如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

不動産を購入するなら、まずは「地盤」と「ハザードマップ」の確認を

武蔵小杉をあざ笑う人々に映る深刻な社会分断(東洋経済オンライン)

真鍋 厚 : 評論家、著述家

 

 昨日夕方に東洋経済オンラインに流れた記事「武蔵小杉をあざ笑う人々に映る深刻な社会分断」を読んで、思うところがあったので「ごく自然」に思うことをコメントしたのだが、今朝になって同記事のコメント欄を見たら、私のコメントがトップにあって、「支持する」が644件(支持しないは68件)と、予想以上の反応があったので、今日は改めてこの記事について触れたい

 

 記事では、ネットでの武蔵小杉のタワーマンションで被災に会った人々をあざ笑う人々を批判し、本来自然災害のようなケースでは他人に思いやりを示す「災害ユートピア」が起きるはずだが、社会の分断が進んだ結果「災害ユートピア」に転じてしまったと解説、「誰もが被災者になりうる」ことを忘れている。という趣旨だと個人的には理解している。

 

 この意見に対して、特に反論がある訳ではない。被災した人を貶めるのは非常識というか、相手立場への配慮に欠けているのは間違いない。

 

 ただ、私がコメントで冒頭に書いたように、「『人の不幸は蜜の味』という言葉があるが、これは人間の本性の一部だろうと」と書いたようにタワマン所有者に対して、今回の被災が普段から溜まっていた不満や鬱憤をはらす「きっかけ」になったのも事実だろう。

 

 都心3区に比べれば安いかもしれないが、武蔵小杉のタワマンでも最低でも6000万円ぐらいはするはずだ。地理的に投資物件ではないから、実際に居住する実需層がほとんどだろう。低金利とは言え価格水準から見て購入者は、夫婦共稼ぎの長期住宅ローンを組んでいる可能性が高い。

 

 世帯年収は1000万円をこえる世帯が多いだろうが、子供の保育所や教育費などの負担で、生活に決してゆとりがある人ばかりではないだろう。そうした状況下で被災、電機や水道の供給が止まった家庭の負担は想像以上のはずだ。

 

 一方で、こうした家庭の事情にまで想像が及ばない人たちは、タワマン所有者=人生の勝ち組という、非合理的な感情を抱くこともあり、その「妬み」の感情がSNSで発信という行動に走らせたと思われる。「道徳的に問題がある」という批判は彼らには通じない。

 

 こうしたなかで、地方の河川の氾濫では被害を被った人々にこのような「妬み」のコメント発信は聞いたことがない。実際にはあるのかもしれないが、少なくともニュースや記事で大きく伝えられてはいないはずだ。

 これは「地方の住民⇒普通の生活⇒被災は同情すべき」というロジックが成立している訳で、「タワマン⇒人生の勝ち組⇒被災して鬱憤ばらし」という構図とは正反対だ。

 

 困難な状況にある被災者を、その所有する資産で差別するのはおかしいのだが、こういう自分の置かれ社会的な地位に不満を抱いていて、成功した(ように見える)人たちを嘲笑の対象にする人たちが一定数いるのは事実であり、今後も存在し続ける。

 

 もともとが理不尽な不満をぶつけているだけなので、彼らには「道理」は通用しない。正しい対応は「無視」の一手である。挑発に乗るのはまさに「相手の思うつぼ」であることに他ならない。

 

 さて、今回の台風19号では武蔵小杉に限らず、都下や都内でも被害が起きているが、宅地建物主任取引の資格所有者として、これまで知人や友人などに不動産購入のアドバイスをしてきた者として一言。

 

 物件を購入する際に、真っ先に調査するべきは「地盤」と「ハザードマップ」である

 どんなに立派な設備や外観であっても、地震や台風などで被災、甚大な被害を被ったら「住処」そのものを失うのだ。

 

 不動産会社の物件広告には、駅からの距離や占有面積、周辺の商業施設など利便性を強調することが多い。特に最近は不動産評論家などが「資産価値」の観点から、駅から5分以内など将来の売却時に有利なことを強調する傾向が強いが、その「資産価値」も物件の被災してしまえば、価値は大きく棄損することを考慮すべきだ。これは「戸建て」「マンション」を問わない。

 

 では「地盤」は「ハザードマップ」をどうやって入手するかだが、ハザードマップについては各自治体がホームページで掲載しているはずだ。役所に行けば資料としてもらえるケースも多い。最近では東京の江戸川区が発行した「江戸川区水害ハザードマップ」が有名だ。

 

 一方、「地盤」については国土交通省・国土地理院の「土地条件図」一択だ。

 昔は、バカでかい地図として専門書店で地区別に購入するしかなかったが、現在はWebサイトで「ベクトル地形地形分類」として、「自然地形」「人口地形」の2種類から閲覧が「無料」で可能になっている。

 表示内容だが、土地の状態によって色分けされており、「台地」「低地」などに分類され、例えば「凹地・浅い谷」については、「豪雨時に地表水が集中しやすい」といった解説も書かれている。以下の表はその凡例の一部だ。

f:id:kisaragisatsuki:20191018071501j:plain

土地条件図の凡例の一部

 

 これらの情報が無料で入手できるのだから、利用しない手はないだろう。

 もちろん紙の資料としても「日本地図センター」で入手できるが、東京地区だけでも10数種類に分割されているうえ、在庫限りの地図も多いのであまりお勧めしない。

 

 以上、武蔵小杉の水害の話からだいぶ内容が逸れたが、これから不動産を購入しようと考えている人は、候補地の「ハザードマップ」や「地盤」をまずは確認することをお勧めする。国や自治体が編集・公開しているのだから、信用度は不動産屋の「大丈夫です。問題ありません」発言よりはよっぽど高いはずだ。

 

 自分の資産の安全性は、自分の目で確認するしかないというのが私の結論だ。