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「理科系」強く、「女子大」は低調―――有名企業への就職率

最新!「有名企業への就職率が高い大学」TOP200(東洋経済オンライン)

安田 賢治 : 大学通信 常務取締役 情報調査・編集部ゼネラルマネージャー

 

 有名企業への就職では「理科系が圧倒的に強く、女子大は総じて低迷」という大卒の就職傾向をまとめた記事「最新!『有名企業への就職率が高い大学』TOP200」が、9月7日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 詳細は記事を読んで頂くとして、傾向を一言で言えば「理科系は強く、女子大は低調」といったところだろうか。

 

 記事では、「理系大学の強さが際立っており、トップ10では半数の5校を占める。総合大学でも早稲田大は理工系が3学部、大阪大も3学部あり定員は多い」としており、また、「トップ10以外でも、(中略)比較的規模の小さな理系大学も上位に入っている」としていおり、大学の規模や国公立・私立の区分なく理系は強い

 

 その理由は記事にもあるが、新技術などへの対応などで有利なのは当然として「例えばサービス分野でも、IT、AIの導入は当たり前」というように、必要とされる分野が急速に拡大したという事情がある。

 

 今後の傾向を想定してみると、AI、RPA、5Gなどの普及で理系へのさらに需要が高まるのは確実だが、文系学部でも理科系科目には関係ないとは言えなくなるはずだ。

 

 文系では最近は「商・経営」系の学部が就職に有利と言うことで人気化しているが、就職して業務に携われば、顧客や市場データの分析に必要な「統計分析」の知識は不可欠だし、ソフトウェアの重要度が増せば、業務を推進するうえでも「プログラムやシステム開発」担当者との意思の疎通ができなければ、話にならない。

 

 小学校でプログラミング授業が必修科目になったのは、文部科学省も理系科目の重要性に気づいたからだろう。高度なプログラム技術を全員が取得する必要はないし、現実には無理な話だが、プログラムという概念を理解するだけでも、仕事の幅は広がる

 

 こうして理科系大学や学部が人気化するのはいいのだが、問題は「学費の高さ」だろう。手元に資料がないので恐縮だが、文系に比べて年額数十万円は高いはずだ。しかも大学院への進学率が文系より圧倒的に高いので、さらにその差は広がる。実験などの研究施設が必要なので、仕方がないのではあるのだが。

 

 学費の無償化や奨学金の拡充などの動きはあるが、その対象は低所得者向けが主流で、両親ともに大卒以上で、共稼ぎ夫婦のような家庭にはあまり恩恵がないのが実態だ。

 

 日本が今後も「技術立国」を目指すのであれば、親の所得に関係なく、高校時代の成績や得意分野での実績などをもっと評価する仕組みを充実させてもいいはずだ。

 例えば、東京大学などでも推薦入学の選考では、高校時代の実績を評価して「全国レベルあるいは国際レベルのコンテストやコンク ール(例えば数学オリンピック)での入賞記録」(p18)などを基準にしているようだが、一般の大学がここまでハードルを高くする必要はないだろう。

 

 個人的には、入試の成績ではなく、工業高校や高専などで独創性のある技術を手掛けてるような進学志望者を、積極的に採用するような仕組みがあってもいいと思う。