如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

大江戸温泉リートの資産運用報告書がけっこう面白い

大江戸温泉リート投資法人(3472)の第六期資産運用報告書

 

 資産運用の一環として私は、株式などに投資をしているのだが、中でも対象銘柄のほぼ半数を占めているのがREITである。

 投資になじみのない方のために簡単に説明すると、REITとは「Real Estate Investment Trust」の略で、訳すと「不動産投資信託」となる。

 

 その仕組みを簡単に言えば、不動産投資に特化した特別会社を上場させて投資を募り、その資金で不動産を購入して、得られる賃貸料や物件の売却益を投資家に分配金という形で還元するというものだ。

 

 不動産投資をするなら「直接物件を購入して大家になればいいのではないか」と考えて、ワンルームマンションやアパート経営に乗り出す人も少なくないようだが、個人的にはオススメしない。

 というのも都内でワンルームを買えば千万単位で、アパート一棟ならさらに多額の資金が必要になる。自宅ではないので銀行からの融資の金利も高い。

 加えて、空き家の可能性、賃借人の不始末、設備の更新などのリスクを考えると、サラリーマンがワンルームの一室を購入するというのは言わば「地雷」を抱えるようなもの。しかもここ数年で物件価格が高騰しているので実質利回りも期待できない。

 

 対してREITは、複数の物件に投資するので分散投資になるうえ、マンションの他に、オフィスやホテル、商業施設など選択肢も多い。最低投資金額も圧倒的に低い。例えばETFとして東証に上場している「iシェアーズ JリートETF( 1476)」なら 2125円で購入できる(8/16現在)。

 

 REIT全体で見れば、利回りは4%を超える銘柄も結構あるので、分配金(いわゆる配当金)狙いの投資としても期待できることも大きなメリットだ。NISA枠で購入すれば配当金に課税もされない。もちろん株式のように市場で取引される金融商品なので価格下落のリスクはあるが。

 

 さて、話がだいぶ横にそれたが、今回のテーマはそのREITで私が投資している銘柄のひとつ「大江戸温泉リート投資法人(3472)」だ。

 

 今週、第六期の資産運用報告書が送付されてきたのだが、これが意外にも結構面白いのだ。

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資産運用報告書の表紙

  他のリートは、総じて報告書に「決算の概要」「投資物件の説明」「今後の投資方針」あたりを、淡々とまさに「報告」しているだけで「まったく興味をそそられない」のだが、大江戸温泉は、内容の充実度が他社とは全然異なる。

 投資対象が「温泉・温浴施設」という個人利用者を対象にしているという側面はあるだろうが、少なくとも「読ませる」内容に注力しているのは間違いない。ちなみに同社の株主に占める個人の割合は98.3%である(5月31時点)。

 

 まず冒頭で、同社執行役員の今西氏と一橋大学准教授の岡本氏「余暇活用」についての対談を掲載。

 岡本准教授が「人が成長する場として余暇が非常に重要である」という学説を紹介、その余暇で最も重要なのは「観想」という概念で、これは大切な仲間や家族と語りあうことで、人生において本当に大切な時間を過ごすこと、と解説している。

 

 一方、今西氏は「大江戸温泉では、アクティブシニアが楽しそうに家族や仲間と交流していて、これが『観想』なのですね」と話を自社のビジネスに振っている。

 

 岡本氏は対談の最後で、「何も生産しない時間の中で、人が人らしい空間や時間を作ることが重要」として、そのための投資を今西氏に提案している。

 

 個人的には、大江戸温泉も巷に多数ある「スーパー銭湯」の宿泊施設の整備版だと思っているので、「観想」を考えて利用している人はほとんどいないと思うが、考え方としては面白いと感じた。

 

 報告書には、他にも「余暇活用のマーケット事情」などのコラムも掲載されているが、報告書の一部にちょっと違和感を覚えた部分があったので最後に指摘しておきたい。

 

 それは「トップメッセージ」として今西氏が業績などについて述べているのだが、相対的に業績が伸び悩んだ2施設について、「対策として個人客の集客強化策を実施していると聞いています」と書かれている部分。

 必要な対策を「聞いています」というのはトップの発言としては如何なものか。対策を「聞く」のではなく「実施して、効果も出ています」というのが投資家向けの発言としては正しいだろう。

 どこか事業への関心が「他人行儀」のように感じられる表現がやや気になった。

 

 とはいえ8月16日時点の分配金予想利回りは5.47%。今西氏も今期、次期共に2300円台を確保できると予想しており(前期は2390円)、当面は十分な利回りは期待できそうだ。