如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

女性取締役比率30%は望ましいが、急がずとも・・・

私が見た、企業トップの女性活躍への"及び腰"(東洋経済オンライン)

坂東 眞理子 : 昭和女子大学理事長・総長

 

 世界には「30%クラブ」という女性の取締役比率を30%に増やすことを目標とする民間企業の集まりがあるようだ。

 

 813日付けの東洋経済オンラインに「私が見た、企業トップの女性活躍への"及び腰"」という、日本の30%クラブのアドバイザリーボードの一員である坂東眞理子氏の記事が掲載された。

 

 現在、日本の上場企業の取締役に占める女性の割合は4.1%なので、目標には程遠い感もあるが、英国では2010年の発足当初12.6%だったが2018年に30%を達した。

 

 ちなみに日本では2003年に政府が、あらゆる分野の政策決定に参画する地位の30%を女性にするという方針を決めたが、現状では結果が出ているとは言えない状況だろう。

 

 坂東氏は、「なぜ、なかなか女性管理職が増えないか。長時間労働、性別役割分担の根深さなど、できない理由はたくさんあげられるが、必要なのは変えるための意志である」と指摘している。

 

 これには同意できる部分もあるが、問題となるのはこの「意志」の実際に持つ意味だろう、

 というのも、30%クラブや政府の機関が女性の幹部比率を高めたいという「意志」と、肝心の女性社員で取締役などの幹部になりたいという人の「意志」の度合いにはかなり「格差」があるのではないかと、個人的には思うからだ。

 

 ちなみに私は個人的に地元の市議会の活動に関心があるので、機会があれば一般質問を傍聴しているが、議員の女性比率は約40%と高いが、議会に参加する市幹部の女性比率は4%に過ぎない。

 あまりの格差に市の担当部署に理由を聞いたのだが、「地方公務員法の要請もあり、性別に関係なく適材適所で配置しているが、これまでの事務職の職員は男性職員のほうが多いことから、部長職も男性の方が多いのが実態」という、回答があった。

 

 これは「女性の意志」というよりは「女性職員の人数」の問題ではあるが、対象者が少なければ当然、幹部登用の人数も少なくて当然で、実力不足の女性を「数合わせ」で幹部に引き上げる方が問題だろう。これは一般企業にも当てはまる部分は多いはずだ。

 

 もうひとつはまさに「女性が取締役をどれほど目指しているのか」という問題だ。

 確かに周囲を見れば、積極的にリーダーシップを取って部長、取締役に出世した人はここ10年ぐらいで急増した感はある。当然だが、仕事の実力を見てもまったく男性に引けを取らない。

 少なくとも「女性だから」という理由で出世に影響することはなくなったように見える。30%クラブの掲げる理想も理解できるが、数%に過ぎなかった女性管理職が13%にまで増えた事実はもっと評価されてもいいのではないか。

 

 さらに言えば、男性を含む育児休暇制度や託児施設の拡充など「女性の子育て管理職」への職場の理解も深まっている。13%という数字はまだ上がる可能性が高いだろう。

 

 一方で、実力が十分にありながら管理職になりたがらないという社員も、男性を中心に急速に増えているのも事実だ。ライフ・ワーク・バランスというのだろうが、仕事とプライベートを両立させるために、あえて出世を拒否する世代も少なくないのだ。

 周囲を見ても、激務とストレスで身体を壊しては意味がないと考える男性は意外に多いのである。

 

 以上を踏まえると相対的に見て、女性の管理職登用の機会が増える一方で、男性は「仕事一筋・出世こそ本望」という会社型人間が減っているので、このままでも自然と女性の幹部(取締役を含む)の比率は上昇すると個人的には考えている。

 

 坂東氏が「30%クラブの数値目標」を急ぐ気持ちはわかるが、世の中の流れを見ると「世の中は幹部登用に当たって、男女差をあまり意識しなくなりつつあり、結果として自然に女性の幹部比率は高まる」のではないだろうか。

 

 私の地元の市議会の女性比率(40%)が、市役所幹部職員(4%)の10倍もあるという事実は、市議会議員という役職が、市幹部職員よりもはるかに女性が活躍しやすい職場だということを証明していると思う。