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財閥系不動産でも「年収格差」は凄まじい――住友不はランク外

最新!「40歳年収」が高い500社全国ランキング(東洋経済オンライン)

東洋経済オンライン編集部

 

上場企業を対象に各社の40歳社員の平均年収をランキングした記事「最新!40歳年収』が高い500社全国ランキング」が掲載された。

 

 40歳と言えば、仕事も自分の進め方を生かして活躍、大企業であっても役職にはついていてもおかしくない年代だが、バブル期の大量採用組が上につかえているうえ、最近は45歳を対象とするリストラも増えており、微妙な年次でもある。

 

 さて、ランキングの結果をみて、気づいた点をいくつか挙げたい。

 まず最大の特徴は、M&Aを手掛ける企業群だ。1位のM&Aキャピタルパートナーズ(40歳推計年収2920万円)をはじめ、5社がベスト10にランクインしている。

 

 これは案件を成功させることによる報酬が多額なため、担当した社員に支払われる「成功報酬」の占める比率が高いためだろう。

 しかもあくまで「平均」なので、3000万円以上受け取っている社員も少なくないと思われる。きわめて「実力主義」の会社なのだろう。

 

 確かに年収ベースでみれば、うらやましい限りだが、その仕事の実態は「想像を絶する」厳しいモノではなかろうか。儲かるビジネスなので大手、中小が入り乱れて激しい競争をしているはずで、様々な案件を手掛けながら、そうした努力が報いられるケースの方が当然少ないと思う。

 

 ただ業種としてみれば、中小企業を中心とする後継者不在問題は今後さらに高まるのは確実なので、M&A需要が高まるのは確実。成長産業のひとつとは言えそうだ。

 

 次に注目したのは、「総合商社」。昔から給与が高いのは有名で、三井物産などは海外赴任すれば「帰国したら家が建つ」などと言われていた。今回のランキングでも、上位15位までに大手5社がランクインしている。

 

 ただこちらは、先のM&A関連企業と違って、いまだにある程度の年功序列型の賃金制度が維持されているはずで、手掛けた仕事の成果が評価されることはあっても、それは「年収」ではなく「出世」に対してだろう。

 終身雇用も年功序列も制度面では解消される方向にはあると思うが、とりあえず「有名企業」「安定志向」の人には、いまだに魅力的な会社だと思う。

 

 さて、今回のランキングで最も興味深かったのが「財閥系の3つの不動産会社」の年収だ。

 実際に数値を見てみると、16位に三井不動産(1247万円)、18位に三菱地所(1221万円)と上位にランクインしているのに対して、マンション販売では最大手の住友不動産は上位500社のランキングに入っていない。

 ちなみにランキングの最下位(494位)の会社の年収は723万円なので、それ以下ということになる。

 

 気になったので調べてみたら、手元の日経会社情報によれば、住友不動産の平均年収は661万円だった。記事によれば今回のランキングの対象企業全体の単純平均は603万円ということだから、かなりこの「平均」に近い。

 

 会社に問い合わせたわけではないので、どのような理由でこの格差が生じるのかは不明だが、ネットの会社情報投稿サイト「カイシャの評判」によれば、住友不動産は「何歳になっても年俸一律300万円+高歩合率のインセンティブ」とのコメントが散見されたので、こういった基本給の低さが影響している可能性はある。

 

 住友不動産と言えば、全国、首都圏で分譲マンションの供給戸数は5年連続で日本一、その強力な販売力には定評がある。当然ながらそこで働く社員の労働環境も厳しいものがあるはずだ。

 同社は、新築マンションの販売で値引きしないことで有名だが、こうして高い利益率を確保する一方で、社員の年収を低くしてコスト抑えるというのは、利益を追求する「企業」としては株式市場で評価されるだろうが、社員をできるだけ効率的に安く使うというのは新卒の「就職先」としては、どうなのだろうか。

 

 昨今のように再規模な都市、マンション開発で大手不動産(デベロッパー)の仕事に魅力を感じる就職希望の学生も多いとは思うが、同じ「財閥系」でも、その待遇には大きな格差があることを知っておくべきだろう。