神戸市がブチ上げた『タワマン禁止令』の波紋(東洋経済オンライン)
一井 純 : 東洋経済 記者
東京都心部でのタワマン建築はまだ活況だが、この流れにストップをかける動きが地方から出てきた。
7月11日付けの東洋経済オンラインの記事「神戸市がブチ上げた『タワマン禁止令』の波紋」である。
内容は、神戸市の繁華街である三宮にタワーマンションが乱立した結果、周辺部を中心に住民が減る一方で、三宮の人口が急増したことで市内の人口バランスを是正するための規制が来年7月から施行されるというもの。
タワマン誘致のための容積率緩和を実施したころは、オフィスなどの入居も見込んだそうだが、現実に移動したのは住民が中心で、企業や店舗は予定していたほど埋まらなかったそうだ。大阪から30分という「微妙な距離」も新たなオフィスの誘致には影響したらしい。
とは言うものの、そもそもデベロッパーに唆されてタワマンを立てれば個人・法人の住民が増えて税収が増えるという「甘い期待」を自治体が抱いたのが間違い。
おそらく普通のマンションよりも土地が有効活用できて、効率がいいぐらいの発想しかなかったのではないか。
所得など生活レベルが大きく異なる住民が集まるタワマンは「投資」「永住」「賃貸」など居住目的はさまざま。管理組合が将来にわたって大規模修繕などでまともに機能するのかも怪しい。記事中にある「スラム化」は決して非現実的な話ではないだろう。
もっともここに来て、東京都心部ではすでにタワマンの人気には陰りが出ており、竣工後5年以上たっても売れ残っている未入居物件も増えてきた。
タワマンの買い手も一時的な「憧れ」や「優越感」に流されないで、長期にわたるローンや生活環境をもっと見据えるべきだろう。
参考までに、マンション評論家の榊淳司氏が、タワマンに対して強い警鐘を鳴らす本「限界のタワーマンション」を6月に出版している。
昨今のタワマンブームに真っ向から異論を唱える内容で、不動産業界からは反発が強いようだが、タワマンを購入する予定の人は、「タワマンの抱える問題」を知る意味からも一読して損はないと思う。