如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

65歳までは再雇用で、その後は個々の資質で働くのが現実

「管理職は年長者の役割」の発想を壊すべき理由(東洋経済オンライン)

高城 幸司 : 株式会社セレブレイン社長

 

 高齢者の雇用問題について、なんとも理解しがたい不可解な記事「『管理職は年長者の役割』の発想を壊すべき理由」が7月29日の東洋経済オンラインに掲載された。
 
 記事で気になった点は2つ。一つ目は「60歳の定年を迎えて新たな働き口を見つけることが簡単ではない」という指摘。
 もうひとつが、「『管理職は年長者の役割』という認識から脱却できていない職場がいまだに多数、存在」という考察だ。
 
 一つ目の60歳以降の雇用問題だが、厚生労働省の「平成 28 年高年齢者の雇用状況集計結果」によれば、再雇用、定年延長などの高年齢者雇用確保措置を採用している企業は、全企業の99.5%、従業員31人以上の企業に限れば、99.7%が導入済である(p3)。これはすでに全国すべての企業が60歳以上のシニアを雇用していることになる。確認しておくがこれは平成28年の調査である。

 著者の言う「60歳を超えると仕事が見つからない」というのは明確に事実と反する。というか周囲を見れば再雇用で働いている人が多い現実には嫌でも目に付くはずなのだが。
 
 もうひとつの「管理者は年長者」という認識。
 これはいつの時代の話だろうか。もはや50代で役職定年となってそれまでの管理職の肩書がなくなるのは当然だし、そうなれば過去の部下が上司になるのは当たり前である。
 同業他社との競争が厳しくなる中で、最新の業界動向を把握し、適切な判断力、素早い行動力で仕事をこなせなければ、管理職は勤まらない。
 「年長者だから管理職」などという人事を行っている企業に未来はない。
 
 役職定年や再雇用制度は導入当初、対象者の間で「肩書がない」「部下がいない」「給料が下がった」などと不満の声も多かったが、では会社を辞めることができるのかと自問した結果、住宅ローンや教育費などの出費と、自分のキャリアで現在の給与を維持できる転職できるかどうかを天秤にかけて、大多数は結局自社での再雇用にとどまっているはずだ。
 60歳超えの再雇用者の多くは、すでに65歳までの収入確保のための「受け身の労働」と割り切っている。

 もっともこの従業員のモチベーションのなさ、つまり生産性の低迷要因を解消すべきというのは確かに大きな問題である。
 
 この記事で意味があるのは、最後にある「チェンジ・マネジメントと呼ばれる手法で、社会情勢の変化や、競争環境の変動などを全社員に容認させる」という指摘で、世代間の仕事に対する意識の格差を解消させることだろう。これには相応の効果が見込めそうだ。
 もっともシニア雇用者の労働意欲向上への取り組みは、今に始まった話ではないのだが。
 
 ただ個人的には、大卒新卒で入って55歳の役職定年まで33年間、60歳の定年まで38年間ひとつの会社で働いてきたなら、その後は自分のキャリアや特性を生かして「第二のキャリア」に取り組んだ方が人生は充実したものになるのではないかと考えている。
 
 折しも厚生労働省は平成31年の「モデル就業規則」で副業・兼業について、これまでの原則禁止の立場から「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」(労働基準法第68条)とし、その方向性を180度転換している(第14章)。
 
 また経団連やトヨタ自動車などの幹部などは、「終身雇用制度は維持できない」という姿勢を打ち出しており、新卒で大企業に入ったら一生安泰という時代はとうに過ぎ去った
 
 この「副業容認」「終身雇用制度の廃止」の2点から見えてくるのは、第二のキャリアを自分で探せというメッセージだ。
 最近ではNEC、日本ハムなど名だたる大企業が45歳から早期退職を募集している。サラリーマンが第二の人生を考えるのに「早すぎる」ということはなさそうだ