如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

「出来立て弁当」は伸び悩むコンビニの救世主になるか

コンビニ「出来たて弁当」は消費増税後に人気商品として広がるか(ダイヤモンド・オンライン)

森山真二:流通ジャーナリスト

 

 店内で炊いたご飯に、フライヤーなどで調理したおかずを付け合わせて「出来立て弁当」として提供する新しいスタイルの弁当に対して、コンビニ各社の対応が明確に分かれていることを解説する記事「コンビニ『出来たて弁当』は消費増税後に人気商品として広がるか」が9月26日付けのダイヤモンド・オンラインに掲載された。

 

 コンビニ弁当と言えば、おにぎりなどが置いてある棚の横に、麺類などと並べて置かれていて、レジで電子レンジで温めてもらうという認識だったのだが、最近では、差別化を図り、集客力を高めるための商品として、「出来立て」をウリにするらしい。

 

 確かに記事にもあるが、コンビニのレジ近くには「唐揚げ」「コロッケ」など店内で揚げた総菜を置いているし、あとは炊飯器を用意して、弁当の容器に詰め込めば「出来上がり」となるのではないかとは思う。

 

 パックで密閉された既存の弁当も味は悪くない。ただ、細かい話で恐縮だが、個人的には付け合わせの「漬物」まで電子レンジで一緒に温まってしまうのは何とかならないのかと感じていた。

 これが、ご飯もおかずも出来立てに近い状態で提供されて、漬物もそのままの温度であれば、例えば同じ「鳥の唐揚げ弁当」なら、出来立てを選択する顧客の方が多いと思う。

 

 この出来立て弁当に最も力が入っているのが、ローソンだ。2018年2月末時点で国内14,659店舗のうち、6000店に出来立て弁当「まとかど厨房」を展開済だという。

 ちなみに同社のWebサイトを見ると、鳥の唐揚げ系では、既存のタイプでは「おろし竜田弁当」が税込み498円、一方「まとかど厨房」では「鶏から弁当(おろしポン酢)」が税込み500円でほぼ同じ価格。

 

 9月には新商品も投入するなど、「弁当の出来立て化」路線はさらに強化される見通しだ。

 Webサイトを一見したところ全く同じ商品は見当たらないし、記事によれば「既存の常温やチルド弁当と競争しない」そうなので、商品同士の「食い合い」は回避できていると思われる。

 

 一方、セブンイレブンは「出来立て弁当」を扱っていない。過去にはとんかつ弁当の販売を試験的に実施たこともあったようだが、現時点ではチルドや冷凍食品に傾注しているようだ。

 

 記事では、「セブンは、出来たて弁当は、炊飯、盛り付けなどの作業が発生する。この作業に対しそれほど売り上げ、利益が上がらないと評価している」と解説している。

 

 これはこれで説得力のある説明ではあるが、問題の本質は、加盟店からの24時間営業問題でのトラブルなど、現状でも人手不足で運営維持が厳しい加盟店に、これ以上の作業負担を要請できるかという、現実が大きな要因になっているはずだ。

 

 確かに強引に出来立て弁当の導入を決めて、さらに店員の作業量が増大すれば、その不満が爆発して最悪の場合、異物混入などの「バイトテロ」が起きないとも限らない。

 設備投資やリスクを伴う新商品よりも、オリジナルブランドで商品開発力もある冷凍食品の充実を図るというのは、ひとつの経営判断だ。

 

 持ち帰り弁当市場では、「ほっともっと」を展開するプレナスが販売不振から直営店190店の閉鎖を発表、利益の見込める加盟店化を目指すなど、競争は激しさを増している。

 以前から店内調理の弁当を手掛けていたスーパーに加え、最近ではドラッグストアも参入している。「中食」市場の拡大が背景にあるのは間違いない。

 

 今後、10月以降持ち帰りの弁当には軽減税率が適用されることも追い風となり、コンビニでの「出来立て弁当」の売り上げ増加は確実だろう。

 ただ、懸念されるのは、先にも書いたが「弁当作り」にかかる作業コストをどこまで抑えられるかだ。 

 

 商品が人気化すれば、品ぞろえ充実の声が高まるのは必至、おかずの種類を増やしていけば必ず店員の作業負担は高まる。

 しかも弁当がもっとも売れるのは、お昼時に集中しているはず。ただでさえ長いレジ待ちが発生しているのに、さらに待ち時間が増えるのを顧客が耐えられるだろうか。

 

 個人的には、昼食の弁当にあまり「こだわり」はないので、空いているコンビニで適当に済ませることが増えそうな気がしている。