如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

ちょっとした気遣いで人間関係はもっと良好になる

一緒にいて楽しい人 疲れる人: 仕事もプライベートも、好かれる人はここが違う!(知的生きかた文庫)

本郷 陽二

 

 人間関係を良くすることについて書かれた本は多いし、それなりに読まれているようだが、本書も2014年に出版された同名の本の文庫化であり、売れるとの「読み」が出版社にあるのだろう。

 本書の要点を個人的にまとめると、「無理のない範囲で相手に配慮した行動を心がけよう」ということになる。

 

 ここでポイントのひとつは「無理のない」ということ。
 例えば、会話に端々に「私なら・・」を割り込ませる人には合わせる方もうんざりするので「無視する」(p29)。噂話など関わりたくない話をされたら「興味がないという態度を示す」(p98)など。また、メールの着信音を聞いて相手に「出なくていいの?」と気を遣いすぎるのも居心地を悪くする(p149)としている。

 要するに「自然体で」ということなのだが、ありきたりの「言葉」だけでなく、本書のように具体的な「行動」でアドバイスなのは参考になると思う。
 
 もうひとつのポイントは「相手に配慮」という点。
 これは良く言われる内容ではあるのだが、「~でいい」ではなく「~がいい」という(p14)、相手の発言に対して「でも・・・」で返さない(p16)などだ。
 こういう言葉は「何気に使ってしまいがち」なだけに、自分も今一度注意したいと思う。

 一方で、「時には、相手の顔色をうかがわない」(p144)という手法も紹介している。これは、顔色をうかがう人ほど「嫌われたらどうしよう」という不安があるためだが、著者は「自分が思っているほど、相手は他人のことをみていない」と解説、「相手の顔色をうかがうのは、結果として自分が得をする時だけでいい」と割り切ることを勧めている。

 

 まあ「顔色をうかがう」のと「配慮する」のは似て非なるものであろうが、この判断基準は結構迷うことが多いと思う。どちらも「相手の感情に寄り添おう」という視点では同じだからだ。
 会社で言えば上司に対しては「顔色」を見てしまうことが多いような気もするが、これも上司の性格や仕事の進め方にもよるだろうし、現実にはケースバイケースで対応するしかないといったところだろうか。

 

 気になった点もひとつ。
 著者は「対面で言うべきことをメールでしか伝えられない人は、コミュニケーション能力不足、つまり相手の気持ちを考えない自己中心タイプが多い」(p67)としている。

 これは大枠では正しいと思うが、問題になるのは「相手が自分の言ったことや聞いたことに責任を負わないタイプ」の場合だ。
 つまり都合が悪くなると「そんなこと言った(聞いた)記憶がない」などととぼける人が意外に多いのである。こういう無責任な人間を相手に仕事を進めるには、会話や伝えた事を文書にしてメールし、記録に残すしか対応手段はない。ついでに言えば「cc」で関係者にも送っておけば間違いない。

 厳密には「メールでしか」という著書の記述とは異なるが、メールならではの使い道があるということは認識しておいた方がいいと思う。

 

 以上、まとめると取り立てて目新しい人間関係改善手法が紹介されているわけではないが、具体例を踏まえたわかりやすい内容ではあると思う。

 

 もともと端から見て人間関係に問題を抱えておても本人が自覚していなければこういった本を読まないだろうし、人間関係に悩みがなければなおさらだろう。
 その意味では、対人関係で特に大きな問題はないけれど、もう少しうまくやれたらいいんでけど、というふうに感じている人には参考になる部分も多いと思う。