如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

記事全体の8割強を「スライド」が占めるという試み――中身も充実

日高屋・幸楽苑「5分でわかる」ライバル企業比較(東洋経済オンライン)

武内 俊介 : リベロ・コンサルティング合同会社 代表、税理士

 

 昨日のブログで、4コマ漫画を多用した「じゅえき 太郎」氏の記事「つまらなさ気絶レベル!『酔った上司』の自慢話」を取り上げ、その分かりやすさを評価するブログを書いたが、今日は内容の8割以上を「画像」(正確にはパワーポイントのスライド)が占めるというさらに新たな試みの記事「日高屋・幸楽苑『5分でわかる』ライバル企業比較」が、9月28日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 ちなみに、この記事を執筆したリベロ・コンサルティング代表の武内俊介氏だが、会社Webサイトによれば、クレジット会社、会計事務所などの勤務を経て、税理士資格を取得し、その後独立して現在会社を2018年12月に立ち上げている。

 ちなみに「過去の記事一覧」はPCでアクセス上の問題があって確認が取れなかったが、東洋経済オンラインへの記事掲載は初デビューと思われる。

 

 一発目という事情もあって、既存の記事のスタイルとは意識的に大きく変えて「読ませる」記事から「見せる(魅せる)」画像に思いっきり振ったことは、意外性もあり評価したい。

 ちなみに本記事の文章は1ページ目の半分以下、文字数にして418字、原稿用紙1枚程度だ(スライドの見出しは除く)。

 

 さて、肝心の中身だが、まずは両社の「売り上げ」「店舗数」が似たような状況と言う前振りのあとに、日高屋の特徴(首都圏、駅前への積極展開など)を、その後対照的な幸楽苑の特徴(東日本のロードサイド中心など)を解説している。

 最後に、10年間で大きく業績を伸ばした日高屋と、伸び悩んだ幸楽苑の違いを明示したうえで、両社の今後の方向性を分析している。

 

 全体のトーンとしては、日高屋の「駅前屋台」戦略が奏功して売り上げでは追い抜いたが、幸楽苑も業態転換などでここ一年客数を大きく回復させており、「本当の勝負はこれから」という結論だ。

 

 個人的な見解を言えば、当面は日高屋の勢いが続くとみる。その理由となるキーワードは「アルコール」だ。

 「ちょい飲み」「せんべろ」など低価格で飲んで酔える手軽な居酒屋やチェーン店が人気を集めている傾向にはまだ陰りは見られない。しかも駅前立地ということで、平日の会社帰りや休日の暇な時間にちょっと来てさっと飲める気軽な飲み屋として需要は続きそうだ。

 

 参考までに日高屋ではWebsサイトの「ちょいのみ日高」で「中華そば+餃子+ビール」で合計930円(税込み)という、まさに「千円でお釣りがくる!」ことをアピールしている。 

 しかもアルコール飲料は料理に比べて原価率が低いので、利益の向上にもつながる。

 

 ピザやドリアなどの低価格帯を売り物にするイタリアンレストラン「サイゼリア」が、郊外のロードサイド店舗から駅チカに店舗展開を移行させているのも、得意とするワインの売り上げ向上を狙っているのは間違いない。

 

 一方、幸楽苑だが、主力のロードサイド店舗ではクルマでの来店が基本なので「お父さんのとりあえずビール」など酒類の売り上げが期待できない

 また「いきなり!ステーキ」に代表される業態転換も一時話題を集めたが、競合他社の参入も相次ぎ競争が激しいうえ、今年に入って海外進出したニューヨーク店舗の半数以上を閉めるなど、勢いに陰りも見られる。

 

 スライドによれば、一期でV字回復をしたとは言え、営業利益は4.0%と日高屋の11.3%の半分以下の水準に留まる。

 主力のロードサイド店舗を、その特徴を生かした別の外食業態に転換させるのか、駅前などに店舗の立地を移行していくのか、もしくは他業種(コンビニ、ホームセンターや書店など)と組んで、複合店舗を目指すのか――。

 

 主力の「柱」が明確に定まっている日高屋に対して、これからも試行錯誤が続きそうな幸楽苑がどこまで踏ん張れるかに注目したい。

 

 ちなみに私自身どちらの中華そばも食べたことはあるが、味音痴なせいか明確にどちらがうまいとは断言できない。普段は値段はやや高いが、地元で個人が経営する自家製麺のラーメン専門店で食べている。