法則」を知ると未来が見える!
長谷川 幸洋
2018年12月15日
本人が終章で「東京新聞という極端に左に傾いた新聞社に勤めながら、保守中道路線を貫いた」(p234)
と述べているように、異色の記者経歴を持つ著者の政治・国際情勢分析本である。
「まえがき」では、「明日を予測する技術」を初公開する、と書かれているが、最後まで読んだ感想を言え
「まえがき」では、「明日を予測する技術」を初公開する、と書かれているが、最後まで読んだ感想を言え
ば、予測する「テクニック」よりも分析した「結果」の方が文章量としては多いし、内容も参考になった、と
いうのが本音だ。
誤解を招くと困るので説明すると、著者の述べる「予測する技術」とは、突き詰めると「先入観を持たずに
誤解を招くと困るので説明すると、著者の述べる「予測する技術」とは、突き詰めると「先入観を持たずに
『事実』を見て、その裏にある『真実』を理解することが重要だ」という一文で表現できてしまうのではない
か、と感じた。
具体的な例を出すと第一章で、著者は2014年と2017年の衆議院解散の予想を的中させたが、この根拠になっ
具体的な例を出すと第一章で、著者は2014年と2017年の衆議院解散の予想を的中させたが、この根拠になっ
たのは「菅官房長官のGDP速報値に関する発言」と「新聞社の世論調査結果」という、どちらも公開情報であ
る。
政治部の記者やジャーナリストの多くは、官邸や党幹部などの聞き込み取材には熱心だが、こうした目の前
政治部の記者やジャーナリストの多くは、官邸や党幹部などの聞き込み取材には熱心だが、こうした目の前
の事実関係を冷静に検証し、真実に迫るスタンスを見失っている、と指摘している。
これはまさに「事実」から「真実」を導き出せばいいということだろう。
以上を前提に読み進めると、政治、国際情勢などの著者の「分析」は、説得力があって面白いのは確かだ。
特になるほどと合点がいったのが、自民党政権は経済の「安定成長」を目指しているのに対して、野党は
「格差是正」が目的だという指摘(p68)。
著者は経済規模をピザに例えているが、「ピザが大きくなれば、切り分ける部分も大きくなる」と捉えるか、
「ピザが大きくなっても、切り分け部分が大きくならない」と考えるかの違いであり、発想の原点が異なるの
で与野党の溝は埋まらないのが道理だろう。
とは言え、「ピザを大きくしたうえで、切り分け比率を変更する」という考えもあるのではないかと思うが。
また、左派のマスコミが政権批判に血道を上げているのは「野党が弱くなってしまったから」(p86)とい
う指摘も参考になる。
その理由は、野党の支持率が全部合わせても10%程度ではとても政権交代が望めないので、その現実を前に
して「オレたちが政権を打倒するしかない」と思い込んだのが左派マスコミだという分析だ。
日頃から、森友、加計、公文書改ざんなどで政権が追及されても、支持率の下落が一時的な現象にとどまっ
日頃から、森友、加計、公文書改ざんなどで政権が追及されても、支持率の下落が一時的な現象にとどまっ
ているのだから、マスコミは「何故支持率が底堅いのかを冷静に検証する必要があるのではないか」と感じて
いたのだが、政権打倒が左派マスコミの目的であればこれまでの偏った報道姿勢も納得ができる。
終章も含めて全九章からなるが、後半は米国、朝鮮半島、中国などの海外情勢の分析で、こちらも事実に基
終章も含めて全九章からなるが、後半は米国、朝鮮半島、中国などの海外情勢の分析で、こちらも事実に基
づいた分析と解説は分かりやすく参考になる。
今注目の米中貿易戦争の行方については、「ハイテク技術が軍事に直結しているので米国は絶対に退かない。
現在はこれから本格化する米中『新冷戦』の序章に過ぎない」(p235)との指摘は、今後の日本への影響を
考えるとかなり厳しい予想だ。
「日本は米国との同盟を堅持しつつ、冷静で複眼志向の外交戦を戦う覚悟が問われている」(p251)のは
間違いない。
【追記】
第三章で、日本の財政赤字問題は、日銀の資産を含めた「統合政府」としてみれば問題はない、と元大蔵官
【追記】
第三章で、日本の財政赤字問題は、日銀の資産を含めた「統合政府」としてみれば問題はない、と元大蔵官
僚の高橋洋一氏の主張を支持している。
個人的には「日銀の負債は考慮しなくていいのか」が疑問だったのだが、著者は「負債勘定にある日銀券も
当座預金も返す必要のない無利子・無期限の借金だから心配はない」としている。
私は財務に詳しい訳ではないのでこれは個人的な見方だが、返す必要のない借金であるなら「負債」ではな
く「資本」に組み入れるべき勘定項目のような気もするのだが。