如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「晩婚」「金銭教育」の主張を理解できないではないが・・・

ジム・ロジャーズ「晩婚の方がお金持ちになる」(東洋経済オンライン)

花輪 陽子 : ファイナンシャルプランナー

 

 シンガポール在住の著名投資家ジム・ロジャース氏のインタビュー記事「ジム・ロジャーズ『晩婚の方がお金持ちになる』」が8月11日付けの東洋経済オンラインに掲載された。
とは言っても7月20日に出版された著作「日本への警告」の宣伝が主たる目的と思われるが。まあこれはよくあるパターンなので特に言及しない。
 
 記事のキモは2つ。「晩婚」と「子供への金銭教育」のススメだ。
 
 まず晩婚について。ご本人は「20代の最初の結婚は大失敗で自殺を考えた」とまで述べている。つまり「何も知らない(新卒の)23歳が結婚するよりは、世の中の仕組みなど物事がわかってくる年齢まで結婚を待つことが重要」だと解説している。
 
 本人も初めて子供を授かったのは60歳を過ぎてからだそうで、実体験によるものだが、さすがに60歳を超えての子供は子育てという面でも苦労が少なくないと思う。
ただ、厚生労働省の平成30年版「我が国の人口動態」によれば、平均婚姻年齢の年次推移 1950年には夫27.0歳、妻24.7歳だったのが、2016年は夫31.1歳、妻29.4歳と、ともに4歳以上上がっている。
 「早く結婚して」「子供をたくさん産んで」「老後は孫に囲まれて幸せに暮らす」というのはもはや「平成」以前「昭和」の時代の話なのだ。
 
 女性の社会進出が進み、社内での地位向上によって、仕事や社会の仕組みを理解する機会が増えたことも、女性が結婚を急がず、冷静に男性を見極める傾向を強めたはずだ。
 企業の女性採用も過去の「一般職」は激減、男性と同じ「総合職」での採用が当たり前になった。これは全国に過去600校近く存在し、一般職に学生を大量に「供給」してきた短期大学が、300校台にまで減少、志望学生の減少に疲弊し、青山学院、立教女学院といった有名短大が募集停止となったことからも明らかだ。
 
 もはや、男性も女性も大卒以上の学歴を持つ社会人は、ある程度の社会経験(恋愛を含む)を積んで、地震と相手の将来を見極めたうえで価値観の一致する伴侶を選ぶというのが一般的になっている。
 最近では政治家「小泉進次郎」氏と「滝川クリステル」さんの成婚もこのパターンだろう。
 
 若いうちの勢いで結婚、子供を得ても幸せな生活を確保できるという家庭も少なくはないだろうが、どちらかと言えば、地方で地元の幼なじみ同士が「できちゃった婚」でというパターンが多いようなイメージあるし、結婚そのものを人生の大きなイベントと考えていない可能性もあるので、離婚や再婚の傾向も大きい可能性はある。
 結婚自体は、男女の自由だが離婚による子供への影響は無視できないはずだ。
 
 次の論点は「金銭教育」。
 子供のころからの金融教育の重要性はこれは、ジム・ロジャースに言われるまでもなく、日本でも以前から言われてきたことである。
 記事では最後の部分に「まだまだ日本ではお金のことを話すのはハシタナイという意識がありますが」というインタビュアーの花輪陽子氏のコメントが掲載されているが、個人的にはこの風潮はかなり変わってきているのではないかと感じている。
 
 例えば、日本銀行が事務局を務める「金融広報中央委員会」では「学校における金融教育の年齢別目標」を引き合いに出せば、小学校二年生の道徳の授業向けに「お金は大切に使おう」という金融教育プログラムを提供している。
 また、2018年度には小学校、中学校、高校向けに「金融公開授業」を全国24か所で開催している。 
 日本の子供への金融教育制度が世界に比べて遅れを取っている訳ではないのだ
 
 問題の根本的な原因は、国民が自身の社会福祉や年金がどのような仕組みで運用されているのかにあまり関心がないため、「老後は年金で何とかなるだろう」という「お上頼り」の考え方をする人がいまだに少なくないことだろう。つまり自分で「金融の仕組みを理解しなくては」というモチベーションが働かないのだ。
 この辺の事情は、7月23日のDIAMOND online「『投資教育』以前に日本人に必要不可欠な金融リテラシーとは何か」と、これに関連した私のブログ「日本人に必要なのは『投資教育よりも税と社会保障への理解」でも解説している。

 日本は、年金や介護保険などの社会保険料がサラリーマンでは給料天引きになっているので、直接的に負担を感じることが少ないと言われている。確定申告で過払いの税金を取り戻す人は増えているが、収めた税金や社会保険料がどのように使われ、運用されているかまでを知っている人はほとんどいないだろう。
 
 ただ最近では、「老後資金2000万円不足」問題で、やや将来の資金計画を改めて見直す人が増えたのも事実。
 金融庁の提出したレポートへの世間の評価が、本来の趣旨とはズレてはいる側面はあるのだが、これを契機に自分の老後のために「金融の知識を勉強すべき」という考え方が広まれば「結果オーライ」ということで、とりあえず最低限の目的は果たしたと言えると思う。
 退職に追い込まれた金融庁の担当局長はかわいそうだが。