不動産会社の印象が悪化したわかりやすい経緯(東洋経済オンライン)
中川 寛子 : 東京情報堂代表
6月10日付けの東洋経済オンラインに賃貸不動産営業に関する記事「不動産会社の印象が悪化したわかりやすい経緯」が掲載された。
その要旨は、世の中のビジネスがシンプルへとむかう中で、不動産業界だけが逆行している、という内容で、具体的には「敷金・礼金」の水準が下がる一方で、「カギの交換代や消毒料、害虫駆除代、消臭料」といった費用が上乗せされて、料金体系が複雑化し、分かりにくくなっている、という指摘だ。
その詳細は記事を読んで頂くとして、個人的な感想を言えば、そもそも不動産屋に「良識」を求めること自体に無理がある、と思っている。
かつて、法務大臣を務めた秦野章は「政治家に徳目を求めるのは、八百屋で魚をくれというのに等しい」という発言をしたが、これはそのまま不動産屋にも当てはまる。歩合制給与の占める比率が高く、離職率も他業種に比べて高い不動産会社の営業マンには「遵法精神」というものは、頭の隅にすらない。
これは学生時代、賃貸不動産営業のアルバイトを経験し、宅建士の資格も持っている私の経験上の実感である。
以前は銀行の融資を受ける際の信用度のチェックで、街の不動産屋の従業員はキャバレーのホステスとほぼ同格だった。所詮その程度の信用しかないのである。机と電話があれば営業活動ができる不動産業界への参入障壁は極めて低い。
宅建士の資格保有者が事務所の社員5人に対して1人いればいいという規制は、逆に言えば残りの4人は不動産の素人でも構わないということだ。であれば、そもそも不動産屋の営業マンに品格や資質など期待する方が間違っている。
賃貸について言えば、悪質なのは地域で複数の支店を抱える中堅どころ不動産屋の営業マンで、専門知識のレベルは低いのに、強引な営業姿勢だけは引けをとらない。まだ大手財閥系の方がマシだが、それでも安心はできない。
私が賃貸物件を借りるのに実践していたのは、地元で何十年も営業している地場のじいさん・ばあさんが地味にやっている小さな不動産屋。
昔からの縁で大屋さんから物件の管理を任されていて信用があり経営も安定しているので、無理な営業などで評判を落とすことを嫌う。
借りる方も、派手な広告や見かけ上の物件の多さに惑わされることなく、まっとうな不動産屋を探す努力をするという手間を惜しんではならない。