如月五月の「ちょっと気になる話題、情報を斜め視線から」

ちょっと気になる話題、情報を斜め視線で解説

シニア層の社会人は「夫婦」関係を見直すべきなのか

家族サービスという言葉に感じる日本の残念さ(東洋経済オンライン)

ドラ・トーザン : 国際ジャーナリスト、エッセイスト

 

 今の日本には「仕事がメイン」という考えが強く、「家族への愛」が弱体化しているという内容の記事「家族サービスという言葉に感じる日本の残念さ」が10月20日付けの東洋経済オンラインに掲載された。

 

 著者はパリ生まれ生粋のフランス人女性で、フランスは「カップル文化」が社会の基本。仕事が終わったら夕食は夫婦でレストランで食事をとるのが自然、としている。

 

 また、子供を含む「家族サービス」については、その概念すらフランスにはなく、家族で行動を共にするのは当たり前として例として、日本で開催されているラグビーワールドカップで、フランスチームは、選手、スタッフとも家族同行が許されている、ことを挙げている。

 

 記事を読んだ感想を言えば、「恋愛」「家庭」を最優先に考えるフランス人の生き方に、見習うべき点はあるが、家庭での夫婦の役割分担が比較的明確な日本、特にシニア層ではこれをそのまま当てはめるのはどうだろう?、だった。

 

 若い世代は、共働きが当たり前になっているので、購入するマンションも共有名義のことが多いし、その結果家事や子育ても共同作業が当然となっており、平均的な日本の家族世帯よりは「ややフランス寄り」な部分はあると思うし、それは良いことだとも思う。

 

 ただ、私を含む50代以降の多くのシニア世帯では、家族がそれぞれ自分だけの「付き合い」を持っている。具体的には夫は「仕事」、妻は「地域」、子供は「学校」であり、これらの関係が他の家族と「共有」されることは基本的に少ないだろう

 

 仕事一筋だった定年後のサラリーマンの居場所がなくて、何をするにも「妻」に付いていくので「濡れ落ち葉」などと揶揄されることもあったが、最近はいわゆる「定年本」が多数出版、読まれたこともあって、男性が自分なりの生き方を探し、行動することは珍しくない。

 ただその新たな生き方の矛先が「妻」に向かうこともあろうが、多くは「孤独を楽しむ」か「趣味のサークル等に入る」などだろう。

 

 もしかすると「和」を尊ぶ日本というイメージが、フランス人の著者にはあるのかもしれないが、この「和」の対象は、サラリーマンにとっては主に職場や友人などとの人間関係であり、妻や子供などではないだろう。

 決して良いことだとは思わないが、男性の側に「直接言ったり行動で示さなくても分かってくれる」という認識があるのは否めないだろう。だからこそ「家庭サービス」というフランス人にとっては「驚き」の言葉が日本には存在するのだと思う。

 

 個人的には、記事を読んでフランス人は「恋愛・結婚」に積極的な半面、「失恋・離婚」も多いのではないかと勝手に想像していたのだが、Webサイトにあった「主要国の離婚率の推移」を見ると、フランスは1985年頃からほぼ横ばいなのに対して、日本は1990年以降に急上昇したが、2003年頃を境に減少に転じている。

 別のサイトの資料「世界の離婚率ランキング」では2017年時点でフランスの1.97に対して、日本は1.77と大差ないレベルだ。

 この辺の事情は、フランス人は「交際」しても「結婚」しない傾向が強いという状況を解説した、東洋経済オンラインの過去の記事「フランス人の結婚観が実は『超堅実なワケ」にも、詳しく書かれているが。

 

 記事では最後に「個人レベルでも限りある時間とエネルギーをどうやって配分するか、(中略)アムールを含めて人生をより豊かで充実したものにしてください」としているが、若い世代は「仕事」と「プライベート」を区別する意識が強く、その分家庭への時間的な配慮は増加していると思う。

 

 問題はやはり、中高年のサラリーマン層だろう。いい年になって「夫婦仲良く」と言われても、共通の話題も少ないだろうし、何よりそれまでの経緯もあってコミュニケーションの取り方が分からない男性も多いのではないか。

 

 無理やり「家族サービス」に目覚めて苦労するよりは、現状の生活に特に支障がないなら、あえて特別な行動をする必要もないような気がする。

「無理」な気遣いは長続きしないし、ストレスになるのは確実だからだ。