如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

高齢者をターゲットにしたメルペイの戦略は奏功するか

メルペイが「巣鴨地蔵通り」を占拠した真意(東洋経済オンライン)

長瀧 菜摘 : 東洋経済 記者

 

 スマホ決済の大手「メルペイ」が、巣鴨という「おばあちゃんの原宿」として知られる商店街でシニア層向けのキャンペーンを展開しているという。この状況を紹介する記事「メルペイが『地蔵通り』を占拠した真意」が9月16日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 メルペイは、これまでも原宿や高円寺で同様のキャンペーンを行ってきたが、シニア向けに限定するのは初めてだそうだ。初日には「メルカリ・メルペイ講座」を実施したようだが、参加者は7名に留まった。

 一見少ないようにも思えるが、メルカリが定期的に開催しているシニア向けの交流イベントの定員は20人とのことだから、普及率を考えれば「想定内」の人数かもしれない。

 

 もっともメルカリの本意は、スマホ決済「メルペイ」の普及というよりは、本業の「メルカリ」の普及を広めて、その結果メルペイが利用されるケースが増えればいい、と考えているようだ。

 

 記事によれば、メルカリの取扱高は2019年4~6月の平均で2.6割の増加だったが、50代以上の利用者は6割増と際立っている。フリマを使う高齢者は急速に増えており、それが今回の「シニア向け」キャンペーンに繋がった形だ。

 

 では、どのような商品を高齢者がメルカリで売買しているのかが気になるが、圧倒的に多いのが「生前整理」だという。

 確かに記事にもあるが、ブランド品や骨とう品、書籍などをリサイクルショップに持ち込んでも買取値は極めて低い。特に服飾品に至っては「グラム当たりいくら」の世界だ。私も経験があるが、持ち込んで超安値で買い取られた商品が、その数倍から十数倍の価格で売られているのを店頭で見て、二度とリサイクルショップは使わないことに決めている。

 店頭によくある「高値買取」の看板は虚偽表示だと、消費者庁に訴えたいぐらいだ。

  その観点から、メルカリがシニア層が生前整理で得た売上金を、メルペイで使ってくれれば、メルペイの普及にも繋がるというのはよく考えられたストーリーではある。

 

 以上を踏まえて個人的な見解を述べると、メルカリのシニア利用度は今後も高まるが、メルペイへの波及効果は限定的だと思う。

 

 その理由だが、まずフリマ市場では年代を問わず、買い手同士の「競り」を前提にした「ヤフオク」よりも、自分の売りたい価格で売りやすい「メルカリ」人気が集まっているのは事実。

 ただし、高齢者がメルカリの売上金を、街中の商店街でメルペイを使って支払うかは別問題だろう。

 

 最大のネックは、スマホ決済がQRコードを使ったシステムで、金額の入金⇒QRコードの読み取り⇒決済の確認と言う「手間」がかかることだ。

 

 ちなみに私は50代後半だが、スマホ決済を一切登録も利用もしていない。コンビニなどでの少額決済は、電子マネーSUICAやNANACOの方が、タッチひとつで圧倒的に便利だし、1000円を超える決済は、その店舗が会員向けに発行するクレジットカードを利用する。こちらも店員がカードを読み取り機にスッと通せば決済完了だ。加えて店舗のポイントも付与されることが大半だ。

 基本的にサインも確認も必要ない(本来レシートの確認はすべきなのだろうが)。しかも不正利用されたら被害はカード会社から保証される安心感もある。

 

 あくまで「慣れ」の問題という意見もあるだろうが、「カードでピ!」で即時完了と、「アプリ起動⇒金額確認⇒決済処理」とでは、利便性に大きな格差があるのは事実。

 

 特に高齢者は「気が短い」「端末の操作に不慣れ」「新しいモノに消極的」という傾向が無きにしも非ずで、自分の好きな時間に自分のペースで利用できる「メルカリ」と、後ろで待っている客の視線を気にしながら手間のかかる「メルペイ」では、普及するスピードの差が相当大きいはずだ。

 

 政府もキャッシュレス化を推進する立場だが、その選択肢はQRコード決済だけではないし、期間限定ながら電子マネーなどにもポイントは付く。

 

 結果はまだ見通せないが、「メルカリ」はシニア層がけん引役となって成長するも、「メルペイ」は競合他社の多さもあって、メルカリほどの普及は見込めないのではないだろうか。