何故、日本のメディアは冷静な分析ができないのか
日付を同じくして日本と韓国のオンラインメディアに、日本の韓国向け輸出規制に関する記事が掲載された。
7月11日付けの現代ビジネスでは経済ジャーナリストの磯山友幸氏が「韓国が「反日運動」すればするほど、経済に大打撃となりかねないワケ」という記事を、韓国の中央日報日本語版では、韓国経済研究院が10日に全経連会館で開いたセミナー「日本経済制裁の影響と解決法」をテーマに「侍のように…日本、自ら損失甘受しながら相手を叩く」という記事を掲載している。
どちらも輸出規制が双方の経済的損失に繋がるという点では同じなのだが、大きく異なるのはその影響に対するスタンス。
磯山氏は、記事の最後で「政治が事態をエスカレートさせることは、両国経済にとって何らプラスにならないということを双方の国民は痛感すべきだろう」として、両国ともに悪影響があるので規制には反対という立場だ。
一方、韓国経済研究院のチョ・ギョンヨプ選任研究委員は「日本の輸出規制は典型的なサムライ戦略」と規定、「日本も輸出規制によりGDP損失が0.04%水準に達するとみられるが、こうした損失に耐えて相手にもっと大きな被害を与えるという戦略」と話したという。
そもそもの話で言えば、輸出規制といういわば「ケンカ」をする相手は、国民や経済という存在を抱える「イキモノ」の国家であって、機械のような「モノ」ではない。
サンドバッグを叩くのとは訳が違うのだから、相手を攻撃すれば相応の反撃を受けてダメージを被るのは当たり前の話である。
このように常識的に考えれば、磯山氏を含めた日本のメディアが総じて「日本への悪影響を強調」して報道するのは意図的に日本政府の姿勢を批判し、韓国の立場を支援していると思われても仕方がないだろう。
より経済的な影響が大きい韓国の専門家の分析の方がよっぽど「自国の現実」に向かい合っている。
輸出規制問題がクローズアップされるようになって、韓国の反応に関する報道内容が日本でも報じられる機会が増えたように感じるが、日本のメディアだけではなく韓国のメディア(朝鮮日報、中央日報などの日本語版)による報道にも幅広く触れた方が正しい情勢認識ができると思う。