如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

中小企業「ヨドバシカメラ」のキャシュレス還元策に他社はどう対抗するか

「大企業」の家電量販店はどう対応するのか

 

本日、10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられた。

 巷では、税率引き上げで景気に悪影響というマクロ経済的な批判から、軽減税率制度の導入に伴う混乱、キャッシュレス決済への優遇措置など、様々な視点から議論が交わされている。

 

 私がこのブログでよく紹介する「東洋経済オンライン」にも、本日付けで「大打撃!『外食の税率10%』を乗り切る新常識」という記事が掲載された。

 記事では、タイトルにある「外食」をテーマに解説。通常なら10%の消費税が、キャッシュレス還元制度を利用すれば「お得」になる方法を紹介している。

 

 ということで、今回は当ブログでも「旬」である税率引き上げをテーマに記事を書くが、テーマは「外食」ではなく、「家電量販店」である

 

 今回、キャッシュレス還元の恩恵を受けるのは中小企業なのだが、この中小企業の定義が業種にもよるが小売業の場合、「資本金5000万円以下または従業員50人以下」となっている。

 ここで個人的に大きな話題となると前々から想定していたのが、「ヨドバシカメラ」なのだ。

 ご存じのように同社は株式を公開していない非上場企業。同社のWebサイトによれば、売上高は6931億円(2019年3月)、従業員は5000名(2018年4月)だ。会社の規模で言えば、並みの上場企業以上である。

 ところが、wikipediaによれば同社の資本金は、3000万円で、これは経済産業省の「キャッシュレス・ポイント還元事業 (キャッシュレス・消費者還元事業) 中小・小規模店舗向け説明資料」によれば、小売業では「中小企業」に相当することになる(資本金5000万円以下または従業員50人以下)。すなわち、キャッシュレス還元制度がフルに利用できるのだ。

 ただし、上記を満たしていても、確定している(申告済みの)直近過去3年分の 各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中 小・小規模事業者は補助の対象外、という仕組みもあるので、これをどうやってクリアしているのかは非上場企業だけに不明だが。

 

 ということで1日早朝にヨドバシカメラのWebサイト「ヨドバシドットコム」を見て、やっぱりと実感した。

 トップページの最上段に「10月1日からキャッシュレス決済で+5%還元」と大々的に宣伝しているではないか。これが実現可能なのは、同社が「中小企業」に分類されているからに他ならないだろう。ただし、同社発行のゴールドポイントカード・プラスを利用することと、なぜか12月31日までの期間限定の条件付きだ。

 

 ちなみに上場しているビックカメラ(銘柄コード3048)の資本金は259億円、ヤマダ電機(同9831)の資本金は710億円である。堂々たる大企業なのだ。

 

 さて、そのビックカメラだが当然ながら「キャッシュレス還元」をアピールできない。代わりにこれまでの税別表示から「全品税込表示」に切り替えたことをアピールしている。どこまで効果が見込めるか不明だが、同じ商品の価格が同じなら(ちなみにヨドバシは相当以前から税込表示)、ポイントで5%も有利なヨドバシを選択するだろう。

 

 ちなみにヤマダ電機は、Webサイトでは9月28日から10月4日までの「家電大バザール」が目立つ程度で、キャッシュレスに関する価格への言及はない。

 

 熾烈な価格競争を日々繰り広げている家電量販店で、5%の価格差は決定的な勝敗要因になる可能性がある。しかも12月までの期間限定とはいえ、冬のボーナスシーズンをカバーしているし、今後急速な普及が見込める4Kテレビなど高額商品が目玉になると見込まれることの影響も大きい。

 

 個人的な事情を明かせば、約10年前に購入したプラズマテレビが寿命を迎えつつあるので、冬のボーナス商戦を狙って買い替えの検討を進めているが、ヨドバシ以外の他社がこの不利な状況を「黙って指をくわえて見ている」とは思えない

 

 想像するに、利益を削ってまでヨドバシ価格に合わせてくる可能性もあるが、そうなると業績への影響は不可避で、株価への悪影響は避けられないだろう。

 となると、考えられるのは、売上高7000億円規模で従業員が5000人もいるのに「中小企業」という枠組みがおかしい、という論陣を張ってくる可能性である。

 

 政府やマスコミも、キャッシュレス還元の本来の目的の一部に「中小企業対策」が含まれているのは認識しているはずなので、中小企業の定義に新たに「売上高」などの基準を追加してくる可能性は否定できない。

 

 ただ、この還元策も来年6月までの期間限定。ヨドバシカメラが今年12月までの期間限定にしたのも、こうした優遇への批判や規制に配慮、税率引き上げ後の混乱が一巡して、規制論が盛り上がる前までに「とりあえず3か月だけ実施しよう」という腹積もりかもしれない。

 逆に規制に向けて動きがなければ、3月、4月の新年度入り、6月のボーナスシーズンまで期間延長も視野に入れているはずだ。

 

 いずれにせよ、10月以降の家電量販店業界では、ヨドバシカメラを軸にキャシュレス還元制度をめぐって大きな話題を集めることは間違いなさそうだ。