如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

人生に絶対の「正解」はないが、「不正解」はある

人生の正解(幻冬舎新書)

勢古 浩爾

 この本のタイトル「人生の正解」を見たときは、ずいぶん大上段に構えた本で「人生の先輩として正解を語るとは大した自信だ」と、まずは関心した。

 

 著者の作品をレビューするのは「定年バカ (SB新書) 」以来となる。定年バカでは、老後の生き方に悩む中高年に向けて、「やりたいことがあればやるし、なければ何もしない選択肢があっていい」と、「ありのままの人生」を推奨していただけに、スタンスが大きく変わたのか、との印象も持った。

 ところが「あとがき」で「身の程知らずにも、大それたテーマを選んだことをほとんど後悔した」書いているように、本書の内容は「大上段」どころか、かなり腰の低い「下段」の構えなのである。

 古典からの引用や、大学教授のほか芸能人などの言動を引き合いに出して、持論を語る展開も変わっていない。

 

 本書で面白いと感じたのは、人生に唯一絶対の正解はないが、まっとうな人生を送る3つの条件を挙げている点と、逆に不正解の人生の具体例4つを示していることだ。「やりたいように生きればよい」とする「定年バカ」よりは、かなり深く人生というものに正面から向き合っている。

 詳細は本書を読んで頂くとして、まっとうな人生の条件はいずれも「できるだけ後悔しないため」ではないかと感じた。一方の不正解の人生の趣旨は「下品・下劣な言動」だと言えるだろう。

 

 出版社としては、帯にある第七章「生まれ変わってもまた自分になりたいか?」を売り込みたいようだが、個人的には第六章の「社会的価値と自分的価値」の方がしっくりきた。

 いずれにせよ、勢古浩爾氏の過去の著作に共感できる点が多い人には、本書も読んで面白いと思えるはずだ。