如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

EDLPはスーパーの特売チラシを駆逐するか

スーパーで「特売日」がなくなり「毎日安売り」が増えている理由(ダイヤモンド・オンライン)

森山真二:流通ジャーナリスト

 

 「本日特売日!」というのぼりを最近、スーパー店頭などでみかけなくなった。そういえば新聞の折り込みチラシもめっきり減った」という出だしで始まる、最近のスーパーなどの特売状況の変化を分析する記事「スーパーで「特売日」がなくなり「毎日安売り」が増えている理由」が8月21日付けのダイヤモンドオンラインに掲載された。

 

 記事のキモは2点。ひとつは「折り込みチラシ」の効果が減少したこと。新聞の発行部数が大きく減ったうえ、特売情報はスマホでチェックできる、ということ。

 もうひとつが、エブリディ・ロー・プライス(EDLP)という価格戦略だ。毎日が安売り日ということで「特売宣伝用のチラシ」の価値が失われている、という点だ。

 

 スーパーの折り込みチラシについて言えば、地域によって差があるのか私の周囲では「減った」というよりは、家電販売店のチラシが「大きくなった」感が強い。

 食品スーパーのチラシの内容自体、は大きく変わってはいないと思う。中高年世帯が比較的多い地域なので意図的に配布している可能性はあるが。

 

 一方、EDLPを導入したスーパーとしては、米ウォルマート傘下になった当時の西友で、レジカウンターの前に大きな輸入チョコレートを山積みにしていた記憶があるが、成功しているようには見えなかった。実際昨年には西友の身売り観測も報道された。

 

 記事では、国内では食品スーパーのオーケーがEDLPを先行してきたと解説しているが、そのオーケーを上回る勢いでEDLP戦略で攻勢をかけているのが、ドラッグストア大手のコスモス薬品らしい。

 

 ただこのコスモス薬品、公式サイトによれば全国に1004店舗(7月末現在)あるのだが、西日本に店舗は集中していて、関東には3店舗しかもすべてが東京で、江戸川区、渋谷区、中野区にしかない。東京都下に住むものとしては、店舗のイメージはもとより、品ぞろえや安さの実感が湧かないのが実感だ。

 

 記事によれば、ポイントカードの廃止などで徹底してコストを削減、経費率は他のドラッグストアより格段に低い。医薬品を扱うことで薬剤師の配置など人的コストはかかるが、安売りの食品で顧客を呼び込んで、医薬品の購入にもつなげて利益を確保しているようだ。

 私の自宅の大手ドラッグストアではまだ見かけないが、24時間営業や弁当の販売を手掛ける店舗も出始めているようで、「食品は常にスーパー並みかそれ以上に安い」「いざという際に医薬品も買える」「総菜、弁当も充実」となると、スーパーはもちろんコンビニの脅威にもなりえるだろう。

 

 実際にコンビニの店舗数は、日本フランチャイズチェーン協会の統計によれば、今年に入って5万5000店台で足踏みが続いている。最近になってドラッグストアの再編が取りざたされているのは、コンビニが成長期に相次いで合併し、大手3社に集約されていく過程を、追いかけているようにも見える。

 

 コンビニには折り込みチラシというもの自体がないが、ドラッグストアのチラシもあるにはあるが、スーパーとは質量ともに比較にならない。

 ただ、EDLPが今後消費者の間で認知されるようになれば、事情は変わってくる。新聞の発行部数は減少が続き、日本新聞協会によれば2018年には4000万部を割り込んだ。一世帯当たりの購読部数は0.70まで低下している。

 部数減少に歯止めがかからない 状態だけに、折り込みチラシの必要性や価値はさらに薄らいでいく可能性は高そうだ。