あおぞら銀「メガでも地銀でもない」戦略のわけ(東洋経済オンライン)
藤原 宏成 : 東洋経済 記者
経営破綻した日本債券信用銀行を前身とする、あおぞら銀行の社長インタビュー「あおぞら銀『メガでも地銀でもない』戦略のわけ」が8月26日付けの東洋経済オンラインに掲載された。
個人的には、同じ元長信銀で米系ファンドに買収された新生銀行がまず頭に浮かんだ。同行は当初振込手数料の無料化、ATMの24時間営業など新サービスを展開、個人的にも期待感もあって利用していたが、その後のサービスの急低下などでイメージが悪化したので、あおぞら銀行にも、やや警戒感をもっていたのは事実である。
記事を読むと、あおぞら銀行は新生銀行とは異なり、独自のポジションを生かし、得意分野に特化したビジネスを展開、社長が「メガバンクでもないし、地方銀行でもない」言うように、ある意味中途半端な立ち位置を逆に生かす戦略を取っていることが分かる。ちなみに同行の実店舗は本店を入れても20しかないが、全国の主要都市をカバーしている。
その特徴だが、まず50代以上が8割という顧客構成、社長は「もう少し若い世代にアプローチしないと尻すぼみになる」としているが、同行のWebサイトにアクセスすると、真っ先に目に入るのは「Brilliant60s(ブリリアント・シックスティーズ)を、ごいっしょに。」という大きな広告だ。
Webサイトによれば、「アクティブな世代を、あおぞら銀行は、Brilliant60s(ブリリアント・シックスティーズ:“輝ける60代”)と定義し応援していきます」とあり、対象者には期間一年ながら半年複利で年率0.3%という定期預金を設定している。これはメガバンクなどの30倍の水準である。ちなみにインターネット支店の普通預金の金利も年率0.2%で、こちらは200倍だ。
同業他社に比べて極端にサービス内容がいい場合、「何かウラがある」と考えるべきなのは投資の世界では常識なのだが、同行では経費率が他行より低いので、「他の経費を削れば預金に金利を多少上乗せできる」と社長は回答している。
とは言え、30もある有人店舗も維持費用もバカにならないと思うのだが、そこは全店夜8時まで営業、法務、税務の資格を持つ行員を配置して、事業継承や相続といった「込み入った」内容に対応することで、富裕層などの顧客を獲得する構えだ。
記事よれば、GMOグループと組んで「法人向け決済ビジネス」を手掛けたり、いろいろと手は打っているようだ。
将来の大きな課題は、現状の顧客層に固執していては、社長が言うように「もう少し若い世代にアプローチしないと尻すぼみになる」ことだろう。
現在のターゲット顧客層から預金は集められて、相続対策などで手数料などを稼いだとしても、この層はいずれさらなる高齢化で減少するのは確実だからだ。
現在のターゲット顧客層から預金は集められて、相続対策などで手数料などを稼いだとしても、この層はいずれさらなる高齢化で減少するのは確実だからだ。
ただ、個人的には同行は他の地方銀行に比べれば、優位な立場にあると思っている。というのも20ある店舗のうち、都内に7店舗、千葉、神奈川に各1店舗、名古屋、関西圏に5店舗と大都市圏に13店舗、インターネット支店を含めれば14とほぼ過半数を人口の集中する都市に配置しているためだ。
現在の主要顧客である高齢・富裕層は、いずれ相続で資産を子供世代に譲ることになる。その譲られる子供が働き、生活しているのは大都市圏がほとんどだ。
ということは、地方に住む親世代から相続で子供が得た資産を、実家のある地方銀行など地元金融機関から、相続人が住む都市圏の銀行に移管される可能性が少なくなる。
いったん親世代から預かった資産は、そのまま子世代の同行の口座に移るだけのことになる可能性が高い。
ということは、地方に住む親世代から相続で子供が得た資産を、実家のある地方銀行など地元金融機関から、相続人が住む都市圏の銀行に移管される可能性が少なくなる。
いったん親世代から預かった資産は、そのまま子世代の同行の口座に移るだけのことになる可能性が高い。
もっとも、現在のような差別化したサービスが維持できていればという条件はあるだろうが。
話はそれるが、この社長、東大法学部を卒業し日本債券信用銀行に入行したプロパーである。インタビューにあるような事業展開を打ち出せる能力をもっと生かす機会が当時の本人にあれば、日債銀も破綻せずに済んだのではないかとも思った。