如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

海賊版サイトは「論外」だが、電子書籍版の値下げも必要

続く無断投稿「漫画村」はなぜ繰り返されるのか(東洋経済オンライン)

大塚 隆史 緒方 欽一 : 東洋経済 記者

 

 漫画の違法アップロードを行う「海賊版サイト」の最近の動向を解説する記事「続く無断投稿『漫画村はなぜ繰り返されるのか」が10月3日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 「漫画村」元運営者の逮捕や、漫画「進撃の巨人」を動画に変換して投稿する事例、運営者への損害賠償などの事件を紹介している。

 記事によれば、違法アップロードがなくならない理由として、視聴中に入る広告によって半年で2000万円を稼いだ事例や、違法アップロードよる単行本の売り上げ減少が1アカウント当たり1億5000万円以上に達したケースもあったそうだ。

 

 数年前まで野放しだったこうした「海賊版」サイトだが、摘発逃れの温床になっていた海外サーバーを利用する手口も、運営者へのアクセスログの開示請求などで通用しなくなったうえ、漫画村とは別の有名な海賊版サイトの運営者には、懲役2年4か月から3年6か月の実刑判決が出るなど、違法サイトの運営が追い詰められているのは間違いない。

 

 私自身は、海賊版サイトを見たことも、利用したこともないので、ブログで書いてもあまり説得力はないのかもしれない

 ただ、記事にある違法アップロードをする人には「自分の好きな漫画を多くの人に知ってほしいというファン心理」があるという考え方は理解できない。「知ってほしい」という感情はまだしも、その違法行為が「売り上げ減」という作者の不利益につながり、結果として応援しているはずの作者を苦しめているという事実には考えが及ばないのだろうか。

 もっとも大半の運営者は 記者が指摘しているように、広告収入が目当ての悪事と知った上での不法者なのだろうが。

 

 では、「あらすじ」を紹介するのは問題ないのかというと、そう単純な話でもないらしい。

 記事では、後半で「あらすじをブログで紹介し、有料サイトへのリンクでアフィリエイト収入を得ると、著作権上の問題になる可能性がある」そうだ。

 ちなみに当ブログでも、東洋経済オンラインからの記事の「引用」をしているが、記事の丸写しは当然ながら避けている。記事はあくまでブログ作成の「きっかけ」であって、本文の大部分は「私の意見」が占めるようにしている。

 当然ながら、有料サイトへのリンクなどは一切行っていない(週刊東洋経済本誌へのAmazonリンクは例外)。

 

 最後に、書籍や雑誌の価格設定について個人的な意見を述べたい

 最近では紙の書籍と電子版では価格差を付けることが増えてきたが、ほんの数年前までは同じ価格というのもザラだった。

 ちなみに冒頭で紹介した漫画「進撃の巨人」の最新29巻の価格は、紙が495円に対して電子版は462円で6%ちょっとしか安くない。

 参考までにAmazonの新書部門で現在ベストセラーの「ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)」の値引き率は10%、これが平均的な数値のようだ。ちなみに週刊東洋経済の電子版の割引率は17%と高い。

 

 出版社側の事情を詳しく知っているわけではないが、読者から見ると、電子書籍は「印刷のコストがない」「流通在庫も不要」「取次への支払いもない」「販売する書店へのマージンもかからない」などを考えると、電子版は20%以上安く設定してもおかしくないと感じる。読後に譲渡できない制限を考慮すれば、個人的には半値でもいいと思う。

 

 ちなみに著者に入る印税は、紙の書籍の場合10%を切る水準が一般的のようだが、Amazonで自分で原稿を書いて電子書籍として出版すれば印税(Amazonではロイヤリティと呼ぶ)は、70%である。

 

 漫画が売れなくなった原因として、海賊版サイトの存在があったことは事実だが、買いたくても買えない人たちが「違法」だと知りつつも、無料で読んでいた事例も少なくないだろう。理由がどうあれ決して許される話ではないが。

 

 出版社には、電子版を値下げできない事情もあるかとは思うが、タブレットやスマホで漫画を読むという流れはもはや止めようがないのが実情だ。

 であれば、いっそのこと思い切り電子版を値下げして、販売冊数の増加で紙版の売り上げ減をカバーするというのも手だし、最近急速に普及しているサブスクリプション(定額購読)で「ページや一話単位」の収益を狙うのもアリだろう。

  そもそも雑誌は休刊が続いてるし、販売する書店自体の減少に歯止めがかかっていない。

 

 摘発と罰則の強化で海賊版サイトは減る傾向を強めるだろうが、その結果、漫画を含めた書籍・雑誌への関心が薄れて読者が減ってしまっては元も子もないと思うのだが。