20・30代が「老後までに2000万円」を貯める方法(東洋経済オンライン)
最近はやや下火になったが、金融庁の発表した報告書の記載をきっかけに「老後資金2000万円不足問題」がクローズアップされた。
例によって、マスコミや一部の政治家が一部のキーワードを切り取って煽ったというのが実態に近いが、この経緯と貯蓄手法の現実について、7月18日付けの東洋経済オンラインに「20・30代が「老後までに2000万円」を貯める方法」という記事が掲載された。
記事は大きく分けて2段構成で、前半が金融庁の報告書について。後半が20・30代がどうやって資金を貯めるか、という内容になっている。
そもそも金融庁の ワーキング・グループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」について言えば、本文36ページ、付属文書を足しても51ページしかない。
5分では読めないが、20分あれば十分な分量。今回の一件では当初メディアを中心に「老後資金が2000万円足りない」に批判が集中したが、その後まともな識者が相次いで論点を整理したことで、参院選ネタとしてはさほど炎上していない。
今回の件をきっかけに、マスコミや評論家は批判する前に「まずは元ネタを確認」という基本に立ち返る姿勢を再考すべきだろう。
報告書の内容に関する主張ついては、読み手の立場によって意見は分かれると思うので、ここでは言及しない。
後半の20・30代の積立NISAを利用した資産形成の提案については、基本的な考え方には同意したい。長期投資が老後の資金確保に有効であることは間違いないからだ。
ただ、「毎月の積み立て額上限は3万3000円です。これを年平均3.5%の利回りで積み立て投資を続けると、30年の積み立て期間で2000万円になります。20代、30代の人なら十分に手が届く話です」というのはどうだろうか。
20代なら手取りが20万円台というは普通だろうし、そこから1割以上を貯蓄に回すのは、なかなか厳しいと思う。30代になれば、結婚、子供、新居で支出は増加、給料の増加分を上回ることになり、やはり貯蓄は難しいだろう。
あと、積立NISAについて言及するなら、あと数年で期限がくる通常のNISAについても延長を言って欲しかった。個人的には年間投資額上限が40万円の積立NISAよりも、120万円のNISAの方に魅力を感じている。投資対象商品の選択肢も通常NISAの方が圧倒的に広い。
あえて言えば、どちらも制度を恒久化し、さらに両方同時に利用できるように(現在は片方のみ)してもらえるとありがたい。
気になったのは、この記事の執筆は「鈴木 雅光 : JOYnt代表」となっているのだが、内容には「コモンズ投信の渋澤健会長」の発言しか書かれていないこと。「対談」でも「インタビュー」でもない訳で、これなら渋澤氏の名前だけ出せば十分ではないのだろうか。