如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

100円均一の物件サイトは「空き家」を有効活用できるか

100均の家ついに登場、深刻化する空き家の対処(東洋経済オンライン)

山本 久美子 : 住宅ジャーナリスト

 

 日本全国、特に地方部においては不動産の「無価値化」が言われて久しい。
 人口の減少、商業施設や交通網の不便、建物の老朽化などで所有者が「手つかず」のまま放置されていることが多いようだ。

 8月1日の東洋経済オンラインに「100均の家ついに登場、深刻化する空き家の対処」という記事が掲載された。
 
 空き家は記事にもあるが、周囲の住環境に悪影響を及ぼすので自治体は「空き家特措法」で対策を講じているが、実際の処分(代執行)まで行ったのは165件に留まっている。やはり所有者の権利関係などの調整に時間と手間がかかるのだろう。

 

 その他にも、空き家の有効活用を目的に「全国版空き家・空地バンク」を自治体が運営を民間委託する動きもあり、こちらは1900件契約したという。

 

 とまあ、ここまでは空き家の現状を解説する記事としては間違ってはいないが、多少なりとも空き家の事情を知っている人にとっては目新しい内容ではない。「そんなことはずいぶん前から周知の事実」というレベルだ。
 本記事は全部で4ページあるのだが、ここまでの「空き家の現状解説」で3ページ目の半分以上までを占めている。

 タイトルにある「100均空き家」の話はたった最後の1ページ強なのだ。これでは「見出しの掛け声倒れ」というか、字数を無理やり稼いだ感が否めない。

 

 で、本題の「100均空き家」を運営しているのは「空き家ゲートウェイ」で、Webサイトによれば運営しているのは「あきやカンパニー」という東京の不動産関連会社と「YADOKARI」という横浜のイベントなどを手掛ける企画会社の2社。
 もっとも売り買いのマッチングをするだけで不動産屋のように仲介手数料を取るビジネスではないらしい。

 

 また、この企画で面白いと感じたのは物件の査定を申し込むと、資産価値のある物件だと「残念!掲載できません」と拒否される点だ。
 つまり、市場で売れる物件はあえて扱わず、本来売買が成立しない無価値物件に特化しているのが視点として非常に面白い。

 現在、無価値物件をビジネスにしているという点では、越後湯沢のリゾートマンションを売り手から180万円を受け取って、中国人などへの売却を企んでいる会社が注目されている。

 しかし、記事によれば、この「あきやカンパニー」は「自然豊かな場所に安くて広い住まいを手に入れて思い通りの暮らしを実現したいという人」に物件を紹介するという狙いが主たる目的のようだ。

 ちなみに当該サイトにはまだ3物件(8月1日現在)しか掲載されていないが、10日で70件ほどの問い合わせがあったそうだ。

 ただ、個人的には「仲介手数料取らない」「無価値物件の紹介のみ」でどうやってビジネスを成立させてるのかということが大いに気になる。


 記事には、この辺の事情が書かれていないので不明だが、「リフォーム会社のあっせん」や「将来の仲介手数料確保」を目指しているのだろうか。

 是非とも「あきやカンパニー」の今後のビジネス展開の考え方も取材して記事化してほしかったところである。