如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

最下位は月収21万円、年収300万円未満が11社も

40歳年収「全国ワースト500社」最新ランキング(東洋経済オンライン)

東洋経済オンライン編集部

 

11日に「最新!40歳年収」が高い500社全国ランキング」を組んだから、そのうち逆の「低い」ランキングも特集号するのではと考えていたら、やはり東洋経済は期待を裏切らなかった。

 13日付けの東洋経済オンラインに「40歳年収「全国ワースト500社」最新ランキング」が掲載された。

 

 集計対象となった企業の数は前回と同じ3227社で変わらないため、平均値も603万円と同じ。

 今回の記事で、注目したのはランキングの順位は当然だが、前回の「高い」企業バージョンと異なり、ランキング上位の会社の実名を挙げて記事化していないこと。

 

 記事の最後に「利益率の高くない事業を手掛けていたり、業績が苦しかったりと給料が高くない事情は、各社それぞれだ」としており、会社への配慮もあるのだろうが、想像するに最も懸念したのは、低い年収が広く世間に伝わることで、会社の評判が失墜し、経営危機の引き金になることを危惧したためだと思われる。

 

 東洋経済は「経済誌」が要であり、帝国データバンクのような「信用調査」が本業ではないことから考えても、無用なトラブルを避けるという意味では、数値データのみを提供して、その見方は読者に任せるというのは妥当な判断だと思う。

 

 とは言え、読者からすればランク上位の会社が気になるのは確か。ここはあくまで個人的な感想として、ランキングを評価してみたい。

 

 まず驚いたのが、年収(40歳推計)が300万円未満の企業が11社もランクインしていること。トップのトスネット257万円、月額換算では21.4万円だ。これでは日給1万のアルバイトを月に20日やるのと変わらない(社会保険などの負担は考慮しない)。

 このトスネットだが、本業は東北地区での警備事業。単体と連結の売上高(平成309月期)はそれぞれ約12億円と103億円だが、従業員数(平成30930日現在)で割ると一人当たりの売上高は各285万円と325万円になる。

  これはあくまで「売上高」だから各種経費を引いて、平均257万円の年収を支払っているのだから、経営としては立派とも言えるのかもしれない。

 

 第二位は、日本パレットプール。パレットとは倉庫での荷物輸送の際に荷物の下に置いてフォークリフトで運ぶためのプラスティックの板なのだが、これを必要な物流施設などに貸し出すのがメイン事業だ。

 業績面では意外と堅実で20123月期以降、2019年3月期まで8期連続で最終利益を確保し、配当も実施、今期は増収減益ながら配当額は維持する見通し。

 この業績から見る限り、ワースト2位の給与しか払えないような会社には見えないのだが、何か事情があるのだろうか。ちなみに株価は1800円台だが、予想利回りは3.76%もある。ただ、売買高が極端に少ないので、換金性は弱いかもしれない。

 

 第三位はカワサキ。大阪の服飾事業をメインとする会社だが、売り上げは20億円程度、社員数は連結でも104人と小規模な会社だ。

 気になるのは、Webサイトの事業紹介には、メインの服飾事業のほかに賃貸・倉庫事業の2つが掲載されているのだが、ニュースリリースを見ると補完的な事業と思われる「太陽光発電」関連のニュースで埋め尽くされている。今年に入ってからでは13本中9本が太陽光発電の「お知らせ」だ。

 新規事業に傾注するなら、きちんと事業紹介すべきだと思うのだが、「株主・投資家の皆様へ」の社長メッセージにも「太陽光発電」の「た」の字もない。

 Webサイト全体を見ても、どうにも「やらされている感」が強く、会社に「勢い」が感じられない。ついでに言えば、人材の採用活動は一切行っていないようだ。

 

 まあ、以下の企業も傾向は似たような状況のはずなので、この辺でやめておくが、注目したいのは第4位の太平洋興発

 創業1920年の歴史ある会社なのだが、何と平均年齢が58歳だ。従業員数は会社サイトによれば246名(2019331日現在)だから、60歳以上の社員がかなりの人数で存在することになる。求人募集もしていないので、このままだと2年後には社員の平均年齢が60歳の「還暦」という、聞いたことのない超高齢社員の東証一部上場企業が誕生することになる。

 

 以上、ランキングを個人的かつ主観的に解説してみたが、傾向としてはっきりしているのは、当然ながら「時代に取り残された事業を手掛けている」企業が多いことだ。具体的には、昔からの繊維、地方百貨店などだ。

 比較的社歴の長い会社が多いのも特徴で、創業時代から手掛ける事業が細りつつも何とか利益を出してきたうえ、社員数も少ないので人件費負担も少なく、現在まで生き残れたというパターンが多いように感じた。

 

 これらの企業が現状のまま大変身する可能性は低いが、第11位の堀田丸正のように、急成長したRIZAPグループに編入されるという「事件」が起きる可能性もある。親会社の意向次第で会社が様変わりする可能性もなくなくはない。

 過去にも、石綿のセメント管財を手掛けていた日本エタニットパイプという東証上場企業が、ミサワホームに買収されて、ミサワリゾートに社名を変更、ゴルフ場などのリゾート開発会社に事業転向した例もある。現在はミサワグループから離れ、会社名リソルとして東証一部に上場している。

 

 ただ、こういう企業は例外中の例外。次回のランキングでも大きな傾向は変わらないだろう。