如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

リモートワーク成功の可否は会社の社員への「信頼度」にかかっている

会社員が毎日出勤する意味はどれだけあるのか(東洋経済オンライン)

伊庭 正康 : らしさラボ代表

 

 行き帰りの満員電車に揺られ、疲弊したサラリーマン勤務を続けている人はまだまだ多いと思うが、こうした非効率的な仕事の進め方の改革を提言する記事「会社員が毎日出勤する意味はどれだけあるのか」が10月9日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

  記事で取り上げているテーマは3つ。

                  ・出社しない「ノー・オフィスデー」

                  ・「サードプレースオフィス(第三の事務所)」

                  ・仕事を飽きずに楽しむために必要な「あそび心」

 である。

 

 一つ目の、「ノー・オフィスデー」だが、これはまず思いつく「在宅勤務」のほかに、「コワーキングスペースでの仕事」、さらに「直行直帰」も含まれる。

 

 在宅勤務については、かなり社会の認知度も高まってきたが、現実的には「介護」や「育児」などの家庭の事情を抱えた人を対象に、週に数日までといった制度が一般的ではないだろうか。

 要するに特殊な事情を抱えた人への「特例措置」という側面が強く、仕事の効率性を考慮して積極的に導入している企業はまだ少数派だろう。

 

 ではなぜ、在宅勤務を含むリモートワークが普及しないかというと、一言でいえば「会社が社員の管理に自信が持てないから」というのが最大の理由だろう。

 簡単に言えば、「仕事をしているかサボっているかどうか確認できない」からだ。その証拠のひとつにあるメーカーは、在宅勤務者を管理するために専用の部屋を用意して、壁一面にモニタを設置、勤務者のPCにあるカメラの画像を投影して、誰が何をしているかすぐにわかるような「監視体制」を敷いている。

 

 これは極端な例だろうが、会社というか管理職にとっては、部下の仕事ぶりを自分の目で確認できないと安心できないのだ。つまり「出社することに意味がある」と考えているに他ならない。

 

 本来、会社員はそのスキルを「仕事」を通じて会社に貢献することで報酬を得ている訳で、「出社」することは必要不可欠な条件ではないはずだ。

 会社側としては、勤務時間や健康管理などにも配慮しなければならないので、完全なリモートワークは困難化もしれないが、現在の原則「特例」から選択「自由」に変化していくのは時代の流れだろう。

 

 そもそも毎日会社に来なくてはできない仕事というのが、どれだけあるのかゼロから洗い直した方がいいだろう。システム開発などはネット環境が整備されれば「在宅」でも十分仕事は可能だろうし、、企画、調査部門などは相手との打ち合わせに伴う移動時間や取材先の都合などを考えれば「直行直帰」の方が、より効率的かもしれない。

 

 この相手との打ち合わせ先で有効なのが、2つ目の「サードプレースオフィス(第三の事務所)」だ。会社でも自宅でもないカフェなどで打ち合わせをすることで、記事では「とても自由な雰囲気で話ができました。意見交換が活発になる」としている。

 

 3つ目の「あそび心」は、保守的な会社ほど抵抗が強いだろう。「あそび」=「サボり」というイメージが強く、新たな発想や企画は仕事とは直接関係ないことから生まれることが少なくない、という事実に理解が及ばない。

 

 以上3つのテーマに共通するのは、「会社が社員を」「上司が部下を」信頼しているかどうか、という点に尽きるだろう。

 もっとも、社員の側もやみくもに「在宅勤務」を主張するには無理がある。入社したばかりの新人が「自宅で仕事をしたい」と言っても、上司にはそれを許可する根拠に欠けるからだ。

 少なくとも会社内で評価されるような実績を残したうえで、「より効率的に仕事がしたい」というのであれば、会社の理解も得やすくなるだろう。

 

 一方、会社側にとっても、同業他社が有能なエンジニアなどに在宅勤務を認めるようになれば、人材が流出する可能性は高まる。そもそも新卒で入社する社員は「終身雇用」を期待していないし、人生設計では「会社の知名度」という他者の評価よりも、「自分のスキルや待遇のアップ」という自身の価値観を優先するのが大きな流れになりつつある。

 

 AI、ITなどの普及で社会や職場を取り巻く環境は加速度を付けて変化している。働き手の都合や要求に応えられず、変化に対応できない企業の先行きは暗い。

 会社は、社員を「出社や勤務時間」という勤務体系ではなく、「仕事の成果」で評価するという本来あるべき姿へと「思考回路」を切り替えていくべきだろう。