「不動産投資」は金持ちほど圧倒的に有利な理由(東洋経済オンライン)
加谷 珪一 : 経済評論家
不動産投資で儲けることができるのは、「すでに土地を持っている」「土地を買える資産がある」などお金持ちほど有利な状況を解説する記事「『不動産投資』は金持ちほど圧倒的に有利な理由」が9月22日付けの東洋経済オンラインに掲載された。
記事の言いたいことをまとめると、「土地・建物を購入するのに銀行借り入れをする時点で、すでにサラリーマンは不利な条件からスタートすることになる。儲からないのは当然」ということになる。
読後の感想を正直に言えば、サラリーマン大家を目指す人向けに「警鐘を鳴らす」本は、「投資を勧める」本に比べれば少ないとはいえ、それなりに存在する。
今回の記事に書かれていることは、すべて事実であり、その意味ではブームに乗ってサラリーマン大家を目指す人には、是非とも読んで頂きたい内容ではある。
とはいえ、解説する事象が「サラリーマンの不動産投資」というテーマに限定されるだけに、既読感があるのも事実。具体的には昨年11月に出版された「不動産投資にだまされるな-『テクニック』から『本質』の時代へ」 (中公新書ラクレ)と、かなり内容がダブっていると感じた。
本書については私も出版直後にAmazonで購入して、「不動産投資は『投資』ではなく『事業』だ。サラリーマンは圧倒的不利」というタイトルでレビューを書いているのだが、このレビューに書いた内容と記事がほぼ被るのである。ちなみに現時点でも私のレビューは「トップレビュー」を維持している。
という訳で、不動産投資の初心者にはわかりやすい内容ではあるのだが、多少なりとも投資の実情を知る人にとっては、特に目新しい指摘は見当たらないのが実感だ。
加えて言えば、今回の記事は個別物件の「大家さん」になることをテーマにしているので、最後に「つねに一定の資金を確保しておく必要がありますし、話を通しやすい銀行をいくつかキープしておくといった措置も重要となります。何より、無数の案件をつねにチェックするという気の遠くなるような作業が求められでしょう」と結んでいる。
これを読むと、「サラリーマンは不動産投資に向かないということなのだ」と思い込む人もいると思うので、この記事は直接「大家さんになる」ケースを想定しており、サラリーマンが不動産投資をするのは「間接的」な不動産投資もあるということは指摘しておきたい。
具体的には、東証に上場しているREIT「Real Estate Investment Trust」である。これは不動産投資に特化する会社(不動産投資法人)を上場させたもので、投資家から集めた資金を物件に投資し、そこから得られる賃貸料や売却益などを投資家に分配金として配分するという仕組みである。
一般の事業法人に比べて、収益の90%以上を分配すれば法人税がかからないため、収益のほとんどが投資家に分配されることになる。
ちなみに現時点で上場しているREITはインフラファンドを含めて69銘柄。肝心の予想利回りだが、いちごホテル(3463)の7.5%台は別格にしても、5%を上回る銘柄は9もある。最も手堅い投資先とされる日本ビルファンド(8951)でも、利回りは2.6%台だ。
しかも投資先の物件は、銘柄によって「住居」「ホテル」「商業施設」「物流倉庫」など様々なうえ、各銘柄が複数の物件に投資するので「分散効果」も見込める。
加えて10万円台から投資できる銘柄も少なくない。個別の物件に投資するのは個人的には空き家リスクなどを考えれば「時限爆弾」を抱え込むようなものだと思っているが、REITであれば、投資を始めるための資金も少なくて済むし、自動的に分散投資となる。しかも「管理」という面倒くさい業務から解放される。しかも個別物件と違って金融商品なので取引所で換金するのも容易だ。
個人的にも、数年前からREITには10数銘柄を継続して投資しており、年間の分配金収入は10万円以上だ。
定年までには退職金を含めて、現在の5倍以上に投資する予定で、現在の利回りが維持できると仮定すれば、年額60万円、月額にして5万円程度の副収入が見込める(税金は考慮していない)。これは公的年金の生活費不足分を補う効果は十分あると思う。
ただ気を付けたいのは、REITは今年に入って上昇を続けており、指標となる東証のREIT指数は年初の安値から現在までで20%以上値上がりしている。
利回りは魅力的に見えても、REIT価格自体の下落の可能性は想定しておいた方がいいだろう。安く買った方が利回りは高いことは言うまでもないが。
という訳で、ぐだぐだと書いてきたが、言いたことはサラリーマンが不動産投資をするなら、個別物件だけではなく、REITという手法もあるということだ。
何千万円も一気に投資して、多大なリスクを背負う以外にも、手元の資金で手軽に投資できる方法はあるのだから、検討してみる価値はあるのではないだろうか。
もっとも投資はあくまで「自己責任」であることは留意してほしい。