如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

昭和のオジサンが評価されている7つの視点

オジサンはなぜカン違いするのか(廣済堂新書)


香山リカ

 

 昭和なオジサンは「時代が変わったことに気づくべきだ」。
 著者の伝えたいことを一言で表現すると、こういうことになると思う。

 

 本書では、いわゆる自分の各種ハラスメント行為が大きく時代遅れになっていることに気づいていない(もしくは気づきたくない)50代後半の男性を主たるターゲットにして、そのカン違いの具体例を「パワハラ」「情弱」など7つに分類して解説している。

 

 特に印象に残った内容を紹介すると、第三章の「情弱オジサン」では、そのキーワードとして「素直」「疑わない」「(動画の)関連情報を延々と閲覧」「自説を強化」を挙げている。
 著者はこの背景として、テレビに対する信頼感が厚く「(ネットの)動画で言っていたのだから本当なのだろう」と信じ込みやすいという弱点がある(p88)と指摘している。
 
 個人的には、視聴率が支配するテレビ番組への信頼感は以前からかなり揺らいでいると思っているのだが、シニア層を含めテレビ離れが進む中で、かつての「テレビ」への信頼感が、「ネット動画」に移行したということだろうか。
 いずれにせよ著者が指摘するように「しょせんネットでしょ」と冷めた目で見ている若者の方がよっぽど「大人」であることは間違いない。

 

 第四章の「セクハラオジサン」では、不倫に関する分析が面白い。「キミといっしょになるために離婚して、会社もやめて、アルバイトしようかな」と言ったときに、彼女が「え・・・時給900円とかで」と顔を曇らせたらすぐに関係を終わらせるべき、という指摘は、女性の視点ならではと感じた。

 もっとも、ここまで突っ込んで不倫相手に聞ける「勇気」と「覚悟」がある男性は、そうそういるとは思えないが。

 

 精神科医である著者の考察は、各種参考文献の引用を含めて勉強になる内容が多い。さらに言えば、「自分がおとなでステキなオバサンになれているとは思っていません」(p213)として、自身の弱点をさらけ出していることも説得力を高めていると思う。
 
 あと個人的な提案するとすれば、タイトル「オジサンはなぜカン違いするのか」だと「俺はカン違いなどしていない」といったカン違いオジサンの反感を買う可能性があるので、ここは「昭和のオジサンが評価されている7つの視点」といった方が、受け入れやすいかもしれない。

 

【つまらない疑問】
 第四章の「セクハラオジサン」の章で、性的な内容が含まれているかだけでなく、男女の関係が介在しているやり取りであればセクハラとなる可能性があると指摘している。
 これはその通りだと思うのだが、例えばアダルトビデオなどを手掛ける会社の会議で「この(性的な)テーマについてどう思うか」と聞くのはセクハラなのだろうか。
 聞く方も聞かれる方も「個人的な嗜好を聞いているのか、仕事上の意見を求めているのか」線引きが難しいと思うのだが。くだらない感想で気を悪くしたらすみません。