勝つための情報学 バーチャルからリアルへ
山村 明義
2018年12月27日
本書の経歴によれば、金融業界誌や出版社などで情報収集・発信を35年間手掛けてきたジャーナリストであ
る著者の「情報学」である。
読後の感想を言えば、長年の取材経験に基づいた「情報の取扱説明書」といった感じだろうか。
読後の感想を言えば、長年の取材経験に基づいた「情報の取扱説明書」といった感じだろうか。
全7章、225ページから構成されるが、第1章のテーマ「フェイクニュース」から始まり、「真の情報への
アプローチ法」、「インテリジェンスとは」、「米中の情報戦略」などそのテーマは多岐に渡る。
情報と言えば情報ではあるが、「陸軍中野学校」や「財務省」の情報史、さらに「暗号」の仕組みまで解説
している。
また、本書の特徴として感じたのは、豊富な取材経験によって得たノウハウの一部を、印象的なキーワード
また、本書の特徴として感じたのは、豊富な取材経験によって得たノウハウの一部を、印象的なキーワード
(6W2H1D、三角測量法など)を使って分かりやすく解説している点だ。
その上で、本物の情報と偽物の情報を切り分ける重要性を説いているが、問題なのは「本物の情報のなかに、
見分けのつかない嘘の情報が混じっていること」(p63)という指摘は現実的で説得力がある。
第7章で「情報の世界も『0』か『1』かという『二元論的対立』では解けないことが明確になってきた」
第7章で「情報の世界も『0』か『1』かという『二元論的対立』では解けないことが明確になってきた」
(p230)と解説しているように、今後の情報は「人的関係性」「多元的・多角的な価値観」で構成される可
能性が高まるのは確実だろう。
こうした状況下で、戦後の左翼やリベラル的なマスメディアが言論を主導し、情報戦略面で世界に後れを取
こうした状況下で、戦後の左翼やリベラル的なマスメディアが言論を主導し、情報戦略面で世界に後れを取
ったのは「健全なナショナリズムの否定が最大の原因」(p234)との指摘は的を得ている。
あとがきにある、本来の情報とは「善と悪」「右と左」などの対立軸を超え、創造的なものを生み出したり、
あとがきにある、本来の情報とは「善と悪」「右と左」などの対立軸を超え、創造的なものを生み出したり、
知的好奇心をくすぐる性質ものであるはず、という解説には誰もが納得できるのではないだろうか。
タイトルは「勝つための情報学」だが、「真実を知るための情報学」でも良かったのではないかと思った。
タイトルは「勝つための情報学」だが、「真実を知るための情報学」でも良かったのではないかと思った。