如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

改めて問われる「社内失業者」の処遇

日本で「社内失業者」が増え続けている根本理由(東洋経済オンライン)

鳥潟 幸志 : グロービス・デジタル・プラットフォーム プロダクトリーダ

 

 「社内失業者」と呼ばれる正社員でありながら仕事がない状態の労働者の「傾向と対策」について解説する記事「日本で『社内失業者』が増え続けている根本理由」が9月10日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 かつては「窓際族」と呼ばれ、「部付部長」とか「シニア何たら」といった肩書で、部下も仕事もない名目だけの管理職は昔から存在したが、記事によれば2025年には500万人に達するそうで、改めてその存在と対策が重要になっているようだ。

 

 世の中の状況を見てみると、確かに「社内失業者」は増えている感はあるこの理由として希望者には65歳までの雇用が義務付けられた結果、多くの定年退職者が再雇用制度を利用して、同じ会社に留まっているものの、「役職」「部下」「権限」ははく奪されて、与えられた仕事へのモチベーションを喪失しているパターンが多いように思える。50代半ばで大半の社員がなる「役職定年」もこれに含まれる。

 

 記事のキモは後半部分の2つで、一つ目は「会社側」が、終身雇用制度の崩壊を前提に社員に自己啓発を促す意図から「異動によるキャリア発展の機会を作り、キャリアパスを考える機会を与えること」というもの。

 二つ目は、「個人の側」が、自分の人生を考えるうえで「市場環境や自分の相対的な能力を把握すること」だ。また、会社以外のコミュニティへの参加も推奨している。

 

 また、「営業、企画、オペレーション、どんな職種に就いていようと通用する汎用的なビジネススキル」の取得も推奨しているが、別の職場に長くいた人には、人間関係や創意工夫などのスキルが求められるこれらの職種への展開は、年齢的にも困難だろう。

 外部コミュニティへの参加も意図は分かるが、メンバーが50代の似たような経歴の持ち主ばかりだと、刺激は少ないし、結局「名刺交換会」で終わってしまうことも多いのではないか。

 

 とまあ、「社内失業者」問題に関する分析は、普通はここで終わってしまうのだが、この記事は最後に「実践的かつ具体的」なアドバイスをしている。

 それは「今やっている目の前の決まりきったオペレーションを“少しだけ”変えてみる」ということだ。「社内メールの文章スタイルを変える」といった小さい変化の積み重ねが、やがてモチベーションを変える契機になる、というアドバイスは「社内失業者」にとって実行するためのハードルは低いので、とりあえず行動する価値はあると思う。

 

 記事を読んだ感想としては、社内失業者の立場で満足している人は別にして、不完全燃焼やモヤモヤといった感情に悩んでいる人は、「人生の後半戦をどうやって生き延びるか」といった大上段に構えて悩むよりも、「まずはできる範囲の一歩から」という気持ちで取り組んだ方が気は楽だし、時間はかかっても納得のいく「結論」が導き出せるような気がする。