如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「仕事」を部下に任せるのも上司の「仕事」

「自分でやりたい中毒」から今度こそ抜ける方法(東洋経済オンライン)

伊庭 正康 : らしさラボ代表

 

 自分が通常の業務をこなしながら、部下のマネジメントも兼任するプレイングマネジャーの仕事の進め方をアドバイスする記事「『自分でやりたい中毒』から今度こそ抜ける方法」が9月25日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 書かれている内容はすべて「なるほど」と納得できる上に、具体的で参考になる。

その「心得」3か条を紹介すると、

  1. 「自分でやってしまいたい」を捨てる
  2. 「今」ではなく「1年後」に視点を置く
  3. 業務量を3割減らす

以上の3点である。

 

 1については私自身も含めて、経験済である。「後輩を育てなくえは」という自覚はあるのだが、現実には仕事の締め切りはあるし、顧客に迷惑はかけられない、今回は自分で処理しておくか、となって、結局これが毎回続くのである。

 「何か問題が発生したら自分の責任」というプレッシャーもあって、その場は問題なく進行するのだが、「マネジャー」としての仕事は放棄していることになる。

 

 「部下に任せられない」という気持ちは理解できるが、よくよく考えてみれば、自分もそのような環境のなかで上司に「仕事を任されてきた」ということを思い出してほしい。

 失敗すれば当然怒られるが、失敗を体験するからこそ、次は失敗しないように対応策を考え、成長していくのが若手のあるべき姿だろう。

 その機会すら与えられないのでは、仕事で成長するのを期待する方に無理がある。

 

 2については、1の延長線で考えるべきだろう。部下の失敗を恐れていては何も進展しない。仕事を任せた当初は、「尻ぬぐい」の覚悟を決めて、自分の仕事の負荷が増えることは「長い目で見れば必要不可欠なこと」と割り切るしかない。

 ただ、仕事を任された若手にとっては、仕事の内容は初めてだし、方策も手さぐり状態、それまでの仕事も抱えているので、そのままではオーバーワークになって「潰れて」しまうことにもつながりかねない。

 

 そこで有効打になるのが3の「業務量を減らす」である。

 担当する仕事は増えたのに、人間のこなせる仕事量はすぐには変わらない。となれば、過去からの慣例で続けていた「会議」や「朝礼」などを見直すというのは有効だ。

 ただ現実に「会議」や「朝礼」を減らそうとすると、仕切っていた上司などから抵抗勢力が出てくるのは必至。社内事情を考えると、直属の上司(部長など)としては、ライバル部署と比較されて「会議」や「朝礼」を廃止して、「楽」をしている、させているのではないかと、評価されることを恐れる可能性が高い。

 

 ここは手間も時間もかかるが、まずは上司に「改革が効率化につながり、その先には事業の進展が見込める」ことを説得するのが先決だろう。上司の顔色をうかがう「ヒラメ」と言われようが、とりあえず効率化を実現し、効果が目に見えてきたら上司の評価も変わってくるはずだ。

 

 ここで個人的なアドバイスとしては、若手への業務移管に伴う、無駄な会議などを減らしたことの成果を「上司の実績」として、譲ってしまうことを勧めたい

 仕事に携わった若手たちは、実際に誰が貢献したかはわかっているし、上司は自分の顔が立つことで満足する。次の仕事での新しい企画や提案には、抵抗もせずに後押ししてくれる可能性もある。

 

 個人の実力が評価される時代になったとはいえ、一部の専門職を除けば、しょせん仕事はチームワークで進めることが多いはずだ。

 現場の仕事と若手のマネジメントの両立ぐらいで悩み、苦しんでいるようでは、その先にあるよりレベルの高いマネジメントなどが勤まるはずがない。

 

 これはある大企業の役員から聞いたのだが、ある程度の立場になったら「自分で仕事をするのではなく、いかにして人に仕事をさせるかが重要」と言っていた。

 今思い返すと「名言」だと思う。言われた当時は自分も、仕事を若手に任すよりも自分でこなす方が効率的だと思っていたが、もっと早く気づけばよかったと後悔している。